オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ビーチ・シャーク』

Sand Shark, 90min

監督:マーク・アトキンス 出演:コリン・ネメック、ブルック・ホーガン

概要

砂の中を泳ぐサメが音楽フェスを襲撃する話。

短評

「ビーチ」と「シャーク」。あまりに普通の組み合わせだが、サメ映画のサメが普通であるはずはない。原題は『Sand Shark』であり、その名の通りに砂の中をサメが泳ぐ一作である(『サンド・シャーク』という先行作品はなさそうなのに、どうしてそのままの邦題にしなかったのだろう)。砂浜からサメが背ビレを出して悠々と泳ぐシュールな光景は(サメ映画的に)魅力的と言えなくもないが、襲撃シーンは純然たる“ピョンと飛んでパクッ”であり、犠牲者多めのパニック映画なのにまるで盛り上がらなかった。人間パートの退屈さは秀逸と言ってもよく、コメディとして振り切ることにも失敗していた。サメが砂の中を泳ぐ以外は『ジョーズ』と同じようなことをしているはずなのに、どうしてここまで違うのだろう。

あらすじ

ビーチでモトクロスを楽しむライダーが何者か(=サメ)に殺害される。時を同じくして、町長の息子ジミーが島へと戻ってきており、彼は島興しを兼ねて音楽フェス開催を企画していた。保安官のジョンや海洋研究所のサンディ(ブルック・ホーガン)はフェスの開催に反対するものの、一匹のサメが爆死したことにより問題解決とされ、フェスが強行される。

感想

「サメが砂の中を泳ぐ」というのが本作の独自性であり、唯一の魅力と言ってもよいはずなのだが、これは三十郎氏にとって「今更」である。サメは空を飛ぶし、雪の中を泳ぐし、家の中を歩くし、幽体化だってできる。サメにとって非常な身近な「砂浜」の中を泳ごうとも、劇中で提唱される仮説の通りに「進化」の範疇にすら思えて、それほど意外性がない。「地中を移動する怪物」というカテゴリーなら『トレマーズ』等があるし、それをサメと組み合わせてもギャップが小さい。本作は“ありえないサメ”を描くタイプのサメ映画でありながら、そのギャップの小ささ故にバカバカしさが物足りないである。

バカバカしくないのなら真面目路線かと言うと、当然にそんなはずはない。だってサメが砂の中を泳ぐのだもの。主催者発表1000人以上のフェス(上空からのショットだと人が大勢いるように見えたが、ショボいステージを捉えた映像だとせいぜい数十人に見える。アングルを工夫するべきだった。それでも1000人は盛りすぎ)をサメが襲うとなると大いなるパニックを引き起こして然るべきなのだが、低予算サメ映画らしく「ワーキャー」叫んでいるだけで危機感に欠ける。また、盛り上がらないパニック編に入るまでの時間も長く、異常なまでの退屈さを獲得している。退屈に耐えた末に盛り上がらないという二重苦である。

ダメダメだらけの一作だが、サメの退治方法のアイディアは面白かった。なんと「高熱で融かす」のである。「昼のナパームは最高だぜ」と『ワルキューレの騎行』でサメをおびき出し、火炎放射器でやっつける。これはとても面白いシーンに仕上がりそうなものだが、恐ろしく地味で期待はずれだった。作戦会議をしている時の、まるでソーシャル・ディスタンスを意識したかのような距離感の方が笑えるくらいである。あれだけ離れていると、大声を出さないと聞こえないだろう。

ジミーと保安官代理のブレンダ(ヴァネッサ・リー・エヴィガン)はかつて付き合っていたらしく、微妙な距離感を見せるというどうでもいいロマンス要素がある。ジミーが弁護士のアマンダ(ジーナ・ホールデン)に顔を舐められる姿を目撃した彼女が「死ね!」とキレるシーンがあるのだが、少々一方的過ぎないか。ブレンダの兄ジョンもジミーに「殺す!」と言いながら「やっぱり助けて」と言い出すし、この無能兄妹が保安官では、島の安全が守られないのも無理はない。

「ビーチでパーティー」という絶好の“おっぱい放り出し”シチュエーションだが、意外にも出てこない。ドラッグをゲットするためにおっぱい披露しようとする女性も、“出す瞬間”にサメに襲われる(硬そうだったのであまり見たくはなかったが)。インターンのエリン(ヒラリー・クルス)が唐突にシャツを脱いだり、アマンダがバスタオルを巻いていたり、水着美女が踊るお色気シーンはあるが、何故かどれもイマイチお色気を感じさせない冷めた仕上がりだった。

サンディ役のブルック・ホーガンが「私はロジャー・コーマンじゃないの」とバカ映画とは違う知性をアピールしていたのが笑えた。ロジャー・コーマンをバカにできるような映画じゃないだろうに。

ビーチ・シャーク (字幕版)

ビーチ・シャーク (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video