オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『欲望のバージニア』

Lawless, 116min

監督:ジョン・ヒルコート 出演:シャイア・ラブーフトム・ハーディ

★★★

概要

禁酒法時代の密造酒三兄弟が取締局と戦う話。

短評

実話を基にした禁酒法時代の話。ジェシカ・チャステインのおっぱいを拝める一作である。キャラクターの掘り下げが浅いようには感じるものの、戦うか屈するかしか選択肢のなかった時代に前者を選んだ男の生き様はやはり格好いい。また、原作が“祖父が孫に語った話”を基にしていることを考えると、その“格好いい生き様”に別の意味が付与されるように思われる。ほとんどトム・ハーディが格好いいだけなので、他の豪華キャスト(特にゲイリー・オールドマンミア・ワシコウスカ)が活きていないのはもったいなかった。

あらすじ

禁酒法時代のバージニア州の田舎町。ハワード(ジェイソン・クラーク)、フォレスト(トム・ハーディ)、ジャック(シャイア・ラブーフ)のボンデュラント三兄弟は、この地の密造酒ビジネスを手堅く取りまとめていたものの、シカゴからやって来た検察官と特別補佐官レイクス(ガイ・ピアース)に高額の賄賂を要求される。同業者はこの要求に屈したが、拒否した兄弟は取締局と激しく対立することになる。

感想

腕っぷしは強いが頭の弱い長男ハワード。腕っぷしが強くて頭も切れる次男フォレスト。そして、腕っぷしも頭もイマイチだが野心家の末っ子ジャック。原作者はジャックの孫なので、彼視点の物語となっているのだが、どこからどう見ても格好いいのはフォレストである。「俺たちは絶対に死なない」と思い込んでしまう少し恥ずかしいところはあるものの、彼は正に不死身の男だった。

首を切り裂かれても、腹を撃たれても死なないフォレスト。禁酒法という暴力の時代を神がかり的に生き抜いた彼だったが(もっともアメリカはいつだって暴力の時代だが)、その後、肺炎であっさりと命を落としている。首裂きのエピソードなんかは「これは死ぬだろ」としか思えないので、誇張されている部分もあるのだろう。その“伝説”が、祖父が孫に語り伝えたものであること考えると、“兄への憧れ”のようなものが垣間見えてくる。

禁酒法が廃止され、フォレストは街から逃げてきた訳ありの元踊り子マギー(ジェシカ・チャステイン)と、ジャックは牧師の娘バーサ(ミア・ワシコウスカ)と、ハワードはよく分からない女と結婚し、取締局との抗争が嘘だったかのように静かな暮らしを取り戻す。実力に見合わず野心だけが強いジャックは、はっきり言って格好悪い。その彼が厳しい時代を生き抜くことができたのは紛れもなく兄のおかげであり、兄が死んでしまった後も、自身の原体験として深く胸に刻まれていたのだろう。だからこその“格好悪い自分”と“格好いい兄”の物語であるように思われた。きっと「爺ちゃんの兄ちゃんは凄かったんだんぞ」と孫に自慢したかったのだ。

ピッチリ真ん中分けで(分け目が広いが剃ってる?)、眉毛を剃り落としたレイクス役のガイ・ピアース。あまりにも分かりやすい悪役で、コスプレ感すら漂う漫画的悪代官だったが、これも兄を“英雄化”するための祖父による誇張と考えてよいか。これくらいのテンプレ悪役がいないと、フォレストが“悪に屈しなかった男”ではなく、単なる無法者になってしまう。

レイクスにボコられたジャックが「俺の兄弟が黙ってないぞ!」と“口撃”して、更にボコられるシーンが最高に情けなかった。なお、フォレストには「立ち向かえや」と怒られている。「俺は兄さんと違って体が強くないから……」と言い訳するジャックがまた情けないのだが、「強さを決めるのは体じゃなくて気持ちだ」と、またも格好いいことを言われてしまう(これは強者の論理だと思うが)。

ミア・ワシコウスカ演じる牧師の娘バーサ。本作は非常に男臭いドラマなので、彼女が出てきた時だけ画面に“彩り”が加わっている(マギーの方は“男臭いドラマに出てきそうな女”なので)。とっても可愛かったし、祖母との馴れ初めを語っていると考えると微笑ましいのだが、“無法者と牧師の娘”という壁の高さは全く伝わってこなかった。仲間を殺されてキレる場面以外は完全にへっぽこでしかなかったジャックが、障害を乗り越えてよくこの美女を射止めたものである。

欲望のバージニア (字幕版)

欲望のバージニア (字幕版)

  • 発売日: 2014/01/23
  • メディア: Prime Video
 
欲望のバージニア (集英社文庫)

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