オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ロンドンゾンビ紀行』

Cockneys vs Zombies, 88min

監督:マティアス・ハーネー 出演:ハリー・トレッダウェイ、ラスムス・ハーディカー

★★★

概要

労働者階級とゾンビが戦う話。

短評

コメディ要素強めのイギリス製ゾンビ映画。情けない孫たちが「ジイちゃんを助けにいかなきゃ!」と頑張る話なのだが、この祖父がとっても逞しいという構図である。原題の「Cockney」はロンドンの労働者階級の意で、コックニー的なジョークと戦う老人たちの姿で笑わせつつ、ゾンビの描写はそれなりにグロくて上出来という一作である。もう少し老人の活躍の比率を上げてもよかったは気はするものの、グロさが笑いとイコールになる感覚が好きだった。

あらすじ

祖父レイ(アラン・フォード)の入居している老人ホームへの食事配達を生業としているテリーとアンディのマグワイア兄弟。解体予定のホームを救うべく、二人は従姉妹のケイティ(ミシェル・ライアン)たちと銀行強盗を決行する。しかし、彼らが人質を連れて銀行から逃げようとすると、街にはゾンビが溢れかえっていた。

感想

本作のゾンビは弱い。どれくらい弱いかと言えば、歩行器なしでは歩けない老人が逃げ切れるくらいには動きがノロい。ゾンビ映画史上屈指のデッドヒートである。そんな弱いゾンビだから老人でも戦えるだけなのかと言えばそうでもなく、彼らの“躊躇いのなさ”が凄い。レイはゾンビを見るなり電動園芸バサミで首を切り取るし、他の老人たちも容赦なく銃をぶっ放す。「こいつらは何者なのか」と戸惑うことのない爽快感である。これが労働者階級ならではものなのかは分からないが、実に“カラッとした”人格が、映画に(ゾンビの動きとは対称的な)勢いとテンポを与えていた。

兄弟の兄テリーは顔色が青白くて、ゾンビ化しなくてもゾンビのようだった。白人が日焼けに拘る理由が少し分かったような気がする。一方、強盗一味で唯一ゾンビ化してしまうミッキーは黒人なので、ケイティが「噛まれた腕が青白くなってる」という割に肌色に変化はない。老人ホームでゾンビを「ヴァンパイアだ」と言うエリックに対して、レイが「ゾンビだ。時代遅れめ」と返す。老人でも知っていて、人質エマ(ジョージア・キング)が「頭を撃つのよ。常識でしょ」と指摘する世界なのに、ミッキーはどうしてゾンビの手脚を撃ってドヤってしまったのだろう。ただし、ゾンビ化した彼の頭を撃とうとしたら鉄板が入っている展開は好きだった。

ケイティが付けヒゲで変装する際にデイヴィが「小さめだから平気」と言っていたが、そんなことはないと思う。ゾンビとの戦いで躍動している瞬間もあり、なかなかの迫力だった。彼女の谷間も素敵だが、エマの青のタイツも可愛らしかった。美女二人を前にして、童貞のまま死んでしまったデイヴィは気の毒だった。

“ゾンビになっても対立しているサポーター”は、ウェスト・ハムミルウォールか。イーストエンドなのにウェスト・ハムって紛らわしいな。“天才”モイーズ率いるハマーズがスパーズ戦のラストのような謎の勝負強さを見せて残留し、チャンピオンシップで健闘しているミルウォールが昇格すれば、来年は密かに「ゾンビ・ダービーだ……」と思いながら楽しめるのか。

ゾンビ相手に活き活きと無双する“強い老人”たちが最大の見所ではあるものの、他のゾンビ殺しにも印象的なものが。母ゾンビを殺したミッキーがベビーカーの赤ん坊を取り上げると、赤ん坊も即座にゾンビ化。ゾンビ殺しに対して「人を殺すなんて……」という躊躇いが全くないように、赤ん坊に掛ける情けすら一片も存在せず、豪快がパントキックが決まるのだった。

ロンドンゾンビ紀行(字幕版)

ロンドンゾンビ紀行(字幕版)

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