オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ネメシス』

Nemesis, 96min

監督:アルバート・ピュン 出演:オリヴィエ・グラナー、ティム・トマーソン

★★★

概要

人類vsサイボーグ。

短評

1992年のB級SFアクション映画。色々とSFらしい設定がありそうなストーリーではあるのだが、それらを申し訳程度に説明しつつ、ほとんどの場面でドンパチばかりやっている。物語やキャラクターに奥行きを感じさせることを拒否するかのような雑展開は決して褒められたものではないものの、「ケレン味」という言葉にときめいてしまう人であれば楽しめる一作ではないかと思う。「これはカルト的な人気がありそうだなあ」というタイプである。威力と射程がおかしなことになっているショットガンが無闇矢鱈と爆発を引き起こし、バブル時代みたいなオーバーサイズのコートとサングラスの組み合わせで縦横無尽に走り回る。90年代的スタリッシュ風のはずなのに、廃墟やジャングルという非スタリッシュな舞台。これはこれで楽しかった。ちなみにシリーズ作品が五作目まであるらしい。

あらすじ

人体サイボーグ化技術の普及した2027年。身体の一部がサイボーグ化されたロサンゼルス市警アレックスは、テロリストたちと死闘を繰り広げて重症を負うも、全身サイボーグとして復活を遂げる。その後、テロリストに復讐を遂げるも失意のアレックスにLAPDのファンズワース長官から一件の依頼が舞い込む。その内容とは、アレックスの元恋人ジャード(マージョリー・モナハン)が盗み出した日米首脳会談の警備計画を奪還するというもの。心臓に爆弾を埋め込まれて任務を強要されるアレックスだったが、その任務には裏があった。

感想

実は長官がサイボーグにすり替わっていて、人類とサイボーグと戦いを引き起こそうとしていた──という『ブレードランナー』的で壮大な規模の物語なのだが、これはあまり意識しない方がよいだろう。「一応そんな設定があります」程度のノリである。ドンパチに次ぐドンパチ。基本はこれである。サイボーグ化の普及による人間と機械の境界線といったテーマを真剣に考えると肩透かしを食らうので、荒唐無稽なドンパチをやるための設定だと割り切った方がよい。

それだけドンパチに執着した一作なので、アクションシーンの迫力はなかなかのものだった。上述の通り、やたらめったら爆発する。ショットガンを撃っただけで着弾地点が爆発するし、被弾したサイボーグは当然に爆発する。この手のSF映画は近未来的ロケーションを採用することが多いが、本作の目玉は爆発なので人のいない場所が選ばれている。設定とロケーションのミスマッチ感が凄いが、理由が分かりやすいのですんなりと受け入れられる。アレックスはジャンプする時にやたらと“ひねり”を加えたがるのだが、滝から飛び降りる時にひねりと射撃を同時に行うのが格好よかった(そして笑えた)。

本作は、やたらと爆発するし、やたらと撃つ。あまりにも撃ちまくるので、「これ、適当にぶっ放してるだけだろ」感があって、「主人公が危機に陥っている」という緊迫感には欠けるのだが、そういう真面目な映画ではないのである。大味上等。アレックスは口数が少なにクールを気取っているが、どちらかと言えば「ヒャッハー!」なノリなのである。上述の非スタリッシュなロケーションで、スーツに身を包んだサイボーグたちが、ショットガンを、マシンガンを、乱射する。ちょっと『マトリックス』っぽくてワクワクするではないか。序盤の女性テロリストがやたらとデカい銃を使っているのも格好よかった。自分の周囲の床を撃ち抜いて脱出するシーンがあるのだが、あの演出の初出はもしかして本作だったりするのか。

基本的にはアクションが光る一作だが、サイボーグの描写も上出来だった。冒頭で頭が吹き飛ぶサイボーグ娼婦の“内部”はしっかりとメカメカしいし、アレックスの眼球をイジるシーンもよく出来ている。また、爆発により骨組みが露出したサイボーグが完全に『ターミネーター』のそれなのだが、B級映画だとコマ撮りの安っぽさも“味”として楽しめる。しかし、最もサイボーグらしい描写だったのは、ジュリアン(デボラ・シェルトン)のおっぱいがどう見てもシリコンだったところか。豊胸技術は進歩しなかった世界線なのだな。

相手の身体をチェックする(何をチェックしているのかはイマイチ分からない)未来的デバイスとして日英翻訳機が登場している。その画面には「ビジネス英会話 1」「ポーターを呼びましょうか。」とばっちり日本語で表示されており、日本語話者だけをシュールな笑いに誘い込む。

ネメシス HDニューマスター版(字幕版)

ネメシス HDニューマスター版(字幕版)

  • 発売日: 2020/09/09
  • メディア: Prime Video