オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アウトサイダー』

The Outsider

監督:ジェイソン・ベイトマン他 出演:ベン・メンデルソーン、シンシア・エリヴォ

概要

殺人事件の容疑者に完璧なアリバイが存在する話。

短評

スティーヴン・キング原作のドラマシリーズ。導入部こそ純粋なミステリーのようだが、キングの小説が原作なので「謎」の部分は「超常現象」によるものである。したがって、「これはキング作品なのだ」と最初から意識していないと、あまりに魅力的な謎の解明としては肩透かしを食うタイプだと思う。第一話が最高の引き込みなのに対して中盤以降に間延びした感は否めないが、探偵ものの体裁をとることで「“それ”の存在を否定できない」という事実が浮かび上がり、じわじわと恐怖が滲み出す一作に仕上がっていたと思う。

あらすじ

田舎町で少年の殺人事件が発生する。刑事のラルフ(ベン・メンデルソーン)は、複数の目撃証言と物証を得て、少年が所属していた野球チームのコーチ・テリー(ジェイソン・ベイトマン)を逮捕するが、テリーが事件の発生日時に違う場所にいた証拠が浮かび上がる。同じ人物が同じ時刻に違う場所にいる──この矛盾した事実を前にしても検事は物的証拠をもって訴追を進めるが……。

感想

「刑事もの」と見せかけての「探偵もの」である。超常現象を前にして、「論理的な説明を必要とする」刑事だけでは話を進められないので、そうしたものの存在を否定しない探偵のご登場である(ちなみにこれが大オチ)。特殊な能力を持つ天才探偵ホリーが事件を捜査すると、同様の不可解な事件が次々と浮かび上がり、「これはエル・クーコ(=ブギーマン)の存在を認めないことにはどうにも説明がつかんのです」 ということになる。当然周囲は「説明がつかんと言われても……」と微妙な反応を見せるわけだが、事件を解決するためにはどうしても「信じるより他にない」という状況になる。あたかも視聴者に「信じられなくても信じろ」と強要しているかのようだった。

本作の恐怖描写は、いずれも「理解できないものは怖い」というやつだったように思う。「証拠の揃った容疑者が別の場所で同時刻に監視カメラに映っている」というのは、ミステリー的に興味深くて楽しくありながらも、“人ならざる存在”の力を感じずにはいられない(だからこそ“普通のミステリー”が論理的に説明してくれるとスッキリするのだが)。「何なのかは分からないけど、何かが起こっている」という感覚は地味に嫌な気分になる。

エル・クーコに取り憑かれた者たちが操られる姿も同様である。エル・クーコはワケアリな人間を狙うので、最初の方は「少し気が触れたかな?」程度なのだが、徐々に常軌を逸してくる。「何なのかは分からないけど、ヤバい事に起きているぞ」と。とりわけ、操られた者たちが“自殺”を遂げる最期の瞬間は異様である。また、ホリーが症状の進行したジャックと車内に二人きりになるシーンの緊迫感が凄かった。

この「何なのかよく分からない状態」という恐怖で引っ張っているため、中盤は凄く間延びしている。そのどっちつかずな雰囲気が魅力の一作なので仕方がないのだが、「キング原作だし、どうせ“いる”んでしょ」という気持ちもあって、もう少しサクサクと話を進めてほしいような気もした。これで実際にそうすれば「サクサク進行すぎて魅力を損なっている」と感じるに決まっているのだから、バランスというやつは難しい。

そうして散々引っ張った結果が「エル・クーコです」なのはよいとして、決着シーンは肩透かしだったように思う。その直前のジャックとの銃撃戦が盛り上がるだけに、本体が弱いと拍子抜けする。これも「いる」と分かって恐怖が薄れた後なので、盛り上げ方の問題は難しいが。

登場人物にも、エル・クーコの巣にも“過去”があり、それが物語に一定の説得力を与えている。それとは別にキャラクター性の演出で印象的だったのが、ホリーの“普通さ”である。彼女はサヴァン症候群的な特殊能力の持ち主なのだが、通常この手の天才探偵は事件解決以外に興味を示さないような“非人間的な人間”として描かれがちである。ところが彼女は、捜査中に知り合ったアンディという元刑事と恋に落ちる。これを「無理やり入れたロマンス要素」と受け取ることもできるのだろうが、漫画的にデフォルメされていない、血の通った人間の描写として逆に新鮮に感じられた。

アウトサイダー(字幕版)

アウトサイダー(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 
The Outsider: A Novel

The Outsider: A Novel

  • 作者:King, Stephen
  • 発売日: 2018/05/22
  • メディア: ハードカバー