オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・ミスト』

Dans la brume(Just a Breath Away), 88min

監督:ダニエル・ロビィ 出演:ロマン・デュリスオルガ・キュリレンコ

★★

概要

パリが有毒の霧に包まれる話。

短評

宗教おばさんも巨大な怪物も出てこないが、霧は出てくるフラン製の『ザ・ミスト』。ハネケの『ハッピーエンド』以来密かに注目しているファンティーヌ・アンドゥアンちゃんが出演している。彼女が可愛かったのはよかったし、彼女のために頑張る両親を応援することもできる。しかし、伏線の張り方が下手すぎてオチが(特に日本人には)バレバレなので、話に入り込むことが難しかった。「どうせ最後は……」というやつである。その上、その伏線が辻褄が合っていないというのがなんとも……。

あらすじ

パリに暮らすマテューとアナ(オルガ・キュリレンコ)の娘サラ(ファンティーヌ・アンドゥアン)は自己免疫疾患を患っており、特殊なカプセルの中から出られない生活を送っていた。ある日、パリで地震が発生し、地面から出てきた有毒の霧が町を覆い尽くしてしまう。マテューとアナはアパートの上階に避難して難を逃れたものの、サラのいるカプセルはバッテリーの交換が必要であり、それは霧の中に入っての作業を意味していた。

感想

「バッテリー交換に行っている間ずっと息を止めることはできない」ということで、階下の住人(死亡済み)が持っている酸素吸入マスクを拝借することに。マテューがパイプを伝って壁を下り、窓を割って部屋に侵入する。割と激しい動きをしているため、完全に息を止めるのは無理なのではないかと思うが、その後の描写からも少しくらいなら大丈夫なのだろう。「吸えば即死」というわけではないらしい。酸素吸入マスクも外気を完全に遮断できるわけではないと思うのだが、一つのマスクを二人でシェアするシーンもあったし、どうやらその辺はアバウトらしい。

霧の設定が曖昧なのはともかくとして、問題はこの部屋にいる“犬”である。物音を聞いたマテューが警戒を強めると、出てきたのは“子犬”。そして、子犬いた部屋の中では“成犬”が倒れている。この不自然なまでの対比の構図から結末を予測するなという方が無理である。完全に漫画版のナウシカじゃん。これは序盤の出来事(街が霧に包まれてから割とすぐ)なので、この後、マテューたちが何をやっていても「サラは外に出ても平気だよ」としか思えず、あまり集中できなかった。

最後はマテューが頭を打って倒れているところにサラと彼女の友人ノエが現れて、「やっぱりね」ということになる。ノエは自己免疫疾患仲間なのだが、ここで一つ問題がある。サラたちの特殊な病気が霧発生後の新世界に適応するための“進化”であるならば、カプセルなしで暮らしていた子犬が平気だったのはおかしい。“子供”が助かるのであれば、もっと早い段階で霧の性質が判明するはず。どちらにしても矛盾があると思う。その上、サラのために防護服を探しにいったマテューたちは“成犬”に襲われており、もうメチャクチャである。

砂嵐のように茶色く濁った霧の不気味な雰囲気は良かった(霧っぽくはないが)。ポストアポカリプスの世界に相応しい荒廃した色合いである。この手の映画には欠かせない人間どうしの争いの描写は少なめで、娘のために奮闘する両親にひたすらフォーカスしていたのだが、親子愛というありきたりなテーマ以外に見えてくるものはほとんどなかった。霧が毒であること以外に、人間の行動に何か影響を与えるような隠喩的要素があってもよかったと思う。病気による“旧人類”の死滅は歴史上何度も繰り返されてきたが、そのモチーフを物語に昇華するレベルには達していない。

ザ・ミスト(字幕版)

ザ・ミスト(字幕版)

  • 発売日: 2019/01/23
  • メディア: Prime Video