オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『レプリカズ』

Replicas, 107min

監督:ジェフリー・ナックマノフ 出演:キアヌ・リーブスアリス・イヴ

★★

概要

事故で家族を亡くした科学者がクローンを作る話。

短評

主人公の支離滅裂なキャラクターと滅茶苦茶な展開が笑えるSFスリラー。笑っている分には楽しいのだが、“三十郎氏の勘違いでなければ”ではあるものの、本作はスリラーのはずである。きっとコメディではない。『チャッピー』みたいな話なのかと思ったらいきなりクローンが出てきて話が大きく飛躍し、完成した複製を巡るスリラーかと思ったら企業と

対決するアクション映画へと再度飛躍する。キアヌ主演の割にはCGやアクションもショボいし、はっきり言ってポンコツ映画である。

あらすじ

人間の神経情報を抽出し、人工脳へと移植する研究をしているビル(キアヌ・リーブス)。週末の家族旅行の道中で事故に見舞われ、妻モナ(アリス・イヴ)と三人の子供を亡くしてしまうが、ビルは一計を案じる。勤めている企業のクローン技術を使って肉体を作り、自らの情報移植技術を用いれば、家族を複製(レプリカ)として復活させられるのではないかと。同僚エドの協力を得て、計画を実行に移すビルだったが……。

感想

人工脳への神経インプリントにも失敗しているのに、クローンはできるという大飛躍である。それはともかく、クローン培養ポッドが三つしかなく、ビルは「一人除外する」という選択を迫られる。妻を躊躇なくシードして、ソフィ(エミリー・アリン・リンド)、マット、ゾーイ(アリア・リーブ)の一人から“クジ引き”で選ぶという決断を下す。「家族が死んだ!実験のチャンスや!」と即断する時点でサイコパス臭を漂わせているビルだが、“家族を想う父親”とは思えぬ“ヤバい人”感が全編に滲み出ている一作である。

複製の作成を決めたビルは、まず同僚のエドを呼び出す。「失敗した時に廃棄する覚悟はあるか」と問うエドに対して「失敗しなきゃいいじゃん」と能天気なビルだが、このエドの酷使が凄い。ただ実験を手伝わせるだけでなく、会社から設備を盗み出させ、「自分には無理」と死体を始末させ、上述のクジすらも引かせようとする(これは拒否される。エドの基準が分からない)。キアヌはイメージ通りの“良い人”を演じているはずなのに、これではマッド・サイエンティストである。犯罪の片棒を担がされた挙げ句、上司に殺されるエドが気の毒だった。ちなみに、エドを演じているトーマス・ミドルディッチは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で“金魚の世話していてクビになる男”を演じており、ソフィから金魚の世話を任されるシーンがあって笑えた(意図した演出ではないだろうが)。

ビルのサイコパス・エピソードは止まらない。クローンの培養が完了するも、肝心の神経インプリント問題が解決していないため、「昏睡させて時間を稼ぐ」と即断。束の間の再会を喜ぶ素振りすら見せない。また、神経インプリントに成功して遂に複製を完成させても、「家を片付けなきゃ」と再度昏睡させる。喜べよ。怖いよ。ティーンエイジャーに成長した娘の裸を久しぶりに見た父親の感想が気になったが、このサイコパスだと“モノ”としか認識していない可能性がある。なお、「家を片付けなきゃ」と言った割には詰めが甘く、ゾーイの痕跡を残しまくってすぐにバレるビルであった。そもそも家の外のゴミ箱に捨ててる時点で気付かれる可能性が高過ぎるだろうに。

詰めの甘いビルの計画があっさりとモナに露見し、彼はこれまたあっさりと「君たちは死んだ」と認める(他のシーンでもビルはモナの尻に敷かれており、ここはキアヌらしかった)。本来は「複製は本人と同一と言えるのか」というSF的なテーマのスリラー展開に進むべきだと思うのだが、それらしい描写の全てを完全放棄(マットがパンケーキに尋常でない量のメープルシロップを掛けていたのだが、これは不具合なのか。それともアメリカの標準量なのか)。企業との対決路線である。ここで派手にドッカンバッカンやるならまだしも、予算の都合からか地味展開のままという残念さであった。なお、この戦いの中でも、特に工夫していないのにトラッカーが誤作動したり、ビルが「安全確認してくる」と言って車内に残した家族が拉致されるといったポンコツ描写が散見される。

最終的にはフォスター一家が全員揃って、企業(とロボット・ビル)も複製事業で成功している。SF的倫理的掘り下げを完全放棄のまさかのハッピーエンドである。本作では全く語られなかったのだが、仮に劇中と同じ技術が完成したとして、果たしてそれは“自分”なのだろうか。複製の方は(加えて周囲も)“自分”だと認識できるだろうが(こちらは寝て起きた時と同じ感覚でいられるだろう)、当の“自分”は死んでいるわけである。人は死を怖れて、魂や精神こそが“本体”であると認識しがちだが、肉体の連続性なくして“自分”足りうるのか。どこでもドアにも似たような思考実験があったかな。

SF的近未来描写として、「ホログラム照射したスクリーンを操作する」というものがある。『マイノリティ・リポート』なんかに出てくるアレである。人工脳を扱う世界なら、そろそろ“手”や“声”による操作から脱してほしいものである。ロボットがCGで描かれているのだが、質感はギリギリ許容範囲なものの、動きが酷過ぎて笑った。

レプリカズ(字幕版)

レプリカズ(字幕版)

  • 発売日: 2019/10/16
  • メディア: Prime Video