オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ダーク・スクール』

Down a Dark Hall, 96min

監督:ロドリゴ・コルテス 出演:アナソフィア・ロブユマ・サーマン

★★★

概要

山奥にある問題児専用寄宿学校の秘密。

短評

荘厳な雰囲気の寄宿学校を舞台にしたホラー映画。この手の建物は、外観は確かに壮観で期待が高まるだが、内部は暗くて細部までよく見えなかったり、似たような画面ばかりになったりする傾向があるように思う。撮影用に修復・改造できる部屋の数に予算上の制限があるのが理由なのだろうか。序盤から中盤にかけての雰囲気は好きだったが、真相判明後の展開がスポ根的力技になるのは笑ってしまった。ユマ・サーマンを見るのは久し振りだったように思う。個性的な顔立ちが校長の胡散臭さに合っていた。

あらすじ

素行不良が原因で山奥にある寄宿学校“ブラックウッド学院”へと編入させられたキット(アナソフィア・ロブ)。デュレ校長(ユマ・サーマン)の営む学院の生徒は、キットの他に自意識過剰暴力女ヴェロニカ、問題児だらけの中ではまともそうなアシュリー、金魚好きの不思議ちゃんシエラ(ロージー・デイ)、『エスター』成長後のイジーイザベル・ファーマン)の四人だけ。文学、数学、音楽、美術の専門家の授業を受け、生徒たちは驚くべき才能の開花を見せはじめるのだが……。

感想

いくら専門家の指導を受けても突如として天才的才能が開花するわけなんてないので、その才能は文字通り“天才”のものである。ブラックウッド学院は、早逝した天才の霊を生徒に憑依させ、“この世に残せたはずの作品”を創作しているのである。そんなスペシャルな技術の詳細は不明だが、荘厳な建物の学院には妖しい雰囲気が漂っており、「何かが起きている」と感じさせる。その“不安”や“疑念”がメインの映画である。

天才たちに憑依された少女の多くは自殺を遂げているようだが、これは早逝した人間の魂がそうさせるのだろうか。学院の生徒たちはそうでもなかったようだが、校長のように「芸術のための必要な犠牲」と言い切れる、とち狂った人は意外とたくさんいるのではないかと思う。最近の早逝者だと、「カート・コバーンの曲がもう一曲聞けるなら……」みたいなファンは無数にいるような。そういう“芸術ファン”を密かに募って憑依させればよかったのではないかと思うが、何か問題児でなくてはダメな事情があったのだろうか。

学院には天才以外の魂も寄ってくるようで、何も才能が開花しなかったヴェロニカが生贄にされる。何のために生贄が必要なのかは不明だが、悪霊に憑依された彼女は“リーガン・マクニール”化する。ここからがスポ根展開である。憑依ヴェロニカを発見したキットは、「あんたの才能は戦うことでしょ!戦いなさいよ!」と馬乗りになってビンタを連発する。すると、ヴェロニカが正気と元の顔色を取り戻すのである。雑だな、おい!悪霊は悪魔よりも弱いのか。

もう一つの笑いどころは、用務員のおばちゃんオーロンスキーがやたらと強いというもの。授業中にいきなりキットの髪に火をつけようとした気狂い女ヴェロニカを易易と抑え付けたかと思えば、キットと“イケナイ関係”の一歩手前になって良心を取り戻したかのように行動する音楽教師ジュール(校長の息子)に対しても見事な格闘術を披露する。首への一撃から膝蹴りに繋げる華麗なコンビネーションである。やるじゃん。逆にジュールは軟弱過ぎるだろう。これだから芸術系は……。

学院の求める天才が文学、数学、音楽、美術の四分野なのは、才能を“芸術”に限定しているからか(果たして数学はアートか)。それとも学院内で作業を完結できるからか。物理学や医学の天才が出てきても実験が必要となって困るだろうし、社会科学なんかだと現代の知識へのアップデートがないと才能をそのまま活かせない。もっとも、音楽もピアノで作曲するだけだと才能の活用方法が制限されるような。交響曲なんかは無理だと思ったが、楽譜に書き込むだけならできるか。

生徒に憑依する天才たち。シエラに憑依する画家トマス・コールは実在の人物のようだが、詩人エリザベス・ウェブや作曲家ケスラーの詳細は分からなかった(ハンス・ケスラーというドイツ人作曲家はいるが、73才没であり、「33才で死んだ」という台詞に合わない)。

文学のシンクレア先生(ジョディ・メイ)が「五日でプルーストの『失われた時を求めて』を読め」と言っていたが、無理だろ。

ダーク・スクール(字幕版)

ダーク・スクール(字幕版)

  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: Prime Video
 
Down a Dark Hall (Lois Duncan Thrillers)

Down a Dark Hall (Lois Duncan Thrillers)

  • 作者:Duncan, Lois
  • 発売日: 2011/04/19
  • メディア: ペーパーバック