オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アフターマス』

Aftermath, 93min

監督:エリオット・レスター 出演:アーノルド・シュワルツェネッガースクート・マクネイリー

★★★

概要

飛行機衝突事故の被害者と加害者。

短評

ユーバーリンゲン空中衝突事故の後に起きた殺人事件に着想を得た一作。事件の関係者は「事実と異なる」として本作に否定的らしいが、事故名を明記せずに“inspired”ならセーフだろう。犠牲者遺族と加害者の双方の苦悩が重々しく、それなりに面白い話に仕上がっていた。ただし、脚本に不備があるとは言え、シュワちゃんにここまで複雑な胸中の男を演じさせるのは無理があったように思う(できる限り深刻そうな顔をして頑張ってはいたけれど)。シュワちゃんは筋肉を使ってなんぼの人なのだ。彼が本作で筋肉を使ったのは、序盤のシャワーシーンで尻を見せびらかすところだけだった。

あらすじ

キエフからニューヨークへとやって来る妻と娘を迎えに空港にやって来たローマン(アーノルド・シュワルツェネッガー)。しかし、空港職員から事故があったことを聞かされる。事故現場のボランティアに参加して娘の遺体を発見したローマンは、悲嘆に暮れる日々を送る。一方、事故発生時の管制では電話回線のメンテナンスと同僚の離席が重なり、管制官ジェイコブは衝突を防げなかった。彼の名が報道されたことによって、マスコミ・市民からの激しい攻撃を受けることになる。ジェイコブは罪の意識に苛まれて気を病み、妻子は家を出ていってしまう。

感想

ローマンとジェイコブのどちらがより苦しんでいるように見えるかと言えば、やはり後者である。それは二人の演技力の差に起因するのかもしれないし、後者の苦しみが“攻撃される”という“事故後の被害性”を伴っているからなのかもしれない。事故発生のシーンを見る限りでは、ジェイコブには全く責任がないとまでは言えないものの、彼に全責任を押し付けるのは残酷と言わざるを得ない。支えてくれるはずの家族が去ってしまうのも、彼の気の毒さを際立たせている。

ローマンの苦悩については、シュワちゃんの演技に難がある以上に脚本の問題が大きかったように思う。犠牲者遺族が感情を整理できず、やり切れない思いを、加害性の曖昧な加害者にぶつける。この心中の複雑さが物語の面白さとイコールである。しかし、彼が“殺人”という選択肢を採るまでの心理的過程が省かれていて、“苦悩の物語”から一気に飛躍してしまった感が否めない。彼の釈放後にジェイコブの息子が殺しにくる(殺さない)後日談もあるのだが、刑務所生活の描写もざっくりとしたものなので、[殺された者]から[殺した者]への立場の転換が活きてこなかった。

航空会社の弁護士がローマンに和解案を提示するシーン。「サインしないと一銭ももらえませんよ」「あなた、経済状態厳しいでしょ」と傲慢な態度の弁護士にシュワちゃんが怒りを爆発させて暴れ回らないかとハラハラしたが(ないとは思いつつ期待した)、静かに怒りを表明するだけだった。この和解案に“航空会社のプレミアムメンバーシップ”が含まれているのだが、これは喧嘩を売っているとしか思えない。

精神を病んでおかしな行動をとるジェイコブに対して「やめて」とキツく当たる妻クリスティーナ。家に「MURDERER」と落書きされる環境に息子を置いておけないのは理解できるが、少々冷たかったように思う。名前を変えて新生活を始めたジェイコブに「一緒に暮らそう」と提案された時も「急がなくても……」と誤魔化していた。なお、この一家三人が“川の字”で眠っている時に、妻の専有面積が最も大きい辺りからも関係性が窺える。

現実では探偵を雇ったそうだが、映画でローマンにジェイコブの住所を教えるのは記者である。彼女の行為は殺人幇助に該当しないのだろうか。ちなみに、ローマンのモデルとなったヴィタリー・カロエフは、釈放後、祖国ロシアに英雄として迎えられたそうで、北オセチア共和国の建設副大臣に任命されたのだとか。ロシア側の主張では航空会社に自己の責任があるとされていることが影響しているらしい。もっとも、本作のケースだとジェイコブよりも離席していた同僚の方に問題がある気がしなくもない。

アフターマス(字幕版)

アフターマス(字幕版)

  • 発売日: 2018/02/06
  • メディア: Prime Video