オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ヘッドハンター』

Hodejegerne(Headhunters), 96min

監督:モルテン・ティルドゥム 出演:アクセル・ヘニー 、ニコライ・コスター=ワルドー

★★★★

概要

チビの絵画泥棒が持ち主に追われる話。

短評

観客を“騙す”ことなく上手くオチをつけたノルウェー映画。これは上手いと唸らされた。泥棒の主人公が追われる展開は容易に想像がつくものの、追ってくる目的に意外性があり、それ故に“追ってくるだけじゃない”というのが楽しい。サイコでバイオレントな追跡者との戦いに“やり過ぎ感”があるのも素敵で、色々な意味で意表を突いてくるテンポの良い一作だった。巨人だらけの北欧でチビとして生きる気持ちというのはどんなものなのだろう。

あらすじ

リクルート会社の優秀なヘッドハンターとして成功を収めながら、裏では絵画泥棒をしているロジャー。身長168cmと小柄な彼は、金髪長身美女の妻ダイアナ(シヌーヴ・マコディ・ルンド)の心を引き止めるために金が必要なのである。ある夜、妻の画廊のパーティーで知り合ったクラス(ニコライ・コスター=ワルドー)という男がルーベンスの絵画を所有しているという情報を得て盗みに入るも、クラスには裏の目的があった。

感想

クラスはGPS追跡装置の開発者とのことで、これはもう当然にロジャーが装置を使って追われるハメになる……のだが、この目的で一波乱。普通なら「絵画を取り戻す」という目的で絵画に発信機が仕込んでありそうなものだが、クラスの裏の顔が明らかになり、映画はバイオレントかつグロテスクな展開へと突き進む。「お前、何者だよ!」とツッコみたくなること請け合いのサイコ野郎である。

ロシア人売春婦ナターシャ(Valentina Alexeeva)と会うことを生き甲斐にしている協力者オヴェの死体を発見し(湖に捨てると復活したのは笑った)、逃亡先でピットブルとの死闘を繰り広げた後に逮捕されて一安心するも、クラスがトラックで突っ込んできてパトカーごと谷底へ。この転落を生き延びたロジャーの生存力には驚嘆するし、死んだ振りをするために血を顔に塗るのが笑えた。実はクラスの手先だった愛人ロッテ(ユーリー・ウルゴード)とのナイフバトルや、髪に発信機があると察したロジャーがスキンヘッドにして多数の切り傷ができる展開もあり、なかなかの流血量だった。

しかし、それらの血生臭いグロ描写よりも、遥かにグロくて笑える描写が。本作のハイライトと言えるだろう。クラスに追い込まれたロジャーが、ボットン便所の肥溜めに沈没し、息を潜めてやり過ごす(呼吸用の筒を使う“水遁”方式。クラスは不自然な筒に気付け)。破傷風が心配である。『トレインスポッティング』以来の“最悪なトイレ”だった。三十郎氏はおっぱいで喜ぶ中学生的な心を持ちながら、うんこで喜ぶ小学生的な心も忘れないおっさんなのである。

序盤から中盤の伏線を回収するラストの展開が見事だった。“上手いオチ”というものは、観客をミスリードした上で“騙す”ものが多いように思う。しかし、本作の場合は「あれを、ここで、こう使ってくるか!」と感心させられるものだった。「最後に使うために用意しておきました」という無理やり感も薄く、ヘッドハンターかつ絵画泥棒という職業設定まで使い切っているのも上手い。「どんでん返し」とまでは言わない程度の大逆転が丁度よかった。強いて言えば、クラスの目的は別の方法でも達成できたと思う。

美人妻がジェイミー・ラニスター的なイケメンと仲良くしている姿を見て嫉妬するロジャー。ノルウェー人男性の平均身長は180cm近いとのことなので(ちなみに妻は184cm)、168cmの彼が抱えるコンプレックスは相当なものだろう。ついでに顔はスティーヴ・ブシェミルパート・グリントと足して2で割った感じである。おまけに夫婦喧嘩の描写まであれば、これは当然に寝取られ展開が待っている。絵画を盗みに入ったクラスの家でダイアナの携帯を発見するも、「浮気しただろ」とは言えないロジャーの姿がなんとも哀愁を誘うものだった。ロジャーも浮気をしていて、彼は妻に贅沢な暮らしをさせているが、あくまで“捨てられる”のは彼の方なのである。あれ程の美女であれば、代わりの男なんていくらでもいるのだから。残酷なまでの生物的格差。

そんな妻が「あなたを本当に愛してるのよ」と協力してくれる展開はアツかったものの、浮気の事実を「あれは単なる遊び」で流してしまうのは大丈夫なのか。その協力の方法も間男との再セックスが前提というのがなんとも……。北欧はフリーセックスなのか。よほど器が大きくないと嫉妬で死ねる。

ヘッドハンター(字幕版)

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  • 発売日: 2020/03/18
  • メディア: Prime Video
 
ヘッドハンターズ (講談社文庫)

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