オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『はじめてのおもてなし』

Willkommen bei den Hartmanns(Welcome to Germany), 116min

監督:ジーモン・ファーフーフェン 出演:センタ・バーガー、ハイナー・ラウターバッハ

★★

概要

ドイツ人一家が難民を受け入れる話。

短評

難民の受け入れを扱ったドイツのコメディ映画。複雑な問題を軽いタッチで描いてとっつきやすくする方針自体は良いと思うが、結果的に何も描けていない薄っぺらな話だった。一家が抱えている問題を難民が解決してくれる姿はマジカル・ニグロ的であり、難民の受け入れを善とする姿勢を「とっても良い奴だから」という受け入れ側の都合や理想を押し付ける形でしか肯定できていない。コメディ映画に予定調和とご都合主義は付き物だが、それだけで許されるのはテーマを持たない阿呆映画に限られる。難しいトピックをコメディの枠に織り込むことに失敗したのはともかく、コメディとしても大して笑えなかった。

あらすじ

教職を引退し、次の生き甲斐を求めるアンゲリカ。難民にドイツ語を教えようと申し込むも、「元教師が殺到している」と断られ、彼女は夕食の席で「家に一人の難民を受け入れる」と 宣言する。若作りに励む医師の夫リヒャルトや仕事が忙しい長男フィリップは反対するものの、31才で自分探し中の大学生の長女ゾフィは賛成し、アンゲリカが自身の意見を押し切る。面接の結果、ハートマン家にディアロというナイジェリア人難民がやって来ることに。

感想

日本人である三十郎氏にとっては“難民を受け入れる”という発想や行為そのものがあまりに縁遠いので理解しづらい部分があるものの、欧米では一種のノブレス・オブリージュと認識されているのだろう。ハートマン家は非常に裕福であり、余裕のある者には困っている者を助ける義務があるのだと。セレブが途上国から養子を受け入れることがあるが、基本的には同じような“施し”である。

しかし、幼い養子とは異なり、ディアロのような大人の難民はある程度“完成”されている。既に異なる文化や宗教を持っているため、そのままドイツ社会に順化することはできない。特にイスラム文化との対立は大きな社会問題となっており、時に衝突を引き起こしている。その課題に対して本作が示す処方箋は、「一部に原理主義的なヤバい奴がいるだけで、普通のイスラム教徒も彼らに迷惑している」という共通の敵を設定するもの。逆もまた然りで、「一部にネオナチ的なヤバい奴がいるだけで、普通のキリスト教徒も彼らに迷惑している」のだと。

この考え方自体は一理あるかもしれない。しかし、「だからまともな人どうしで仲良くしましょうね」では、受け入れ推進派が「自分たちこそが正しい」のエコーチェンバーを起こしているだけで、何の解決にもなっていない。ヤバい奴はそのままである。実際に存在する問題についての掘り下げが何もないため、「大丈夫だから大丈夫」というくらいの話でしかない。ディアロが“とっても良い奴”という理想的な前提がなければ、土台成立しない話なのだ。

衝突とまではいかない文化的に差異についても、「ドイツではこうなっているだよ」とディアロに説明する場面があるだけで、相互理解とは程遠い状態だった。また、ハートマン家の“現代的な”問題に対してディアロのプリミティブな感性に基づく言葉が考えを改めさせるテンプレ描写があるのだが、難民の受け入れという概念自体が先進性に依拠するものである。価値観が衝突が却って良い結果を生むこともあるかもしれないが、本作は過程を描かず“結果オーライ”に徹している。こうした“お花畑的”な解決ばかりを見せられると、現実の解決策を提示できずに逃げているだけのようにも感じられる。

一家の父リヒャルトのキャラクターは面白かった。彼は、根の部分では差別的だが、表面的には進歩的な人物として振る舞おうとしている。彼が若さに固執しているのも、“化石みたいな古臭い爺”に見られるのが嫌だからだろう。彼はアラブ系の研修医に対してキツく当たるのだが、研修医が「俺が嫌いなんだろ!」と怒ると、「俺は難民を受け入れいるんだぞ!」と主張する。「I have black friends.」と全く同じ論法である。この滑稽さは様々な場面に応用が効くだろう。日本人のような“部外者”が難民に寄り添った発言をするのも、本質的にはこれと同じ構図ではないかと思うことがある。何もしないで“良い人”になれるのだから。リヒャルトについては、難民の面接時に「気に入った人を選べるの?」と施設の担当者に質問して、「ペットじゃないんだぞ」と返される場面も笑えた。

はじめてのおもてなし(字幕版)

はじめてのおもてなし(字幕版)

  • 発売日: 2018/07/20
  • メディア: Prime Video