オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』

Night of the Living Dead, 95min

監督:ジョージ・A・ロメロ 出演:デュアン・ジョーンズ、ジュディス・オーディア

★★★

概要

死体が復活する話。

短評

ゾンビ映画の古典的名作。本作なくして現在の“ゾンビ文化”とでも呼ぶべきサブカルのジャンルは存在し得ないだろう。単なる古典としての価値に留まらず、ちゃんと“ホラー映画”として面白い一作である。「死者が復活して生者を食べる」「噛まれると感染する」「頭部への攻撃で殺せる」といった基本的なルールが確立されたことが確認でき、人間が仲間割れする展開もこの時代から変わらない。その一方で、「ゾンビが道具を使う」描写も見られ、現代のゾンビへの認識と比較してみるのも楽しかった。

あらすじ

父の墓参りにやって来たジョニーとバーバラの兄妹。二人が帰ろうとしていると、フラフラと歩く男が現れ、突如としてバーバラに襲いかかる。バーバラを助けたジョニーは男と揉み合ったはずみで頭を打って失神し、バーバラは一人で逃げる。彼女は一軒の家へと逃げ込み、後からやって来た黒人青年ベンや、地下室にいた先客クーパー親子たちと家に立て籠もる。

感想

まだゾンビという存在が一般化していなかった時代に“謎のヤバい連中”を襲いはじめ、ラジオやテレビからの情報で徐々にそれがゾンビであることが明らかになっていく。どことなく『宇宙戦争』を感じさせる構図である。錯綜する情報の中に「探査衛星」の要素を混ぜたのは、意識したところがあったのだろうか。本作では「ゾンビ」という言葉が使われておらず、「食人鬼(グール)」と呼ばれているのだが、映画でゾンビと呼ばれ出したのは次作『ゾンビ(Dawn of the Dead)』かららしい。

「押し入られた時に逃走経路が必要だから一階に留まる」派のベンやトムに対し、「一つしか入り口のない地下室の方が安全」派のハリー・クーパー。『ゾンビサバイバルガイド』で勉強済みの三十郎氏に言わせれば、彼らは“二階”の価値を軽視している。二階に登って階段を破壊していしまえば、ゾンビには“次の一手”がないのだから。もっとも、彼らのような無数の失敗事例が学習素材となり、対ゾンビ戦の最善手が導き出されている。「ゾンビだ!頭を狙え!」「ショッピングモールに逃げ込め!」と頭から決めつけるのではなく、“手探り”で対応していることが本作をホラー映画足らしめている理由である。理解できないから怖い。これは映画に限らず恐怖の基本だろう。

なお、本作のゾンビは石を使って窓を割ったりしており、三十郎氏の知っているゾンビ対応策がどこまで通用するのかは分からない。クーパーの娘カレンがゾンビ化して母ヘレンを襲う時には、スコップ的な農具を手にして刺殺しており、“人肉を食べるために殺す”というゾンビの行動原理から外れていた。このシーンは完全に『サイコ』のパロディだと思う。

“人を喰らう”のがゾンビなだけに、食肉のシーンはインパクトがあった。モノクロの映像が不気味で、グロテスク一辺倒にならないようにバランスを取るのに向いていると思う。ユニバーサルのダーク・ユニバースではないが、ゾンビ映画もホラー映画の再解釈的な流れでモノクロ制作されないものだろうか。

ベンがグール掃討隊に射殺されて“処理”されるラストシーンは、ゾンビという事情がなければ黒人へのリンチみたいで怖かった。

本作はパブリックドメインになっているのだが、プライムビデオでは綺麗にリマスターされた画質で配信されている。一部に画像の乱れがあったものの、これはありがたい。

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド

  • 発売日: 2020/10/17
  • メディア: Prime Video