オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『フューリーズ 復讐の女神』

The Furies, 82min

監督:トニー・ダキノ 出演:エアリー・ドッズ、リンダ・ゴー

★★★

概要

美女と野獣のデスゲーム。

短評

オーストラリア製のスラッシャー映画。一風変わった複雑なルールのデスゲームとグロ描写の楽しい一作である。「これはどういう状況なの?」という疑問の答えを“よくある話”のように見せかけておいて、「そうではないよ」と。この謎の解明だけでも十分に引き込まれるし、その上、生々しくも豪快なグロ描写が高クオリティである。ありきたりな話がありきたりで終わらない──この意外性こそが、三十郎氏が“決してメジャーとは言えない作品”に対して求めているものである。もっとも、魅力的なルールを活かしきっているとまでは言えず、結末もありきたりなため、そこに工夫があればもう一段上の評価になったか。

あらすじ

友人マディと共に何者かに拉致されたケイラ(エアリー・ドッズ)。彼女が目を覚ますと、そこは森の中で、シーナ(テイラー・ファーガソン)とアリス(ケイトリン・ボエ)という自分と同じ状況らしい二人に出会う。二人は仮面の男たちから追われており、ケイラも一緒に逃げようとするが、意識障害持ちの彼女は気絶してしまう。

感想

最初はよくある“狩り”に巻き込まれたように見えるが(よくあっては困るが)、斧男がサリー(ハリエット・デイヴィス)を襲っているところにショーテル(半円形の剣)男が乱入し、単純な狩りではないことが判明する。三十郎氏は「男側は殺した数でスコアを競っているのかな?」と思ったが、ナタを持った豚仮面が爆死する不可解な展開を経て、これが「美女と野獣」なる特殊ルールのデスゲームであることが分かってくる。

男と女が収められていた箱にはそれぞれ番号が降ってあり、同じ番号を持つ者は、言わば“カップル”である。ゲームの目標は「最後までカップルで生き残ること」らしく、男は無闇矢鱈に女を殺せばいいわけではない。自分の相手が死ぬと、件の豚仮面のように爆死するのである。また、男はこのルールを理解しているらしいが、女は知らされていない。その代わりに、自分の相手が死んでも爆死しないという有利な設定が付与されている。「拉致された女が仮面男と手を繋いで見事に勝利」なんてハッピーエンドが許されるはずがないので、そのための設定だろう。

謎の仮面男たちに追われるスリラーを展開しつつ、「ゲームのルール」という「謎」が徐々に解けていく。このバランスとスピード感が良い。また、謎が解けると、女たちの「同じ状況」が同じでありながらも同じでなくなって、男たちと同じく利害の衝突が発生する。スラッシャー描写一辺倒になることを防ぐ、非常によく練られた設定だったと思う。一方で、ルールが判明した後に心理戦の要素が活かされたのは、「男を殺すよりも女を殺して勝ち残る方が楽じゃん」とシーナが気付くシーンくらいのものであり、そこは少々物足りなかったか。

拉致前は「いつまでもあんたを守れないよ」とマディから言われながらも、ゲームの中で逞しく成長していくお嬢様のケイラ。彼女の服にはマディがスプレーでイタズラした赤い染みがあるのだが、“染み”が増える度に彼女は強くなっていく。やがてその染みは元の染みを上書きするまでに至る。面白い演出だったと思う。なお、外の世界では「ルールを破るか、潰されるか」と強気だったマディは、ゲーム内ではオドオドしているだけであり、その弱さを露呈している。「私が守ってあげる」という態度は、勉強その他で勝てない相手に対するマウントであり、実は精神勝利法の一種なのである。

ケイラが目覚めた後にカメラが上空へと飛んでいき、そこには広大な森が広がっていることが分かる。絶望感である。しかし、割とあっさりと森を抜けた後に「森からは出られない」という装置が出てきて、折角の絶望感が台無しだった。あの広い森の外側全体に張り巡らせるなんて相当に面倒だろう。

好きな殺し方ベスト3。第三位は、豚仮面の爆死シーン。やはり「頭が吹っ飛ぶ」というのは特別な爽快感がある。爆死しなくてもケイラが勝てそうな状況だったが、そのまま殺しても面白いシーンにはならなかっただろう。ショーテル男(マスクはレザーフェイス風)のナイスアシストである。第二位は、頭を真っ二つにかち割られるシーナ。やはり「真っ二つ」というのは特別な爽快感があり、主人公を裏切った直後なのが拍車をかける。

そして栄えある第一位は、アリスの顔面削ぎ落とし。これが最も“痛い”。そもそも斧を押し当てた状態から顔を削ぎ落とすように切られるなんて思わないではないか。意外性である。なんという切れ味!この世界の刃物は全体的に切れ味が高めだったが、種類の当たり外れは大きそうだった(射程的にナイフが一番不利かな)。惜しくも次点となるのはサリーの“腕もぎ取り”だが、この前に斧投げが綺麗に決まっていたため、その時点で死んでおくべきだったと思う。ショーテル男に対するドリルグリグリも良かったが、ほぼ決着がついた後の死体蹴りなので評価は落ちる。眼球のくり抜きは、“殺し方”じゃないので対象外とする。