オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ヤングマスター/師弟出馬』

師弟出馬(The Young Master), 106min

監督:ジャッキー・チェン 出演:ジャッキー・チェン、ウェイ・ペイ

★★★

概要

家出した兄弟子を連れ戻す話。

短評

1980年のジャッキー・チェンの主演・監督作品。ストーリーは本筋から脱線気味な箇所が多いものの、多種多様なアクションとコメディのバランスが良い一作だった。戦い方を工夫することやジャッキーがボロボロにやられることで、戦いの中に笑いを織り込むことに成功している。ただし、格闘シーンが少々長すぎる気がしないでもなく、「確かに凄いが全部見せる必要はない」と冗長に感じられたことは否定できない。

あらすじ

怪我をした兄弟子キョンに代わって獅子舞の大会に出場した正風道場のロン(ジャッキー・チェン)。しかし、ライバルの威義道場の獅子舞には金に釣られて裏切ったキョンが入っており、ロンは敗北を喫する。ロンは彼を庇おうとするものの、事実が露見したキョンは師匠に放逐されてしまう。ライバルに負け、弟子に裏切られて門下生に当たり散らす師匠だったが、「憂さ晴らしするな。俺も出ていく」と言うロンの言葉で我に返り、彼にキョンを連れ戻すように命じる。

感想

威義道場の主に騙されたキョンは犯罪者キムの脱獄の片棒を担がされ、彼と同じ扇子を持ったロンが役人に追われることとなる。コミカルで面白い構図なのだが、ロンがキョンを探している感じが全くしないため、彼を連れ戻す話としては迂回幅の大きな力技の感がなくもなかった。

それはともかくとして、冒頭で獅子舞をし、威義道場のピュウと扇子で戦い、刀を持った役人を撃退し、偉い役人サンの息子シー(ユン・ピョウ)と椅子で戦い(これが特に好き)、と格闘の演出の幅が非常に広いのはやはり楽しい。サンの娘が“スカート拳”を披露し、後にロンが“マタドール”的に踏襲する展開もある。平均台での体操選手的な動きも凄かった。皇帝のキセルを使ったサンとの戦いもコミカルに仕上がっているのだが、勘違いで戦うことになったという構図が、凄技ながらも阿呆な戦いにマッチしていて、少々間抜け気味な脚本がアクションに好影響を与えていた。

最終決戦のキム戦は、主人公のロンよりも悪役のキムの動きの方が格好いいという謎の構図である。華麗な足技を繰り出すキムに対し、ロンはフルボッコされながらもなんとか耐える。勝手にセコンドについた威義道場の主のアドバイスと“水タバコの水”によって覚醒したロンが勝利を収めるのだが、これも決して格好いい勝利ではない。監督と主演の兼任となると、自分をよく見せようとしがちだが、よくここまで情けなくも魅力的に撮れたものだと思う。70年代の紆余曲折を経て、ジャッキーは自分の魅せ方を理解したのだろう。この戦いの舞台にどことなく“瀬戸内海”っぽさを感じた。

カンフー映画」の魅力は、やはり「カンフー」である。カンフーを駆使して戦ってこそのカンフー映画なわけだが、一つの格闘シーンあたりの時間が長いと、同じような画が続くために少し飽きてくる。カンフー映画の最終決戦は“死闘”になることが多い気がするが、コミカル路線だと緊迫感の点に弱さがあるため、少しアンバランスになりがちである。

ロンがサンの家で風呂に入るシーンが好きだった。「風呂」と言っても風呂桶やシャワーがあるわけではなく、水瓶に貯めた水で(沼にハマって泥だらけの)体を洗い流している。ここで先程まで争っていたサンがそうとは知らずに隣室にいて、水瓶・柄杓・石鹸を共有している。柄杓を探して手を伸ばしてきたサンがロンの尻に触れた時の、ロンの「あらやだ」みたいな表情が秀逸である。ジャッキーの見事な筋肉も見られるし、カンフー同様の巧みさで股間を隠す技術も見られる。

ヤング・マスター/師弟出馬 (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
ヤング・マスター(吹替版)

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  • 発売日: 2018/11/07
  • メディア: Prime Video