オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『RENDEL レンデル』

Rendel: Dark Vengeance, 105min

監督:ジェエセ・ハーヤ 出演:クリストフェル・グンメルス、ラミ・ルシネン

概要

妻子を殺された男が復讐する話。

短評

フィンランドのヒーロー映画。端的に言って酷かった。特殊効果なしの脳筋アクションがショボいのはともかくとして、脚本が壊滅的である。多用される時間軸の入れ替えが逆効果にしかなっておらず、まったく話に入っていけなかった。きっと全ての設定を把握している制作者の頭の中でだけは都合よく補完されてしまっていて、初見の観客に伝わる情報量を考慮せずして「複雑にしておけば話に深みが出るぞ」くらいのノリで突っ走ったに違いない。そうして明かされる“真実”には何の意外性もなく、「大人しく時系列順でやれ」としか思えなかった。三十郎氏はこういう制作者の独り善がりが嫌いである。怒りに身を任せての一つ星であることは申し添えておいた方がフェアかと思う。

あらすじ

ギャングのアジトを全身黒服のマスク男が急襲する。現場に「RENDEL」と書き残して立ち去った男は一体何者なのか。時は遡り、NH25ワクチンを世界に広めようとするVALA社傘下との取引を断ったラモは会社を解雇されるも、その断った相手に雇われることに。VALA社とギャングには繋がりがあり、ラモは見てはいけない資料を見てしまうのだった。

感想

とりあえず時系列順に話を整理してみる。①[VALA社がワクチンを製造]→②[ラモ解雇]→③[ラモ再就職]→④[ラモ資料発見(そこに「RENDEL」との記述あり。意味はハンガリー語で「オーダー」)]→⑤[妻子死亡]→⑥[復讐]、という流れである。このテンプレ通りの展開を切り刻んで「RENDELとは何者なのか」を軸に話を進めているわけだが、とにかく“並べ方”が下手なのである。

冒頭で⑥を描き、後は①から順に解き明かしていくのが最も分かりやすい展開だろう。しかし、本作は①→⑥と話が飛んだ後に②から進めていく(この時点で多少の混乱がある)。更に、②から先の途中にも再三に渡って⑥が乱入してくる上に、⑥がメインで②~⑤はちょこっとしか描写がない。これでは復讐譚として感情移入しづらいし、決定的にバランスが悪くて説明も不足している。ほぼ全編が「何やってんだ、こいつ」状態で進み、そのまま終わる。

どのような効果を狙って時系列を並べ替えているのかの意図が全く見えず、ただ話を分かりづらくし、主人公のヒーロー性を薄めるという最悪の結果に終わっていた。自分以外の人にも伝わるように整理しろ。できないのなら余計なことをするな。

それでも復讐パートのアクションが良ければ一応は楽しめるが、これも褒められたものではない。世界中から招聘したステイシー(ビアンカ・ブレイディ)らの悪人は大した見せ場もなく敗れ去り(銃撃を受けるシーンでは銃撃者と被弾するレンデルの位置関係が明らかに矛盾している)、親子間の確執や事件を追う記者といった設定を盛ったラスボス戦もまるで盛り上がらない。唯一良かった点があるとすれば、中ボスがあっさりと殺されるコミカルな描写くらいだろうか。

一介のサラリーマンだったラモが、どうしてギャングを相手に無双するヒーローとなれたのか。理由はよく分からない。彼は謎の金髪女(アリーナ・トムニコフ)に導かれて復讐に走るも、これは彼が生み出した妄想である(妻子が死んだ直後に金髪美女を妄想する桃色野郎に復讐する権利はあるのか)。顔に謎のタールを塗って硬化させているが、その硬さが役に立つ場面も見られず、意味のない設定だった。その上、顔以外はタールなしの通常ボディなので、普通にダメージを受けている。どうせなら(関節以外の)全身を硬化させろよ。“最も弱い部分”を守れよ!(“使えなくなる”のが嫌だったのか。やはり桃色野郎である。ダークヒーローではなくピンクヒーローである。ヒーローもののパロディAVにでも出てろ)

そもそも敵の陰謀が何のかすらよく分からないし、顔を見せない黒幕のような奴が出てくるため、「これはもしかして続編ありきの話なのか?」と思ったら、やはり続編が制作されていた。絶対に観るもんか。

映画の冒頭とラストでレンデルが「善と悪の境界線は俺」と語っているのだが、あまりに幼稚で身勝手、危険な発想だと思う。

RENDEL レンデル(字幕版)

RENDEL レンデル(字幕版)

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