オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『死霊のいけにえ』

Hell Fire, 93min

監督:マーク・フラット 出演:J・スコット・グリーン、ケイトリン・マリー・マーシャル

★★

概要

悪魔の子vs神の子。

短評

最低水準に達していない映像を見た瞬間に“察するレベル”の一作ではあるのだが、我慢して観ている内にナンセンスでドロドロのグロ描写にロドリゴ・アラガォン的な何かを感じ、なんだかんだで最後まで観られてしまった。オチも意外に上手かったと思う。大筋の設定以外はストーリーなんてあってないような酷いものだし、映像はコントラストがキツすぎて見辛いし、ゴチャゴチャしていて何をしているのかすら分からないシーンも多い。しかし、この“間違いなくダメ映画なのにクセになるヘンテコ具合”にアラガォン的な何かを感じるのである。

あらすじ

ポン引きのアジトに大金があるとの情報を得て、強奪に入った四人の娼婦──ロゼッタジャスティーン(ケイトリン・マリー・マーシャル)、シャニース、シナモン。しかし、目的の金は見つからず、その場に居合わせた男を人質にして顧客の別荘へと逃げることにする。その人質の正体は、アンチ・クライスト(以下AC)──サタンの息子で、彼は神の子の殺害を企んでいた。

感想

神と悪魔の戦いにはルールがある。それは「悪魔の子は神の子に直接手を出せない」というもの(逆もまた然り)。そのことに気付いたACが神の子を宿した妊婦の殺害をポン引きに依頼していたら、四人の娼婦が現れたという舞台設定である。これで「一応ちゃんと物語があるでしょ」ということになり、あとはやりたい放題のグロ描写一辺倒へと突き進む。これがなかなかにドロドロしていて、いい感じに“汚かった”。

ACは“悪魔の子”と言っても「昨日初めて父に会った」というレベルなので、へっぽこ悪魔である。したがって、全て思い通りに操る程の大活躍は見せないし、娼婦の物理攻撃に怯えたりするが、幻覚を見せたり、死んだ人間を復活させることで“悪魔的なグロ描写”に貢献している。特に、ジャスティーンが吐いたゲロから悪ジャスティーンが誕生するシーンが楽しかった。シナモンが自分の腹を割くシーンも面白そうだったが、これは特殊メイクに割く予算が足りなかったらしい。

「娼婦vs悪魔」の構図に加え、娼婦の一人が悪魔側に加担してキャットファイトが繰り広げられる。ACの「人類は悪魔が造った」「人間に神の子を殺される」という話に「なにそれ!イケてる!」と共感したロゼッタジャスティーンと戦う展開である。これが悪魔としてのACよりも遥かにへっぽこで、相手に投げつけた斧やナタが明後日の方向に飛んでいったり、冗談でやってるとしか思えない追い掛けっ子を披露する。この手の“全く怖くないホラー映画”に重要なのが“ナンセンスな笑い”だと思うのだが、本作はその点でも及第点に達していたように思う。

オチが「悪魔が勝利したと見せかけて……」というものなのだが、流石に棚ぼた勝利過ぎたので、簡単にACが勝てない展開なっているのは良かった。「大統領になりたい」との野望を語る彼の目論見が外れて、最後に一笑いできた。

グロ描写とそれが生み出す笑いは一定水準に達していると言えるので、振り切れたグロ描写の生む笑いが好きな人はそれなりに楽しめるだろう。しかし、だからと言って本作が“商業映画として最低水準”を満たしてるとは思わない。“そういう映画”なのだ。明らかな駄作なのだ。その駄作ぶりを笑いつつ、キラリとは光らないポイントを見つけて喜ぶくらいが丁度いい。真面目に改善点を検討するような作品ではないものの、強いて挙げるならば、おっぱいを見せて喜ばせてくれても良かったと思う。せっかく娼婦とポルノ女優が出てくるのだから(EDロールのシナモンの共演者の多さも笑えるポイント)。

パーカッションの利いた安っぽいBGMもアラガォンっぽかったか。

『死霊のいけにえ(Dead Fall)』という同名映画があるらしく、本作には『デビル・ウォーズ/死霊のいけにえ』という別邦題が存在する。

死霊のいけにえ [レンタル落ち]

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  • 発売日: 2016/02/03
  • メディア: DVD