オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』

Twin Peaks:Fire Walk with Me, 134min

監督:デイヴィッド・リンチ 出演:シェリル・リー、レイ・ワイズ

★★

概要

メンヘラジャンキービッチが殺される話。

短評

ドラマ版の前日譚となる劇場版。ドラマ版を視聴してもなお“わけの分からなさ”は健在なのだが、不条理コントがほぼ排されており(ドーナツが出てこなくて寂しかった)、雰囲気が重苦しい方向へと大きく変化している。ローラがとことん追い詰められていくことだけにフォーカスした気の毒な話である。ドラマ版では放送コードに合わせて抑えられていたエログロ描写が目立つようになったのも特徴だろうか。引き込まれる場面とそうでない場面の差が激しく、面白かったのか面白くなかったのかすらよく分からなかった。

あらすじ

ディア・メドウという田舎町でテレサ・バンクスの遺体が発見される。FBI捜査官のチェットとサム(キーファー・サザーランド)が捜査に訪れるものの、彼らは忽然と姿を消してしまう。それから1年後、ツイン・ピークスに暮らす女子高生ローラ・パーマー(シェリル・リー)は問題を抱えていた。彼女が薬物や性に溺れ、殺害されるまでの日々が描かれる。

感想

ドラマ版のストーリーについて勘違いしていたことが発覚した。殺人事件は“ボブありき”で、彼がリーランドに憑依する形でローラを殺させたものと思っていたのだが、少なくともローラ事件については出現の順序が逆だった。ローラの発言によると「12才の頃から」とのことだったが、彼女は父から性的虐待を受けており、その事実を否認するために“ボブ”なる存在を生み出して上書きしている。ボブが実態化するので紛らわしく感じるが、あくまで概念的な“悪”だと理解していたものの、どうやら異なる性質を持つらしい。

そんな気違い親父に抑圧された人生を送っているため、美しきローラの心はどんどん荒れ果てていく。内面が荒れると行動も荒れる。コカイン中毒となり、怪しげなクラブで男を漁り、山小屋で男たちに犯される。追い詰められるかのように破滅の一途を辿る彼女は大変に気の毒なのだが、事情が分からなければ単なるメンヘラちゃんであり、事情が分かると“理解できる存在”になってしまう。本作は、言わば“ミステリーのタネ明かし”に相当する話と言えるわけだが、死体の時のような複雑でミステリアスな魅力は失われていた。

ローラがリーランドに殺され、赤い部屋に“天使ローラ”が出現する。生前の世界で絵画から天使が消える描写があったので、死後に“天使を取り戻した”というハッピーエンドなのだろうか。ボブが“悪”で、天使が“善”の相克か。赤い部屋にはクーパーもいるのだが、彼が入室したのはローラの死後なので、あの部屋には時間の概念が存在しないらしい。やっぱりよく分からんなあ……。ローラの幻覚にアニー(ヘザー・グラハム)が出てくるのも時間軸が混乱する。“事件”の部分は分かりやすくなったが、それ以外の部分はさっぱり分からないままである。

ドナ役の演者がモイラ・ケリーに交替していた。クラブで男に舐め回されているヌード・シーンがNGだったのだろうか(ちなみに他作品では脱いでいる)。このシーンはかなり倒錯的な仕上がりで、ローラもドナもバンバン脱いでいて素敵だった(ローラは他のシーンでも脱いでいる)。三十郎氏でもお薬の力を借りれば“ハイスクール・サンド”してもらえるのだろうか。しかし、ドナ役はドラマ版のララ・フリン・ボイルの方が好みだったので、キャスト続投で見たかったような気もする。オードリーが出てこないのも残念だった。

グロ描写では、ノドチンコのアップや小人コーンスープを食べるシーンなど、“口”に関するものが目立っていた。

チェットたちがゴードンに紹介される“母の妹の娘”リルを見て、様々な暗示を読み解くシーンがある。「これくらい読み解けないと、この映画は理解できないよ」という挑戦なのかもしれないが、全てのシーンにあれだけの情報量が詰め込まれていたら、ホームズのような名探偵以外に映画を観ることはできないだろう。