オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デッド・ガール』

Some Kind of Hate, 82min

監督:アダム・エジプト・モーティマー 出演:ローネン・ルビンスタイン、シエラ・マコーミック

★★

概要

悪霊少女が復讐代行する話。

短評

デッドガール』と紛らわしいタイトルのホラー映画(三十郎氏は本稿の執筆時に同作のタイトル間違いに気付いて訂正した。なお、同作に出演しているノア・セガンが本作にも出演していて余計に紛らわしい)。ホラー映画としてはまるで怖くないのだが、特殊能力を持った悪霊がなんだか格好よく思えてきて、ある種のヒーロー映画的な楽しみ方ができた。ただし、決して出来が良いわけではないことは付言しておきたい。

あらすじ

いじめっ子の顔をフォークで刺して更生施設行きとなったデスメタル系のリンカーン。仲良くなったポルノマン・アイザックにフォーク事件を言いふらされ、周囲からフォーク煽りを受けるものの、「フォーク事件格好いい」と褒めてくれるケイトリン(グレイス・フィップス。ショートパンツのハミケツが素敵)と惹かれ合う。ある日、フォーク煽りの筆頭だったウィリーが腕に「BULLY(字幕は卑怯者だがいじめっ子?)」と刻んで自殺する事件が起こる。

感想

ウィリーを殺した犯人が、悪霊のモイラちゃん(シエラ・マコーミック)である。彼女は施設で(主に精液関係の)いじめを受けて自殺したと考えられており、同じくいじめを受けるリンカーンに同情し、(ほとんど一方的に)復讐を買って出る。彼女は確かに悪霊だが、見方を変えればヒーローなのだ。

それも特殊能力持ちのスーパーヒーローである。モイラの能力は、「自分が受けたダメージを相手にも与えられる」というもの。長年培ってきたリスカスキルを活かし、自分の腕をザクザク切り刻むと、標的の腕の同じ箇所にひとりでに傷が入る。しかもモイラは既に死んでいるため、どんなに自分を切ってもノーダメである。仕上げに首をザックリいけば、標的の首からピューピューと鮮血が吹き出す。相手もモイラに物理ダメージを加えられるが、そのダメージはそのまま相手に伝わり、モイラはノーダメのままである。これは無敵のヒーローではないか!いいぞ!もっとやれ!

最初はリンカーンの幻覚ではないかと思ったが、早い段階でタネ明かしされるため(それでも展開自体が遅めだったが)、その先は「なんて頼もしい悪霊なんだ!」と、ホラー映画としての本来の意図からはズレた楽しみ方ができてしまった。ちょうど『マンホール』のセプティック・マンを見た時と同じ感覚である。

剃刀ネックレスがオシャレな最凶ヒーロー・モイラちゃんだが、その幕切れは呆気ない。ここが三十郎氏の不満点である。全く怖くないのは別方向で楽しめたので構わないが、折角の能力を活かしきれなかったのは残念だった。ダークヒーロー映画として一本撮ってほしいくらいにはグロ描写を引き出せる素敵な能力の持ち主なのに。

彼女は三度死ぬ。一度目は、普通に人間として死んだ時。二度目は、リンカーンから「お前こえーよ。もういい、このクズ!」となじられた時。ショックを受けたのか消え去ってしまう。その後、ケイトリンの自傷仲間として復活を遂げて殺戮を繰り広げるも(自分の脚を切って絶頂している桃色シーン)、リンカーンのセルフ焼身攻撃に屈する。リンカーン焼身ダメージがモイラに伝わるのは理解できるとしても(よく分からないが)、彼女は既に死んでいるのだから、再び死に至るダメージとなる基準が分からない。

クリスティーン(レキシー・アトキンス)のヘッドショットには「撃ってみろ」とばかりに銃を咥えて返り討ちにしたのに、どうして焼身だとそのまま死んでしまうのか。これはクリスティーンが自分にヘッドショットしていたら勝てたということでよいのだろうか。燃えたモイラをボコるケイトリンがダメージを受ける展開で「次作に続く……」をやってもよかったと思う。

この更生施設では、やたらと人を煽る傾向がある。問題児たちがリンカーンをフォーク煽りするのはともかく、ウィリーが死ぬと所長までもが「本当は死んでくれてよかったんじゃ?」とリンカーンを煽る。煽られまくったリンカーンもモイラを「このクズ!」と煽っており、復讐の連鎖ならぬ煽りの連鎖が成立しているのであった。そんな中にあって癒やしキャラのポルノマンだが(毒親に苦しむリンカーンに「一緒にうちに来いよ」と誘う好漢デブ)、全く復讐対象じゃないのにモイラの頭突き攻撃で死ぬのは気の毒だった。モイラちゃんがヒーロー稼業を続けるのなら、少しアンガーマネジメントを学ぶ必要があると思う(能力も喪失しそうだが)。

デッド・ガール(字幕版)

デッド・ガール(字幕版)

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