オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『クレージーモンキー/笑拳』

笑拳怪招(The Fearless Hyena), 97min

監督:ジャッキー・チェン 出演:ジャッキー・チェン、ジェームス・ティエン

★★★

概要

孫が修行して祖父の敵討ちをする話。

短評

1979年のジャッキー初監督作品。ブルース・リーが怒りを爆発させ、ジェダイが怒りを制御する一方で、ジャッキーは笑いながら戦うという珍妙さである。ボロボロになりながらも笑い続け、相手を小馬鹿にしたかのように戦う姿はまるでジョーカーのようであり、ジャッキーが初監督作にして自身のトリックスターとして方向性を明確に打ち出していたことになるのではないだろうか。カンフー映画にしては珍しく脚本のまとまりがよく、思わず感心してしまった。

あらすじ

祖父のチェンと二人で暮らし、日々武術を仕込まれているロン(ジャッキー・チェン)。彼はイカサマ賭博師を撃退したことから腕を見込まれ、とある道場の師範を引き受けることに。次々と道場破りを撃退し、祖父に禁じられた拳を利用して金を稼ぐロンだったが、道場の名を「行意門」としたことから、チェンを追うヤムを引き寄せてしまう。

感想

イカサマ賭博師×3を悠々と撃退し(ハゲ頭で地面を掘るのとチビが地面にめり込むのが好き)、様々な変装で道場破りと対峙する。ここまではコミカル一辺倒なのだが、映画の冒頭にヤムがチェンを追うエピソードを挿入しておくことで、“来たるべき敵”の存在を予感させることに成功している。道場の名を「行意門」に変えたことが裏目に出ることも分かっているため、楽しく戦う姿を見せながらも、ちゃんと“その先の展開”を意識できるのである。果てしなく戦いを続けるだけよりもメリハリがつくし、修行編や決戦編とのバランス配分も良い。基本的には最後の笑拳を見せるアイディアありきのテンプレ展開のはずなのに、ちゃんと一本筋の通った物語となっている。

拳を使うことを祖父に禁止されているため、正体がバレないように変装して道場破りと戦うロン。コスプレが楽しくなってきたのかどんどん調子に乗っていき、3人目のマッチョを相手にする時には女装している。逞しい体つきの割には意外に似合っているとも言えなくない気持ち悪さの女装なのだが、マッチョが「なんて美人!」と求愛しながら戦うものだから、なんともヘンテコな対戦となっている。ロンは胸部の詰め物を振ってペチンと攻撃し、更には(梨か林檎と思しき)中身を投げて決着する。必死で揉みにいっていたマッチョとしては、実に悲しい幕切れだっただろう。おっぱいは人を狂わせる。

チェンがヤムに殺され、ロンがチェンの友人の下で修行し(箸での食事を奪い合いに始まり、ぶら下がり腹筋、床に並べられた瓶の上でのバランス取り、と楽しい修行シーンに仕上がっている。ジャッキーのマッチョボディも凄い)、“喜怒哀楽を解放”する秘技を修得してヤムに立ち向かう。ヤムの手下三人を敵に回して一人で戦うシーンの四人の完璧に統率の取れた動きに唸った後の最終決戦である。感情表現をそのまま戦いのスタイルにしてしまうという発想の豊かさ。そして、それをアイディア倒れに終わらせず、ちゃんと“凄い動き”として完結させる演出力。見事な決戦シーンだった。相手の急所に掴みかかるヤムの残虐性との対比も効いている(ロンも最後は急所を攻めるが)。ダメージを受けながらも最後は勝つのがジャッキーらしいのだが、その表現として彼の髪が切れるシーンがあるのもよい。

カンニング・モンキー』以降、邦題に「モンキー」をつけられていたジャッキーだが、本作の笑い声は確かにサルっぽかった。

クレージーモンキー/笑拳(字幕版)

クレージーモンキー/笑拳(字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video