オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブラインドマン その調律は暗殺の調べ』

À l'aveugle(Blind Man), 93min

監督:ザヴィエ・パリュ 出演:ジャック・ガンブランランベール・ウィルソン

★★

概要

盲目の暗殺者。

短評

フランス製のスリラー映画。重苦しい雰囲気の割には大味な話だと思ったら、リュック・ベッソンが関わっていると分かって納得した。“軽く楽しめる”程度には仕上がっているものの、「盲目」という設定が「疑われにくい」ことと「動機」にしか使われていなくて、“犯行の不可能性”のようなミステリー面の楽しさを盛り上げてくれなかったのは残念だった。犬のラウルくんは可愛かったが、あそこまで目立っておいて本筋に絡んでこないのは酷いと思う。

あらすじ

一人の女性がバラバラに解体される殺人事件が発生する。捜査を担当する刑事のラサールは、警備員の証言を基に被害者の元恋人ワルナスを疑うが、別の男の存在が捜査線上に浮かび上がる。その男とは、ナルヴィクという名の盲目の調律師で、事件の数日前に被害者の家を訪れていた。

感想

“盲目の男”が暗殺を成し遂げたトリックを暴くミステリーではない。ナルヴィクの正体は特殊部隊で活躍した英雄で、殺人の技術に長けているのである。また、「失明したことで他の感覚が研ぎ澄まされた」としており、“盲目ならでは”の描写は特にない。本当にそれだけである。終盤に明かされる動機以外には“疑われにくい”という以外に何の広がりも持たない設定なのだが、ラサールがすぐに疑うので、本当に意味のない謎設定となっている。「観客の興味を惹く」という以外に物語に対して何も寄与していなかった。

ナルヴィクが銃の扱いや格闘術に長けているのは理解できるのだが、彼が失明したのは“4年前”とのことである。生まれながらの盲者でも得られないような優れた感覚を、たった4年で身につけるのは流石に無理があるだろう。とことん盲目という設定を軽く扱っている。話自体は普通に楽しめるので、いっそ盲目設定がない方が邪念が入らなくてよかったのではないかと思う。

一件目の儀式めいたバラバラ殺人。ワイヤーで絞め殺した痕跡を消す目的でもあるのかと思ったら、あっさりとバレていた。復讐という目的のために標的を酷い目に遭わせたいのは理解できるが、殺した後にやっても意味がないだろうに。単なる自己満足である。ラサールは「これはサイコパスじゃなくてプロの仕事」と断じていたが、やはりサイコパスだろう。なお、この絞殺も盲目では難易度が高過ぎると思うのだが、やはり何の説明もなかった。二件目の爆殺も仕掛の複雑さと犯行可能時間の制限から、盲目では厳しいものがある。

犬のラウルくんと同じく出番が多くて目立っている割にはロマンス要素が一切機能していなかった相棒のエロイーズ(ラファエル・アゴゲ)。ラウルくんが可愛いだけなように、彼女も美人なだけだった。お色気枠には娼婦(Agnès Delachair)が別にいたりして、“プロデューサーが商業映画に必要だと思っている要素”を雑にぶっ込んだ感がある。

EDロールの最後に「we are producteurs.com」の文字の下に大量の名前が記されていて、これがなかなか終わらない。何のことなのか気になったのだが、サイトが既に閉鎖されていてアクセスできなかった。クラウドファンディングが何かに資金を募って制作された映画なのだろうか。名前は出資者か。

ブラインドマン (字幕版)

ブラインドマン (字幕版)

  • 発売日: 2013/12/10
  • メディア: Prime Video