オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『フリー・ファイヤー』

Free Fire, 90min

監督:ベン・ウィートリー 出演:ブリー・ラーソンキリアン・マーフィ

★★★

概要

銃の取引がこじれて銃撃戦に発展する話。

短評

90分間のほとんどを銃撃戦に費やした割には地味な映画。本当にずっと銃撃戦をしているだけなので、話に抑揚はない。その上、アクション映画として迫力があるわけでもない。これだけ書くと酷い映画のようなのだが、これが意外と悪くない。くだらない理由から始まった銃撃戦が泥沼へと突き進んでいく様は「滑稽」の一言であり、そのグダグダ感がよく出た格好悪い銃撃戦となっている。Z級映画的な出来の悪さとは別の意味で、「酷いのが逆に面白い」が上手くできていた。

あらすじ

銃の取引をするためボストンの廃倉庫に集まった男女。ジャスティン(ブリー・ラーソン)やオード(アーミー・ハマー)の仲介で、IRAのクリス(キリアン・マーフィー)らが、武器商人のヴァーノン(シャールト・コプリー)からライフルを購入する予定である。 取引は無事に完了するかと思われたものの、IRA側のスティーボ(サム・ライリー)が武器商人側のハリーと昨夜ケンカしていた事が発覚し、雲行きが怪しくなる。

感想

武器の取引とは直接関係のない話から銃撃戦に発展し、そのまま撃ち合うだけの話である。第三勢力の狙撃者が登場し、電話で応援を呼ぼうとする目的ができ、ガス爆発を起こすといったイベントがありはするものの、基本的には撃ち合っている“だけ”である。撃ち合いが延々と続く。抑揚のなさが気になるし、銃撃戦に迫力があるわけでもないのに、不思議と最後まで退屈せずに観られた。「これでよく90分の映画にしたものだ」と感心する。

本当の、本当に、“撃ち合っているだけ”の映画である。「狙撃者が何者なのか」というミステリーがあったり、どうやって決着をつけるのかという注目点がありはするものの、全てが次の銃声にかき消されていく。そもそもが下らない理由で始まった銃撃戦なわけだが、ハリーとスティーボ以外には戦う理由がよく分からないため、止め時もよく分からない。「お互い金と銃を持って立ち去ろう」と手打ちにしようとしても、どこからともなく銃弾が飛んできてなかったことになる。終いには誰が誰を撃ったのかすら分からなくなってきて、事態は壮絶なカオスと化す。この滑稽さである。

「銃撃戦」という言葉からは「迫力」のイメージが想起されるものの、本作の銃撃戦はそんな格好いいものではない。AR10という自動小銃も出てくるが、基本的にはピストルでパンパンやっている。アクションスターよろしく敵を的確に撃ち抜いたり、華麗な動きで攻撃をかわすでもなく、皆どこかしらに攻撃を受けて“這いつくばっている”(ジーンズ姿のブリー・ラーソンが這いずり回るのはセクシー)。泥沼の戦いに相応しい汚い絵面である。終盤になると“歩ける人”の方が少数派で、映画史上最も格好悪い銃撃戦の一つだったのではないだろうか。それが生き残りを懸けた悲壮な戦いというわけでもなく、なんのために戦っているのかよく分からないのだから尚更である。

出血を気にするヴァーノンにオードが「動脈じゃないから1時間半は死なない」と告げるシーンがあるように、本作の登場人物はなかなか死なない。頭部を負傷して脳が露出したマーティンですら死なない。ずっと倒れたままだったマーティンが「死んでないぞ」と言い出すシーンと、復活して意識が不確かなまま動き出すシーンが笑えた。黒焦げになりかけたヴァーノンにすら最後の一撃を放つ生命力が残されているし、頭を撃ち抜くか潰すかしないと死なない。ゾンビかよ。車でスティーボの頭を潰すシーンは、正にゾンビ映画のそれだった。

他にも、状況がカオス故に、「何やってんだ、こいつら……」的に“呆れる”タイプの笑いが光る。話の展開が面白い映画では決してないし、派手に笑える場面も多くはないので、この類のブラックユーモアにノレるか否かが、本作を楽しめるかどうかの分水嶺だろう。ヴァーノンが金に執着したり、オードがやたらと落ち着いていたり、スティーボがしょうもないことで喜んだり、紅一点のジャスティンを巡って三角関係があったりと、緊迫した状況にそぐわない“くだらなさ”が散りばめられていた。

フリー・ファイヤー(字幕版)

フリー・ファイヤー(字幕版)

  • 発売日: 2017/11/08
  • メディア: Prime Video