オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『クライムダウン』

A Lonely Place to Die, 99min

監督:ジュリアン・ギルビー 出演:メリッサ・ジョージ、ショーン・ハリス

★★★

概要

登山中に地中に埋められた少女を発見する話。

短評

「山で遭難する話」ではない山岳スリラー。登山を楽しんでいたらハンターに狙われるハメになる──『ゲット・デュークト!』でウンコを食わずにガチったみたいな一作である(ちょうど舞台も同じスコットランド)。後半は山とは無関係なしっちゃかめっちゃか展開になるものの、中盤まではロケーションを活かした、ちゃんと登山らしいスリリングな描写もある。それらを活かしきれなかったのは残念だが、最後まで息もつかせぬスピーディーな展開が維持されたスリラー映画に仕上がっていた。

あらすじ

スコットランドの高地に登山をしにきたアリソン(メリッサ・ジョージ)、エド、ロブ、ジェシー、アレックスの五人。昼食後、用を足しに立ったエドが物音を聞きつけ、それはどうやら人の声らしいと判明する。呼吸用のパイプを見つけた五人が地面を掘り起こすと、箱の中には一人の少女がいた。少女の名はアナ(ホリー・ボイド)というらしいが、言葉は通じない。助けを呼ぶため、途中に断崖絶壁のある最短ルートを経験豊かなアリソンとロブの二人が進むが、ロブの懸垂下降中に何者かにロープが切られてしまう。

感想

アナを追って現れたハンター二人に六人が襲撃を受けるという話である。山岳スリラー的な最大の見せ場は、上述の懸垂下降のシーンと事件とは無関係な冒頭の滑落シーン。他に川に流されるシーンもあったりはするが、普通の“追われる話”の範疇である。折角なのでもっとロケーションを活かす演出があってもよかったのではないかと思う。

『ゲット・デュークト!』の公爵たちよりはへっぽこでないハンター二人組だが、いまいち実力の分からない二人でもある。最も命中させやすい前方向に走って逃げる相手は当然に命中させ、難しい横方向は外す。ここまではよいのだが、“崖をよじ登る”という動きが遅くて比較的当てやすそうなシチュエーションでも外しまくっている。冷酷なハンターを気取っているが案外へっぽこである。本作から観客が学ぶべきは、「登って逃げようとしないこと」と「追うなら崖に追い込むこと」の二つか。

ハンターたちがどうしてへっぽこなのかと言えば、彼らの本業がハンターではないからである(この点は三十郎氏が『ゲット・デュークト!』に引っ張られ過ぎた)。彼らは誘拐犯で、「親が交渉に応じなければ子供が見つからずに殺人罪が成立しない場所」に少女を埋めるというスキームを使用している。「山中に少女が埋まっている」という驚愕の出だしからすると少々あっさりしているものの、現実的な落とし所としては辻褄が合う。

アリソンたちがなんとか村に辿り着くと、アリソンチーム、犯人チーム、(アナの親に依頼を受けた)追跡チームの三つ巴の構図となる。これはなかなか面白いのだが、誘拐という卑怯な稼業に従事し、失敗しても逮捕されないスキームを考えている男たちが、町中でバンバンと無関係な他者を巻き込む銃撃戦を繰り広げるものだろうか。たとえ逃げ延びても全力で指名手配されるだろう。このクライマックスは無理やり盛り上げた感があった。犠牲者の中で最も気の毒だったのは、犯人一味と疑われた上に無残に射殺された地元警察官か。

ちなみに、おっぱい丸出しの女性たち(を含む集団)がファイヤーダンスを披露している村の祭りは、「Stonehaven Fireball Festival」というスコットランドに実在する年越しを祝う祭りなのだとか。真冬にあの格好だと寒くないのかな。

「犯人の狙いはアナだ」と気付いたアレックスが、囮の人形を持って走る陽動作戦に出る。アレックス自身は死んでしまうわけだが、「分散する」というアイディアは悪くなかったと思う。(アリソンチームが正確に把握していないとは言え)犯人チームは二人しかいないのだから、広大な自然の中で複数に分かれた標的を追いきれるはずがない。何度かはぐれるシーンがあるのだが、そのままはぐれていた方が上手くいったのではないか。

「犯人はどうやら誘拐犯らしい」と気付いたエドが、「俺たちが関わらなきゃ誰も死なずに警察が対処できたんじゃ……」と察するシーン。三十郎氏はその時点で「一理ある」と思ったが、その後の村での暴動で彼の正しさが証明されることになる。なお、アリソンの返答は「誘拐だか何だか分からないけど置き去りにできるわけないでしょ!」というもの。感情的には理解できるが、追跡チームに身代金支払いの意思があり、犯人チームにアナ返却の意思があったことを考慮すれば、やはりエドの言い分が正しかったことになる。ともあれ、悪い奴よりも更に悪い奴が出てきてのハッピーエンドには笑わせてもらった。

クライムダウン(字幕版)

クライムダウン(字幕版)

  • メディア: Prime Video