オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ユートピア ~悪のウイルス~』

Utopia

監督:トビー・ヘインズ他 出演:ジョン・キューザック、サーシャ・レーン

概要

コミックと陰謀論パンデミック

短評

Amazon Originalのドラマシリーズ。「パンデミックの原因は企業の陰謀でした」という「よりによって“今”これをやるのか!」という話である。もっとも、制作はコロナ禍以前だろうし、そもそもイギリスのドラマのリメイクらしいが、最悪のタイミングが逆に最高という愉快な一作だった。陰謀によるパンデミックという題材やその裏に隠された真の目的には新鮮味がなかったが、コミックという媒介要素を入れることで魅力的な謎を演出することに成功していたように思う。

あらすじ

カルト的な人気を集めるコミック『ディストピア』の続編『ユートピア』が発掘されたとの噂が流れ、界隈に衝撃が走る。ノーマルなオタクからコミックの内容が予言だと信じる陰謀論者まで様々なファンが集まって『ユートピア』の生原稿の競売が開催され、ネット上で陰謀派のコミュニティを形成していたサム(ジェシカ・ローテ)たちも初めて顔を合わせる。しかし、一人の男が大金即決でコミックを入手し、続いて怪しげな暗殺者が売り主の元へ。更には、コミックに登場するジェシカ・ハイド(サーシャ・レーン)を名乗る女まで現れ、『ユートピア』を巡る陰謀劇が幕を開ける。

感想

“人類を滅ぼすパンデミックを予言しているコミック”という陰謀論者にとっては垂涎もののアイテムを物語の中心に据え、予言を信じる陰謀論者たち、予言を成就させようとしている謎の企業、企業に利用されるウイルス学者といった人々の姿が描かれている。「一体『ユートピア』とは何なのか」「その予言の内容とは」といった大きな謎が物語の軸となり、「ジェシカ・ハイドとは何者なのか」「クリスティー博士は何をしようとしているのか」といった謎に派生していく。荒唐無稽ながらも謎に満ちた物語となっており、“次の展開が気になる状況”を常に生み出していた。

「世界に居場所を確保するために何をしたか」をやたらと強調する企業の実態が徐々に明かされ、最終的にはパンデミックの方法論や目的も判明。クリスティー博士の陰謀は完全に防がれておらず、いくつかの謎が残されているものの、一応の“解決”を見せてシーズン1は終了する。パンデミックを防ぐという“目的”の面では話が全く終わっておらず、続編ありきの展開となっているが、物語を引っ張ってきた“謎”の面では話がある程度完結してしまったことになる。本作の魅力は、“本当に陰謀が存在した”という形で謎が解き明かされていく点にあるため、博士との戦いだけでは面白い話にはならないだろう。ジェシカの父の正体などを中心に話を作るのだと思うが、絞りカスになってしまわないのかが気掛かりである。

「この話を今やるのか!」という感覚こそが逆に面白い一作なので、コロナ禍なしでも同じように楽しめたのかは不明である。陰謀も謎も、面白さが現実の状況に大きく依拠している。また、続編が制作されるのなら現実のパンデミックの解決後ということになるのではないかと思うが、その時に陰謀論が“進行中”と同じレベルの求心力を保てるのかも不明である。

ドラマが始まる前に「これは現実のパンデミックとは無関係ですよ」という趣旨の注意書きが流れる。三十郎氏はこの“偶然の一致”を笑って見ていられるが、広い世界には「I knew it!」と目覚めてしまう人もいるのだろう。そういう人々のための注意書きなのだろうが、彼らにとっては「言い訳をするのが却って怪しい」ということにならないのだろうか。この文言には日本語字幕がついていなかったので、担当者に日本人は大丈夫だと思われているらしい(大統領選挙に対する反応を見ているとそうとも言っていられない気もするが)。

景気よく人が暗殺されたり、[塩→漂白剤→スプーン]の順の拷問法が出てきたりと、割とグロ要素は多め。かと言って荒唐無稽な話がシリアス一辺倒に陥ることはなく、そのアンバランスさが、“バカみたいだけど本当だったらヤバい”というメタな陰謀論の性質に合っていた。ニコラス・ケイジのようなB級映画専門俳優になりかけているジョン・キューザックが陰謀の黒幕だと眉唾感が出てくるが、シリアスとコミカルのバランスを取る意味で好キャスティングだったと思う。

ジェシカ・ローテはどこからどう見ても陰謀論にハマるタイプではないというか、パリピにしか見えないミスキャストだと思っていたら、ジェシカに逃走用の外見に改造され、見事に負け組なゴス娘に変身していた。ようやく陰謀論者らしくなったところでの活躍を期待したら、即座に射殺されたのは大爆笑だった。サーシャ・レーンは謎めいた放浪者ジェシカ・ハイドの小汚い雰囲気にばっちりハマっていた。とは言え、最も印象的だったのは、やはりアービー役クリストファー・デナムである。なんだよ、あの髪型。

サムは早々に死んでしまったし、アリス(ファラ・マッケンジー)が幼女役にしては珍しく可愛くないため(役者は15才で幼女じゃなかった。眠たそうな顔をした幼女にしか見えなかったのでビックリ)、目立ちたがりのリリー(ハドリー・ロビンソン)が美人枠ということになるのか。

ユートピア シーズン1

ユートピア シーズン1

  • メディア: Prime Video