オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』

Iron Sky: The Coming Race, 92min

監督:ティモ・ヴオレンソラ 出演:ララ・ロッシ、ウラジミール・ブルラコフ

★★

概要

地球の地下世界からエネルギー源を奪取して月面基地住民を救う話。

短評

アイディア一発勝負で勝利した清く正しく美しくB級映画アイアン・スカイ』の七年振りの続編。バカ映画という点では前作と同じく楽しめるだのが、“一点突破”の要素がなくなってしまっていたのが残念だった。「ナチスが月の裏側で生き延びていた」という以上に面白くてバカな設定が存在するはずもなく、話を広げ過ぎて、何が魅力の映画なのかを見失ってしまった印象である。前作の美しき女月面ナチ・レナーテの老化問題のクリア方法は鮮やかだった。

あらすじ

2018年、地球は月面ナチスの攻撃を受け、全面核戦争に突入して滅亡する。生き延びた人類は月面ナチスの基地へと逃げ延びて暮らしていたが、人工過多と供給不足によりジリ貧であった。2047年、ロシアから飛んできた宇宙船に死んだはずの元月面総統が紛れ込んでおり、レナーテ(ユリア・ディーツェ)とワシントンの娘オビに人類の進化の真実を告げる。そして、地球の地下空間にある伝説都市アガルタへ行き、ヴリル・ヤーというエネルギーを持つ聖杯を手に入れるよう求めるのだった。

感想

アイアン・スカイ』と『センター・オブ・ジ・アース』を合体させて(『ナチス・イン・センター・オブ・ジ・アース』という映画が別にあるらしい。ナチスは本当に何でもありで羨ましい)、『インディ・ジョーンズ3』風のプロットにまとめた一作である。前作の設定が「ナチスが月の裏側で生き延びていた」だったのに対し、本作は「ヴリル族という宇宙人が太古の昔に地球にやって来て、月面総統となるエイリアンが猿(アダムとイヴ)を人類に進化させ、地球の歴史の重要人物は皆ヴリル族だった」というもの。この設定を用いてナチス関係者以外にも全方向をバカにしているが、観客の知識を考慮してなのか最近の人物が多かった印象である。

ヒトラースターリンサッチャーといった政治家からザッカーバーグに至るまで数多くの有名人が“イジられている”ものの、これらのネタはそれほど笑えなかった。「いっぱい出せば誰かはウケるだろう」的に欲張り過ぎて、一人ひとりの描写が薄くなってしまっている。風刺として印象的な切り込み方も見られない(二つの一神教が仲良く聖戦していた点くらいか)。人間に擬態する前からヒトラーヒトラーっぽいのは好きだった。

逆にガッツリとイジられていて楽しいのが、ジョブズとアップルである。月面基地は“ジョブズ教”の支配により貧富の格差が拡大しており、信者たちは「いと高き価格を与え給え」と祈りの言葉を唱えてジョブズを崇拝し、そのクローズド・システムを崇めている。デフォルト原理主義者である彼らは“出荷時の完全なる状態”以外を認めておらず、“脱獄”した者は破門(=爆破)される。ウィンドウズとアンドロイドのユーザーであり、アップルフリーな生活を送る三十郎氏には気持ちの良いイジりであった。アップルとユーザーの関係を宗教っぽいと気味悪がっているのは三十郎氏だけではないのだな。

そこまでアップルを貶して持ち上げるのが、ノキアである。本作はフィンランド映画なのだ(ヴリル族にケッコネンというフィンランドの首相がいるが、その影は薄く、発言しても無視される)。名機ノキア3310は核戦争を耐え抜く堅牢性を誇り、Wifiなしでも使えるコンパス機能があり(iphoneも使えるらしいが)、おまけに「スネーク」なるゲームまで楽しめる。凄いぞ、ノキア!くたばれ、アップル!

正々堂々とバカをやるB級映画らしい一作ではあるものの、CGのクオリティは極めて高い。一部のセット以外はほとんどがCGによる描写だろう。これを「贅沢」と言うべきか。それとも「技術の無駄使い」と言うべきか。

前作から30年が経過した物語なので、レナーテは本人以上に老化している。特殊メイクの力を借りて、ほとんどお婆ちゃんとなっての登場である。地続きの物語で外見が異なると違和感があるが、これだと無理が生じない。また、ヴリル・ヤーの力によって若返りを果たした姿は今なお美しく、ヒトラーが乗ってきた恐竜を華麗な飛び蹴りで退治するするシーンが本作のクライマックスだった。

ちなみに、続編『The Ark: An Iron Sky Story』がポスト・プロダクション作業の段階に入っているとのこと(しかもアンディ・ガルシアが出演しているらしい)。本作のラストは「火星にソ連の基地が……」というものになっているのだが、そのまま踏襲するのだろうか。

アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲 (字幕版)

アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲 (字幕版)

  • 発売日: 2019/12/04
  • メディア: Prime Video