オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『インベージョン』

The Invasion, 99min

監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル 出演:ニコール・キッドマンダニエル・クレイグ

★★★

概要

宇宙ウイルスの侵略。

短評

『盗まれた街』の四度目の映画化作品(『ボディ・スナッチャー』と書いた方が分かりやすいだろう)。基本的に侵略者たちが人間を襲うことはなく、カーチェイスによる盛り上げが不自然に感じられる程には地味な話なのだが、今観ると“反ワクチン”の陰謀論的な楽しさがあったりもする。“塗り過ぎ”なのか“加工”なのかは不明だが、感染者たちよりもニコール・キッドマンの周囲から浮いた“のっぺり”質感の肌の方が非人間的に見えるのは皮肉である。

あらすじ

スペースシャトルの墜落事故が起きて以来、人々の人格が突如として変化するようになる。それは破片に付着して飛来した宇宙からのウイルスが原因の感染症であり、感染者は睡眠によって発症し、ウイルスに乗っ取られてしまうのだった。精神科医のキャロル(ニコール・キッドマン)は、離婚した元夫でCDCに勤めるタッカーから4年振りに「息子に会わせろ」との要求を受けるが、彼もまた感染者だった。

感想

(免疫保有者を粛清しようとはするものの)感染者たちが人を襲ってくることはない。ただ感染させようとするだけである。そのために水鉄砲みたいにピューッとゲロを放射するのはコントにしか見えないが、怪物的に暴れ回るのではなく、ただ静かにそこに存在しているという図式は不気味である。したがって、発症過程の肌の変化も気持ち悪くて良いのだが、こうした“分かりやすさ”を省いた方がホラー的に“引き締まった”のではないかと残念に思ったりもする。「敵か味方か分からない」という状況に徹した方がゾワゾワできるのではないかと。ともすれば退屈になりかねないため、このバランスの舵取りは非常に難しいのだろう。

「眠ると発症する」という設定は、あまり効果を上げていなかったように思う。「相手が感染者か否か」「息子を助け出せるか」「自分が寝落ちして発症するのを防げるか」のスリラー三本立てなのだが、上述の通り、「相手が感染者か否か」以外は“間を保たせる”程度の役割しか担っていなかったように思う。強調する程に蛇足化するタイプの設定である。

乗っ取られた人間は、そして世界はどうなってしまうのか──平和になる。(金正日時代の北朝鮮を含む)世界各国が核軍縮条約に署名し、テロ攻撃も止む。待っているのはユートピアである。ウイルスというのは自分のコピーを作って増殖しているわけで、同じウイルスに乗っ取られた者は皆共通の意思を持つことになる。つまり、自分の一部を傷つけるような争いはなくなるわけである。

映画は「そんなもん、御免こうむる」という形で人類がワクチン開発により勝利するのだが、乗っ取られた世界の行く末も見てみたかったような気がする。「平和になるならいいじゃん」というわけではなく、「やはり上手くいかないだろう」と。ウイルスは増殖を重ねる過程で変異を起こすため、その内に“反乱分子”のような連中が出てくるのではないか。オリジナル版は共産主義に対する恐怖の隠喩だったのだろうが、そうした“理論上は理想的”なはずの思想もまた内ゲバを起こして失敗することは歴史に見られる通りである。もし五度目の映画化があるならば、乗っ取られた後の世界が内部崩壊する展開にしてみてはいかがだろう。

宇宙ウイルスに乗っ取られた人間たちは、ゲロ攻撃の他にワクチン接種による感染拡大を目論んでいる。反ワクチンを主張する者は一定数いるが、何が界隈の人々をここまで惹きつけるのだろう。『ユートピア ~悪のウイルス~』にも登場する“人気の設定”である。きっと効果を実感できないところが素敵なのだろう。理屈は分かるが、自分の身体の中で何が起きているのかを実感できるわけではない。なにやらわけのわからぬものを注射されるというシチュエーションが妄想を掻き立ててしまう(自身の恐怖を正当化するために利用している注射嫌いの一派もいるかもしれない)。近年ではナノテクノロジーまで登場してしまったので、彼らの不安はとどまるところを知らないだろう。

ダニエル・クレイグ短髪の方が似合うな。

インベージョン(字幕版)

インベージョン(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
盗まれた街 (ハヤカワ文庫SF フ 2-2)

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