オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『クライム・オブ・マネー 完全犯罪』

The Entitled, 91min

監督:アーロン・ウッドリー 出演:ケヴィン・ゼガーズ、レイ・リオッタ

★★★

概要

負け組三人衆が勝ち組大学生三人を誘拐する話。

短評

犯人、被害者、被害者の親が、三者三様のドラマを披露するカナダ製の誘拐映画。設定の妙だった。誘拐映画と言えば前述の三者が対立するものと相場が決まっているものの、本作はそれ以上に“内輪揉め”させるのが特徴である。その様子を「犯人無能過ぎw」「親父ダッサw」と笑っている内に、上手いこと話がまとまっている。物足りなかったり消化不良な箇所はあったものの、シンプルながらも意外性のある佳作だった。

あらすじ

大学を卒業してから二年、就活が上手くいかずに実家暮らしを続けているポール。家計は厳しく、病気の母の薬代を払うこともままならず、遂に差し押さえ通知が届く。そこで、ディーンとジェンナ(タチアナ・マスラニー)の二人と共に、ポールはとある計画を実行に移す。その計画とは、金持ち大学生のジェフ、ニック、ヘイリー(ローラ・ヴァンダーヴォート)の三人を誘拐して、裕福な父親たちに一人100万ドルの身代金を要求するというもの。誘拐自体は成功したものの、仲間の暴走により計画が狂っていく。

感想

犯人三人衆について。被害者の親たちは友人同士で、一箇所に集まっているのだが、ジェフの父ボブが遅刻。これを聞いたジェンナが、「払う気無いんだろ!」とジェフを早々に射殺する。その後も、ポールの「解放しろ」という指示を無視してディーンが「殺そうぜ!」と言い出したり、全く統率の取れていない犯人チームである。入金待ちの間も暢気にテレビゲームをしていたりと、無能集団感が凄い。

意思統一できていないのは被害者の親も同じである。ジェフが死んだ後にボブが到着すると、警察に通報されると困るリチャード(レイ・リオッタ)とクリフォードが「黙っておこう」と共謀。また、誘拐がバレた後も、実は金欠のリチャードがジェフ死亡の事実を伏せたままボブに身代金を払わせたりしている。こちらはこちらで統率が取れていない。

死んだジェフを除く被害者二人は、監禁場所がニックの父の家であることからヘイリーが疑心暗鬼に駆られる。この部分は“三者全てが内輪揉めを起こす”という設定を守るために無理やり盛り込んだ印象を受けたが、三者三様に、それぞれが問題を抱えている構図は面白かった。特に気に入ったのは親チームで、レイ・リオッタが父親を演じていると“ヤバい奴の子供を誘拐してしまってトラブる”展開が予想されるが、逆に情けない男なのが笑えた。顔が怖いだけでミスリードできるのは凄い。

オチはキレイにまとまっていた。観客が仲間割ればかりに気を取られていることを上手く利用していたと思う。しかし、“マッチで煙草に火を付ける”というわざとらしい演出から二段オチが来るのかと思ったら、何もなくて拍子抜けした。「えっ、……そこで終わるの?」的な。使わないならやらなくてよかったのでは?指紋の話もどこにいった?クリフォードのあだ名スリックのネタはオチへの伏線だったと言えるが、疑問に思った側が気付かないと消化不良感がある。

通常の誘拐映画にありがちな“身代金の受け渡し”を省略するために、本作では口座振込が利用されている。ポールは「偽名の口座だから追跡しても無駄だぞ」と言っていたが、組織的な資金洗浄のルートがなければ送金先からバレるだろうに。もっとも、大手銀行がマネーロンダリングに加担していたことが明らかになったばかりなので、案外“やり方”があるのかもしれない。事実は小説よりも奇なり。