オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キャッツ』

Cats, 100min

監督:トム・フーパー 出演:フランチェスカ・ヘイワード、ジュディ・デンチ

他:ラジー賞作品賞、最低監督賞、最低助演男優賞(ジェームズ・コーデン)、最低助演女優賞レベル・ウィルソン)、最低スクリーンコンボ賞(半人半猫の毛玉たちのコンビ全て)、最低脚本賞(リー・ホール他)

★★

概要

ロンドンの猫社会。

短評

どこの誰が言ったのかは知らないが、「不浄なポルノ」なる不穏な評価にも「なるほどその通り」だと頷かざるを得ない一作。ラジー賞で『バトルフィールド・アース』に次ぐ6部門受賞を果たした珍作である。人間だと言うには猫過ぎ、猫だと言うには人間過ぎる。正に不気味の谷のド真ん中にいる半人半猫たちはひたすらに気味が悪く、このビジュアルでゴーサインを出した人々の正気を疑うより他にない。三十郎氏はミュージカル版を観たことがなかったのだが、ほとんどの場面がキャラクター紹介に終始する、あってないようなストーリーも全く面白いとは思えず、「気持ち悪い」と「つまらない」の二重苦だった。

あらすじ

人間に捨てられたヴィクトリア(フランチェスカ・ヘイワード。顔の作りが白人だと思ったら黒人なのか)が出会った“ジェリクルキャッツ”なる猫の集団。デブ猫のジェニエニドッツレベル・ウィルソン)らが天上の世界に行って生まれ変わる権利を懸けて歌と踊りを競い合い、長老猫デュトロノミー(ジュディ・デンチ)に選ばれることを願っていた。しかし、犯罪猫の王マキャヴィティ(イドリス・エルバ)が有力候補を一人、また一匹と攫っていき……。

感想

顔面と体の骨格は完全に人間なので、人間に毛皮と尻尾、そして猫耳を生やしたのが“半人半猫”である。この化け物の何が生理的嫌悪感を催すかと言えば、奇跡的なまでの最低のバランスとなってしまったリアルとチープの配合に原因があるだろう。着ぐるみによるコスプレの範疇は遥かに逸脱しているが、かすりもしない程に猫からも離れている。これは一種のキメラなのである。言わば、妖怪“人面犬”である。本来は交ざり合うはずのない二つの種が交ざってしまったのだから、気持ち悪くないはずがないのである。ホラー映画と言われれば納得するだろう。

「そうでもない」「観ている内に慣れる」なんて人がいるならば、認知の歪みを指摘せざるを得ない。違和感を覚える脳の働きが麻痺している。「不浄なポルノ」という酷評は“ケモナー”の存在を前提としているかと思うが、本作に登場する半人半猫たちは、彼らの醜い欲望の結晶と言えなくもない。そんなもん、気持ち悪いに決まっているではないか。歌と踊りがどんなに魅力的だと言われようが、気持ち悪いものは気持ち悪い。とてもじゃないが、正視に耐えない。また、ネズミやゴキブリまでもが半人化されており、これも常軌を逸しているとしか思えない。カルト映画になるのを狙っているのでなければ、制作陣は時代が時代なら魔女狩りに遭うレベルの変態である。

映画というメディアで表現する以上、着ぐるみという選択肢は初めからなかったのだろう。それならば、フルCGの猫に踊らせる3DCGのアニメはダメだったのだろうか。半人半猫の不気味な化け物よりも自然に受け入れられたはずである。大ヒットしたミュージカルの映画化ということで、ミュージカルの要素を残したかったのかとは思うが、全身がCGの毛皮に覆われた化け物たちが踊っていても、人間が肉体を自由自在に操ること美しさを堪能できるダンスには見えない。どっちつかずの中途半端な印象を受けるならば、「もう全部CGでいいじゃん」ということになってしまう。

グリザベラが歌う『メモリー』という曲だけは聞き覚えがあった。演じているのがジェニファー・ハドソンなので、流石に歌は上手かった。三十郎氏の知っている『ドリームガールズ』の頃と比べて随分と痩せた印象を受けたが、これはCG処理されたわけではなく本人が痩せたらしい。ボンバルリーナという半人半猫(決して「猫」とは呼ぶまい)をテイラー・スウィフトが演じているのだが、彼女を美貌をもってしても気持ち悪かった。これは大変なことだと思う。

ジェリクルキャッツは「天上の世界で生まれ変わる」ことを目指して競い合っている。「生まれ変わる」とは「死ぬ」ことに他ならないと思うのだが、皆が皆死にたがってるなんて、猫の世界は悲惨である。最後に「猫は犬にあらず」という歌詞の曲が流れるが、やはり犬の方がいい。

キャッツ (字幕版)

キャッツ (字幕版)

  • 発売日: 2020/04/20
  • メディア: Prime Video
 
キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科

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