オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ペーパーボーイ 真夏の引力』

The Paperboy, 106min

監督:リー・ダニエルズ 出演:ザック・エフロンニコール・キッドマン

★★★

概要

童貞が服役囚と文通する熟女に恋する話。

短評

ザック・エフロンニコール・キッドマンに小便をぶっかけられる映画(ちなみにクラゲに刺された時に小便をかけても逆効果らしい)。ザック・エフロンのパンツ一丁のシーンがやたらと多かったり、マシュー・マコノヒーが黒人ホモとのSMプレイの末に全裸拘束状態で瀕死になっていたりと(顔の傷がその伏線だったとは)、マニア向けの描写が多い一作である。黒人差別をサブプロットに据えて、何か時代や人間の闇のようなものを描きたかったのではないかと想像できるが、メインとなるミステリーと上手く結びついておらず、それぞれの魅力を引き出すことに失敗していたように思う。

あらすじ

1969年、フロリダ。大学を中退し、父の会社で新聞配達をしているジャック(ザック・エフロン)。彼の住む町で保安官殺しの事件が発生し、ヒラリー(ジョン・キューザック)が死刑判決を受ける。しかし、ジャックの兄でマイアミで記者として働いてるウォード(マシュー・マコノヒー)が裁判の経緯に疑問を感じ、同僚ヤードリーと共に調査に乗り出す。ヒラリーと文通して彼の婚約者となったシャーロット(ニコール・キッドマン)が調査に協力するのだが、ジャックは彼女に強く惹かれていく。

感想

ケバケバしいメイクをした本作のニコール・キッドマンは決して魅力的とは言えず、「マッチョなイケメン(童貞)がどうしてこの熟女に……?」と疑問を抱かずにはいられない。母が出ていったことの影響という説明がありはしたが、分かったような分からないような(初手から熟女のウェディングドレス姿を妄想するのはなかなかの猛者だと思う)。しかし、美しいニコール・キッドマンによる下品な演技は面白かった。刑務所での面会時に、ヒラリーの指示通りに股を開いてストッキングを破る。その後、エアで“する”。ヒラリーの釈放後に“人生最後みたいに交わる”時も、洗濯機の揺れと同期しているのが可笑しかった。

兄ウォードは事件の裏側に、弟ジャックは熟女に惹かれ、兄弟揃って事件にのめり込んでいく。人が何に惹かれるのかは分かったものではない。そもそも三十郎氏にはシャーロットのような“服役囚と文通したがる女”が理解できないわけだが(しかし実際にこんな人もいるであろうことは分かる)、この他人には理解できぬ“惹かれる”という感情が悲劇を引き起こす。

ヤードリーが裁判の不備を暴く記事を公表してヒラリーは恩赦を得るのだが、件の事件の真相はともかく、こいつがとってもヤバい奴である。そんな奴に惹かれてしまったばかりにシャーロットは命を落とし、シャーロットに惹かれてしまったばかりにジャックは兄を失う(「突っ立って眺めてんじゃねーよ」とは思った)。その兄ウォードも“プレイ”で半殺しにされるまで嬲られるような男である(「なぶる」に「男」が三つの漢字が必要になるが)。本作は“関わらなけりゃよかった”な話なのだが、邦題の「引力」の言葉の通りに人にはそれぞれ引き付けられてしまう何かがあり、それは一皮剥いた先にある闇と繋がっている。しかし、その闇の何たるかがよく分からないのが本作の難点だったろうか。

釈放後のヒラリーや彼の伯父が暮らす“沼”のロケーションは非常に魅力的だった。湿度・温度共に高い本作のじめじめ感をより一層引き立てている。伯父はカルト的なハーレムのような家族を築いていて、我々の知る“社会”の裏に闇が潜んでいることを象徴していたように思う。沼という場所は、その闇が底なしであることの隠喩だろう。

ペーパーボーイ 真夏の引力 (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
ペーパーボーイ (集英社文庫)

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