オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スペースウォーカー』

Время первых(The Age of Pioneers/The Spacewalker), 137min

監督:ドミトリー・キセレフ 出演: エフゲニー・ミローノフ、コンスタンチン・ハベンスキー

★★★

概要

人類初の宇宙遊泳に成功した男の話。

短評

ロシア製の宇宙映画。昨年亡くなったアレクセイ・レオーノフ本人が監修した一作とのことである。宇宙空間の表現が高クオリティであり、ハリウッド大作以外としては傑出して“ちゃんと宇宙映画”になっていた。“宇宙を感じられる映画”というのは、それだけで価値がある(舞台が船内限定で、ちょろっとCGで外部を描くだけのB級映画がどれほど多いことか。これも宇宙という舞台が魅力的であることの証左なのだろうが)。また、宇宙遊泳という最大のミッションを果たした後にもパニック映画の如く次から次へとトラブルが発生するので、最後まで飽きさせない“楽しい映画”だったとも言える。

あらすじ

1960年代。米ソが熾烈な宇宙開発競争を繰り広げる中、次なる目標が「宇宙遊泳」へと定められる。不時着時の超絶技巧を将軍から認められたアレックス(「アレクセイ」ではなく「アレックス」表記なのはどういう事情なのだろう)は、相棒パベルと共に宇宙を目指すことに。思うように進まない訓練や打ち上げテストの失敗を乗り越え、二人を乗せたボスホート2号が宇宙へと飛び立つ。

感想

宇宙に行くまでの展開は駆け足である。パべルが降下訓練で脚を折るものの、リハビリの強行と将軍への直訴で相棒の座を堅持し(彼を持ち上げるために代役フルノフを阿呆なイケメンとして描いている)、無事に元のコンビで宇宙へ。二人の関係性がよく分からないのでドラマが雑に感じられるが、本作には描きたいエピソードが多過ぎて、そこに時間を割いている余裕はないらしい。

飛び立つ前の一悶着が面白い。事前の打ち上げテストに失敗するものの、再テストをしていてはアメリカに先を越されかねない。打ち上げの強行を求める上層部に対し、設計主任のコロリョフが「安全優先」と守ってくれるのかと思ったら、アレックスが少年時代の悲壮な過去を語りはじめ、「リスクを恐れるな」と打ち上げが強行される。この三者が、「試合に出たくて無理する選手」と「他に選択肢がなくて無理させたい監督」、そして「無理なものは無理としか言えないフィジカルコーチ」の関係のようで可笑しかった(直近でトッテナム版の『オール・オア・ナッシング』を見た影響が大きい)。結果的に成功したので勇敢なパイロットとして描かれてはいるが、一歩間違えば“上層部が無理を通したために起きた悲劇”になっていたところだろう。なお、船内で気絶したアレックスの腹をパべルがぶん殴って蘇生するシーンもあり、ソ連の「叩けば直る」的な根性主義が垣間見える。

打ち上げ後は細かいプロセスの描写を入れつつも、割と早い段階で宇宙遊泳の成功が描かれる。アレックスが船体から手を離す瞬間に少しビビって再び掴む演出はあったが、割とあっさりと成功である。残り時間が長いので「この後なにやるの?」的な邪念があって達成感はイマイチだが、このシーン自体は良かった。カメラに回転を加えることで、なんとなく「上から吊り下げてるだけじゃないですよ」感が出ている(どうやって撮影しているのだろう?“顔だけ実写“には見えなかったので、複雑なワイヤー操縦技術が用いられているのだろうか)。

大変なのはその後である。宇宙飛行士の内面にフォーカスした『ファースト・マン』なんかは「行くまで」と「行った時」がほとんどで、「帰り道」は存在しないかのようだったが、本作はその「帰り道」にこそ困難が待ち受けている。トラブルてんこ盛りである。宇宙服に、宇宙船に異常が発生し、パイロットたちは酸素中毒で気絶し、自動再突入に失敗。更に、なんとか手動での再突入を成功させるも、着陸地点不明で凍死しかける。とにかくトラブルが多かったので、最後に(メチャクチャ可愛い)娘と再会を果たした時には宇宙遊泳成功以上の達成感があった。「遠足は家に帰るまでが遠足」みたいな話である。

不時着したアレックスから発信される信号を受信したのが地元の無線オタクで、彼が「異常なし」という内容を妻に伝えると、「あんたが異常よ。早く寝なさい」と返されるのが笑えた。

スペースウォーカー(字幕版)

スペースウォーカー(字幕版)

  • 発売日: 2018/03/09
  • メディア: Prime Video