オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『都市伝説:長身の怪人』

Always Watching: A Marble Hornets Story(Marble Hornets: The Operator), 91min

監督:ジェームズ・モラン 出演:クリス・マークエット、アレクサンドラ・ブレッケンリッジ

★★★

概要

スーツの覆面男がいる話。

短評

スレンダーマンと思しきスーツの覆面男を描いたファウンド・フッテージ・ホラー。「Marble Hornets」というYoutubeチャンネルの映画化作品らしく、確かに元ネタはスレンダーマンらしいのだが、子供が誘拐されないので別物として考えた方がいいかもしれない(邦題も劇場公開時の『スレンダー 長身の怪人』から変更されている)。もっとも、外見以外に特定の設定を持たないのがスレンダーマンの都市伝説としての特徴と言えるか。「何かが起きている」ということを演出するためだけの画面乱れが多過ぎて鬱陶しかったが、カメラを回す理由が付与されている点だったり、何もしてこないスーツ男の不気味さは嫌いじゃなかった。

あらすじ

差し押さえ物件の取材に訪れたカメラマンのマイロ。とある家だけは屋内が綺麗に保たれており、まるで住人が突如として消えたかのような印象を受ける。その家で発見した大量のビデオテープの中身を調べてみたところ、ごく普通のホームビデオに謎のスーツの男が映っていることを発見する。一家の失踪に関係しているのではないかと睨み、マイロは同僚のサラ(アレクサンドラ・ブレッケンリッジ)やチャーリーと調査を続けるのだが……。

感想

マイロがビデオを見ている内に判明するのは、「スーツ男は肉眼では視認できないが、カメラを通すと見える」というもの。ファウンド・フッテージにありがちな「こいつのカメラマン根性は凄いな」という違和感を排除できる設定である。失踪一家の父ダンは、偶然にスーツ男を発見し、その後は取り憑かれたようにカメラを回すようになる。その狂気がマイロに引き継がれる形である。この構成は良かったと思う。

しかし、マイロはその事実に気付く前からカメラを回し続けている。ビデオを見ている自分を撮影して別のモニターに映すというシュールな行動を取っている。スーツ男の生態確認後の行動なら理解もできるが、これではただな変態カメラフェチ野郎である。彼が最初からカメラを回していないと導入部の説明ができないのは分かるが、もう少し工夫が欲しかった。

その奇妙な自撮り以外にもマイロが撮影を続ける被写体が赤毛の美人リポーターのサラ。新年会で出会った二人は酔った勢いで交わり(羨ましい)、マイロが盗撮ストーカー野郎と化す。この盗撮を序盤の説明映像に活かしてもよかったのではないかと思う。

なお、サラは「あれは間違い。友達でいましょう」と断言し、上司のチャーリーに乗り換えている。恋人ではないので寝取られではなく、いわゆる「BSS(僕が先に好きだったのに)」とうジャンルである。チャーリーはイケメンだがパワハラ気味で、サラが彼に特別に惹かれているという印象は受けない。好きな相手が“ちょっと打算的な感じ”で嫌いな奴に抱かれている。これは我々“弱き者”にとってダメージの大きなシチュエーションである。ホラーとは全く関係ない部分で胸が痛んだ。どうしてストーカー野郎なんかに同情せねばならんのか。ちょっと自分が嫌になる。マイロに同情したばかりに、サラがどう思っているのかという根本的な見落としをしていることは認める。

スーツ男は“ただそこに立っているだけ”で、(印をつける以外は)本当に何もしてこない。一家の失踪はスーツ男の存在に気が狂って逃げ出しただけである。一家やマイロたちに“事件”が起こりはするものの、スーツ男がカメラの映像外に出現して何かをするわけではなく、憑依という形をとっている。憑依したのも「何かをした」と言えるかもしれないが、物を言わず動かずなスーツ男の“意思”がまるで感じられず、怪物や幽霊とは異なる種類の不気味さを感じられた。ということは、可愛い白ラブラドールのマーティ(ライリーくん)が死んでしまったのは、カメラを止めている間に飼い主マイロが手に掛けてしまったことになるのか。ショッキング。

都市伝説:長身の怪人(字幕版)

都市伝説:長身の怪人(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/02
  • メディア: Prime Video