オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『フレディ/エディ』

Freddy/Eddy, 94min

監督:ティーン・テルマン 出演:フェリックス・シェーファージェシカ・シュヴァルツ

★★★

概要

双子かイマジナリーフレンドか不明の自分に瓜二つの男が現れる話。

短評

思い込みを上手く利用したドイツ製の双子スリラー。佳作である。「精神障害」や「イマジナリーフレンド」という要素が登場した時に、観客が主人公を「信頼できない語り手」だと認識する傾向を利用したミスリードに騙された。最近流行りの(?)「寄生性双生児」の存在が示唆され、こちらもそうかと構えて観るわけだが、最終的にバッサリと切り去ったオチになっている。これは安易にも思えるが、二段構えの構成がなんとも面白い一作である。

あらすじ

妻ザンドラ(アナ・ウンテルベルゲル)の寝取られ現場を目撃し、間男をボコって訴えられた画家のフレディ。しかし、彼は暴行に覚えがなく、その後も銀行口座が全額引き下ろされて解約されるといった不可解な出来事が続く。ギャラリーのカルロッタ(カタリーナ・シュットラー)にも展覧会の中止を言い渡されて散々なフレディだったが、ある日、彼の前に自分と瓜二つな男エディが現れる。フレディはエディが幻覚だと疑うものの、生まれて間もなく亡くなった双子の兄弟の存在を知り、エディが実在すると信じ始める。

感想

第一に、観客は当初のフレディや周囲の人々と同じくエディの存在を疑ってかかるので、「何が起きているのだろう」というミステリーが成立する。この謎の答えは当然に「エディはフレディが生み出した妄想で、彼の行動はフレディが無意識の内にしている事なのだろう」と推測されるため、辻褄の合わない部分に頭を抱えることになる。同時に、フレディが「証拠を抑えたぞ!」と興奮して弟ダーヴィトにビデオを見せる姿を見て、「自分じゃん」と笑いながらツッコむことができる。

第二に、どうやらエディが実在するという事が判明するのだが(この部分には飛躍あり)、その場にフレディが不在という展開の妙である。ダーヴィトたちはエディの実在を知って対応しようとするのだが、肝心のフレディだけが疑心暗鬼で、何が起きているのか分かっていない状態である(エディも「僕がいるのは君の頭の中」と煽る)。この事が対決シーンに奇妙な笑いを生み出す。エディが非現実の存在であればダメージが自分に跳ね返ってくるとを懸念しているのか、フレディの攻撃は「ペンで刺す」というショボいものである(後述の少女ミツィは鈍器で豪快に殴るのに)。実在を疑って暴走するが、実在を信じ切れずに思い切った行動ができない(単純に弱いだけかもしれないが)。その後に彼が鈍器で殴ったのは、ミツィの攻撃により自分にダメージがないことを確認できたからか。

寄生性双生児のネタを使うと、どうしても「潜在意識」といった小難しいテーマと対峙せざるを得ない。本作はその点について観客の頭を悩ませた上で、大胆に“普通のスリラー”へと舵を切る豪腕であった。これは気持ちの良い裏切りである。ミスリードにはしっかりと引っ掛かったし、騙された後にもしこりが残らない。大した中身もないのに“それっぽい描写”で高尚を気取る作品は気に食わないのである。

ドイツの引っ越し文化について。日本では「引っ越しの挨拶」として“引っ越した側”が元からの近隣住民に粗品を配るものとされているが、ドイツでは逆らしい。フレディの向かいにパウラ(ジェシカ・シュヴァルツ)とミツィ(グレタ・ボアチェク)の母娘が越してきた時にそのようなやり取りが見られる。なお、この母娘はエディに親子丼を狙われ(フレディもパウラを狙って淫夢を見て、その夢にミツィも現れるので似た者どうし)、娘が毒牙にかかるのだが、彼女のプールでの水着姿を見る限りでは欲情するのも無理はないと思う。ミツィは14才という設定だが、演者は撮影時に17才なので、三十郎氏がロリコンかどうかはギリギリセーフということでお願いしたい。本作に登場する女性は、ダーヴィトの恋人ナディヤ(サンドラ・シュライバー)のような脇役に至るまで美人揃いで眼福だった。

ラストシーンは蛇足だった。明確なタネ明かしをしなくとも、ギターを弾く姿だけで観客には理解できる。この手の描写をやり過ぎると、逆に後味の悪さが毀損される結果となる。ニヤリと笑うカットを入れず、ミツィの表情が凍りつく瞬間で終わっていれば良いバランスだったのではないだろうか。ちなみに、EDロール後に“おまけのタネ明かし”まであって、せっかく面白かったのに気持ちが少し冷めてしまった。ラストシーンの印象は大事である。

間男に挑発され、精神科医にライオンのモノマネをさせられと、情けない姿ばかりを見せるフレディ。その中でも秀逸だったのが、エディとパウラを追跡すべくソリに乗るシーン。本作には“妙に笑える描写”がいくつかあるが、これは豪快に笑える。

フレディ/エディ

フレディ/エディ

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