オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『IT/イット』

IT, 187min

監督:トミー・リー・ウォーレス 出演:ティム・カリー、リチャード・トーマス

★★★

概要

怖いピエロが子供を襲う話。

短評

1990年版の“それ”。本来は全2話のテレビシリーズなのだが、いかにも「私は映画です」みたいな顔をして、まとめて配信されているので映画扱いしておこうと思う。ペニーワイズが路肩の排水溝から「やあ、ジョージー」と白い顔をぬらりと出現させる、ガチで怖いのかギャグなのか分からなくて混乱するシーンがピークである。ルーザーズ・クラブ(字幕の弱虫クラブよりも直訳で負け組クラブの方がしっくり来る)全員分のエピソードを一人も漏らすことなくご丁寧に描いているので冗長な印象を受けるものの、最終決戦がショボすぎることを除けば、それなりに楽しかった。

あらすじ

メーン州デリーで子供の失踪・殺害事件が続発し、図書館職員のマイクが、散り散りになっていたかつての仲間たちに連絡を取る。ビル、ベン、べヴァリー、エディー、リッチー、スタン、マイクの7人は、ちょうど30年前にピエロの怪物“イット”と対決した過去があり、“それ”が戻ってきた時には再び集結することを誓っていたのだった。

感想

マイクがルーザーズ・クラブの一人ひとりに電話を掛け、その度に回想形式で少年時代の物語が進行する。こちらは物語や設定上の核とも言えるシーンなので面白いのだが、後編に入ってメンバーがデリーに戻ると、これまた一人ひとりをペニーワイズが脅迫するシーンが挿入される。全2話形式なので仕方がないのだが、これは流石に冗長に感じた。同じことの繰り返しである。「全2話のドラマ」と「3時間の映画」とでは、同じ映像メディアであっても視聴形態によって印象が変化することが分かる。1話ずつ分けて観ていれば違った感想になったかもしれない。これが「一作ではあるが、一気には読めない長編小説」だとどうなるのだろう。

子供時代に「子供には見えるのに大人には見えない」という描写があり、「見えないものが見えている子供」よりも「見えているものが見えない大人」の方が不気味に感じるという面白いシーンになっている(風船が爆発して血糊が飛び散るシーンは怖い)。大人になったメンバーにペニーワイズが見えるのは(体験自体は忘れていても)子供時代の恐怖を忘れられないからなのかと思ったが、ビルの恋人オードラ(オリヴィア・ハッセー)たちにも見えているため、ペニーワイズの意思次第なのか。ロリショタ好きの変態ピエロ野郎が年増の肉を好まないため、大人には姿を見せないだけなのか。それならばメンバーを脅してむざむざ倒されたりなんてしなくても、大人しく子供だけを狙っていればよかったものを。負け確だから虚仮威ししてたのか。

間抜けなのか怖いのか分からないのが妙にリアルでやっぱり怖いピエロのビジュアルと怪演は最高である。リメイク版の方は“間抜け感”の方が減っていたため、CGのクオリティが上がったのに逆にリアリティを失っていたように思う。この怖いピエロが何の説明もなく、カニなのかクモなのか分からないショボい怪物へと変化してしまう展開はガッカリの一言だった。怪物じゃない怪物なのが良かったのに。少なくとも恐怖描写の面ではピエロの魅力が全てみたいな映画なのに台無しである。最終決戦を前にしてエディーが「ウソをつきました。僕は童貞です」と告白するシーンがあるのだが、「愛してない相手は抱けない。愛しているのは君たちだけ」という発言から察するに、彼はクラブの誰かを好きなゲイだったりするのだろうか。

仲間をイットに殺られて、自らも老化させられた上に精神病院行きとなるイジメっ子のバウワーズ。彼の姿を見ていて思うのは、イジメっ子というのは随分と不毛なことに大変な情熱を燃やしているということである。標的を待ち伏せし、追い回しと、有限な時間とエネルギーの大半を費やしている。他にしたり考えたりすることはないのか。四六時中イジめる相手のことだけを考えているのなら、それはもう半分恋である。イジメっ子は往々にして男性的に描かれるが、その男らしさが自らのホモ隠しのためのホモフォビアにすら思えてくる。

少年時代の方は12才という設定らしいのだが、それから30年後の42才と言えば、皆いい年をした大人である。灯台守として町に残ったマイク以外は社会的に成功しており、リッチー(彼の恐怖の対象である狼男の映画は『心霊移植人間(I Was a Teenage Werewolf)』)なんかは結婚と離婚を繰り返しているようだが、誰一人として子持ちがいない。これは子供時代の恐怖に決着をつけられていないことが関係しているのだろうか。虐待父に育てられ、DV男に引っ掛かるというダメ男に惹かれてしまう典型的幸薄女べヴァリーが、イットとの対決後、僅か数週間で妊娠を果たしたのはその証左か(40代だと確率的に相当低いのでは?)。

本作ではペニーワイズの出現が「30年毎」になっているのだが、原作では「27年毎」らしい。それ故に、本作が製作された1990年の27年後である2017年にリメイク版が作られたようである。この数字には何か意味があるのだろうか(明確に何らかの意味があれば改変しないと思うが)。リメイク版の方は少年時代編しか観ていないため、内容を忘れず比較できる内に大人時代の方も観ようと思う。

イット (字幕版)

イット (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
IT 1-4巻セット

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