オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『The Witch 魔女』

마녀/The Witch : Part 1. The Subversion, 125min

監督:パク・フンジョン 出演:キム・ダミ、チョ・ミンス

★★★

概要

地味系美少女の女子高生が特殊能力持ちな話。

短評

韓国のバイオレント・アクション映画。超能力という設定に似つかわしくない、そして同時に韓国映画らしい血みどろのアクションが魅力的である。その血生臭い物語の主人公が幸薄系の地味な美少女と来れば、これはもう素敵な組み合わせである。主人公ジャユンを演じるのはキム・ダミ。この名前は覚えておこう。敵のキャラクターに安っぽい部分がありはしたが、ストーリーは上手くまとまっていたし、何より主人公が欠点を補うに余りある魅力を持っている。

あらすじ

とある施設から脱走し、畜産農家の夫婦に助けられた一人の少女。彼女は記憶を失っており、ジャユンと名付けられて育てられる。それから10年が経過し、女子高生となったジャユン(キム・ダミ)は、厳しい家計を助けようとテレビのオーディション番組に出演するのだが、そこで“手品”を披露し、かつて脱走した施設の関係者たちに見つかってしまう。

感想

女性主人公がバイオレントなアクションを披露する韓国映画と言えば『悪女/AKUJO』を思い出すが、同作のストーリーがゴチャゴチャだったのに対して、本作はスッキリとまとまっていた。終盤に非常に魅力的なアクション・シークエンスがありながらも、“アクションありき”でストーリーを構成することなく、どちらかと言えば“結末ありき”で伏線を張る構成となっている。

アクション映画を期待していたので「なかなか本編が始まらないなぁ……」と思いはするものの、アクションなしでも意外に引っ張る力がある。これは主演の“キム・ダミが可愛いから“の一言に尽きるだろう。親友ミョンヒ(コ・ミンシ)の賑やかさやメイクのマズさも手伝って(インスタや他の写真だと可愛いので上手い役作りだった)、大人しいジャユンの素材の良さや“か弱さ”が際立つ。地味系美少女である。「はいはい、どうせ男はこういう幸薄系の美少女が好きなんでしょ」と呆れる人もいるだろうが、好きなものは仕方がない。彼女に何が起きてしまうのだろう……というそれだけで、物語は十分な吸引力を発揮する。

彼女の“素朴な美少女”ぶりを愛でていただけに、終盤のギャップは強烈である。ストーリーの転換にも驚きがあるし、ジャユンの豹変ぶりも鮮烈。笑顔と目ヂカラである。三十郎氏は彼女の演技にすっかり騙されてしまったが、正体の判明後も「これはこれで……」と魅力的である。単純に“強い美少女”に惹かれるアニメ的な感性の影響もあるのかもしれないが、それ以上に“返り血が似合う”ことこそが重要である。ミョンヒが「色白美少女」と褒めていたように、ジャユンの白い肌には血の赤がよく映える。それも韓国映画らしい“くすんだ赤色”である。その生々しさが非常にフェティッシュであり、胸がときめく。

能力者たちはテレキネシスができるようだが、アクションシーンではあまり使用されない。銃撃戦、ナイフバトル、肉弾戦と、血の流れやすい“バイオレント路線”が徹底されている。その場にある物を投げ合ったり、能力でキャッチするようなバトルになっておかしくない設定なので、“通常の戦闘”の枠に収めることで却って意外性があった。流血量は大変に三十郎氏好みだったものの、切ったり潰したりの“瞬間”は省略されており、割とマイルドな味付けだったようにも感じられる。

敵能力者の一人を演じているのが『パラサイト』のギウ役チェ・ウシクなのだが、彼のキャラクターを筆頭に漫画的な安っぽさがあって、これは好きになれなかった。彼が電車の乗客を殺したり、ミスター・チェが室内でサングラスをしている描写は、陳腐なだけなので削ってもよかった。超能力があるので肉体的な強さはあまり関係ないのかもしれないが、顔つきがふっくらしていることもあってどうにも強そうに見えない。敵がジャユンと同世代の“被験者”であることには必然性があるものの、主人公が“少女”である場合、敵は“大人”の方が良い気もする。どちらかと言えば情けない役の方が似合いそうなウシクが「昔の俺とは違う」とイキり倒して、「レベルが違う」と一捻りされる流れは笑えた。女戦士ちゃんを演じているのはチョン・ダウン

続編の公開が来年に予定されているようなのだが、ストーリーがどうなるのか以前に、果たして撮影はどうなっているのだろう。本作よりもアクションが前面に出た作品となりそうだが、同時に「ク・ジャユンとして生きる」ことのドラマを上手く描けるのが作品の成否を分けそうである。

The Witch 魔女(字幕版)

The Witch 魔女(字幕版)

  • 発売日: 2019/02/06
  • メディア: Prime Video