オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト』

Troop Zero, 97min

監督:バート&バーティ 出演:マッケナ・グレイス、ヴィオラ・デイヴィス

★★★

概要

宇宙と交信したい少女がスカウト隊を結成する話。

短評

地球の“声”を宇宙に届けるゴールデンレコードをモチーフにしたAmazon Original作品。予定調和な物語ではあったが、子役たちがとても可愛らしく、爽やかな感動を運んでくれる一作だった。“女の子らしさ”を中心とした“普通”に対して負け組たちが反逆を起こす話なのだが、少女の母への想いを根底に据えたことが奏功し、昨今の作品にありがちな説教臭さは薄かった。可愛くて微笑ましい映画である。宇宙映画は、デヴィッド・ボウイを流しておけばなんとかなる。

あらすじ

1977年、ジョージア州。毎晩空を見上げて、母がくれた懐中電灯で宇宙にメッセージを送る少女クリスマス(マッケナ・グレイス)。来たるべきバーディ・スカウトの大会ジャンボリーの優勝者がゴールデンレコードの収録に参加できると知って舞い上がるも、常勝のスカウト隊は風変わりな彼女を受け入れてくれない。そこで、女っぽい男友達ジョセフ、隻眼の伝道少女アン・クレア(ベラ・ヒギンボーサム)、凶暴な“税金”徴収官ヘル・ノー、その子分スマッシュらの負け組を誘い、自らのスカウト隊──“トゥループ・ゼロ”を結成する。

感想

クリスマスを演じるマッケナ・グレイスの子役としてのキャリアがあまりに“そうそうたるもの”で驚きなのだが、流石の演技力だった。口が半開きの笑顔や落ち着きなく変化する表情、じっとしていられない多動傾向が、絶妙に“普通じゃない子供”を表現している。ちょっと“トンじゃってる”感じである。その“ヘンなところ”がまた可愛いのだから、美少女って得だよな。

大会本番よりも出場までの過程を中心に描き、“大会での演目”を隠している構成が『リトル・ミス・サンシャイン』と同じである。どんな飛び道具が飛び出すのかと楽しみにしていたら、演目自体は普通に笑える程度だったが、そこからの一捻りが面白かった。クリスマスは母を亡くして以来、緊張した場面で失禁する癖がついている。舞台上でブーイングを浴びた彼女は失禁してしまうのだが、仲間たちが共に失禁することでスカウト隊の連帯を示すのである。これぞ真の連れション!!果たしてこれ以上に感動的な“お漏らし”は映画史に存在するのか。

他のスカウト隊とケンカするシーンが好きである。ジャンボリー出場に必須のバッジを獲得するため、クリスマスたちが料理をしていると、高慢ちきな少女パイパー(アシュリー・ブルック)たちが登場。料理の材料を投げ合う乱闘へと突入する。卵をぶつけ合ったり、小麦粉を頭から被ったり──映画ではよく見かける気がするスローモーションの光景だが、勿体なさや片付けの面倒さといった諸々の理由によって自分にはできないことが、「楽しそう」という憧れに拍車をかける。後先考えずにハッチャケられる内に経験しておかないと、後から後悔しても遅い事が人生には多すぎる。

なお、この乱闘中にザルを頭に被っているクリスマスが阿呆っぽくて可愛い(自宅にもアルミホイルを巻いたザルがある)。隊の団長を務めるミス・レイリーン(ヴィオラ・デイヴィス)がアフロヘアに煙草を挿しているシーンもあり、“頭の使い方”が独特な一作だった。ミス・レイリーンは、嫌々団長を押し付けられるも、「どうせやるなら本気でやるわよ」というタイプ。しかし、過去の逮捕歴によって資格がないことが判明する。この時、「見捨てないで」と引き止めるクリスマスに対し、「私には何の得もないのに」と言いながらも団長業を続ける。彼女は大会の後に町を去るのだが、こうした“大人の優しさ”が見える場面も素敵だった。

最後の流星群は“流れ星”というよりも“隕石”だったが、「私たちはここにいる」と力強く主張する姿は感動的だった。大会で優勝できなくても真の仲間を得られたから……なんて話は掃いて捨てるほど転がっているはずなのに、「不覚にも……」だった。宇宙と孤独は相性が良い。流星が“群れ”になったのは、クリスマスが独りではなくなったことの象徴なのである。NASAのペルサード博士がちゃっかり録音していたのは“審査員特別賞”といったところか。ゴールデンレコードには日本語の挨拶も収録されたようだが(EDロールでも日本語が流れるが、映画用に収録されたものっぽい)、こちらはどうやって選ばれたのだろう。

トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト

トゥループ・ゼロ~夜空に恋したガールスカウト

  • 発売日: 2020/01/17
  • メディア: Prime Video