オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ホワイト・スペース』

Beyond White Space, 93min

監督:ケン・ロクスマンディ 出演:ホルト・マッキャラニー、ズライ・エナオ

★★

概要

父の仇の宇宙龍を追う話。

短評

宇宙蟹、宇宙龍、宇宙寄生虫、宇宙海賊、宇宙的策謀、宇宙船内浮気、宇宙規模の仇討ち、宇宙兄弟、宇宙船内乱と盛り沢山なSF映画。監督の本業がVFX関係というだけあって、CGやセット、特殊効果のクオリティは素晴らしく、映像の水準はB級映画補正なしに及第点を悠々とクリアしている。その一方、話の方は詰め込み過ぎでゴチャゴチャにとっ散らかっており、ジャンル的にもSFアドベンチャーなのかSFホラーなのか、どちらをやりたいのか狙いが分からない。元ネタと思われる『白鯨』がどうなのかはよく知らないのだが、もう少しシンプルにした方が逆に盛り上がったのではないか。

あらすじ

宇宙蟹“クリッカー”の漁へと出るリチャード艦長率いるエセックス号だが、護衛官として乗船したリン(ズライ・エナオ)には隠された身分と真の目的があった。宇宙海賊に襲われて収穫物を奪われたリチャードたちは、天龍(テンロン)という宇宙龍を捕獲して一獲千金を狙うことにする。天龍はホワイト・スペースと呼ばれる心身を浄化する空間の守護者であり、リチャードの父の仇でもあった。

感想

物語のメインとなるのは、宇宙龍の天龍(≠源一郎)を追う話である。余命僅かなリンの策略や手ぶらでは帰れない乗組員たち、父の仇討ちを狙うリチャードの執念といった複数の事情が絡み合った追跡劇となっているのだが、上述の通りとっ散らかっている。海賊や寄生虫のネタも乗っかって大いに盛り上がるはずが、90分の短い枠ではメインの物語から観客の集中を分散させてしまうだけで、“多くの困難を乗り越えて天龍に辿り着く”というあるべき一つの流れが感じられない。一つ一つの要素は面白くなりそうなのに、相乗効果を発揮することなく薄められてしまったと思う。

映像は良かった。天龍は、「龍」という言葉からイメージする中華ドラゴンよりも、クトゥルフ神話の怪物的なグロテスクさで、神々しさを感じられないのが逆に魅力的である。“ホワイト・スペースの守護者”という役目が何なのかもよく分からないままなので、“得体の知れなさ”との相性が良い。また、天龍は派手に動き回ったり噛み付いてくるだけでなく、ヘビのように胴体を使って敵を締め上げる技を披露している。地球上の食料が枯渇して宇宙蟹を食べているという遥か近未来の荒唐無稽な話なのに(その割には船内でハンバーガーとか食べていたが)、この攻撃方法が妙なリアリティを感じさせてくれた。宇宙船のセットは、B級映画にありがちな操縦室オンリーではなく、ちゃんと宇宙船である。

料理人のバタリ(コディ・キッチン)と乗組員のハーポがカップルで、バタリは妊娠三ヶ月である。一方で、ハーポはパイロットのラグズランド(ティファニー・ブラウワー)と浮気している。船内の美女を独り占めするうらやまけしからんヤリチン野郎である(下半身のブラックパワーが為せる業か)。この三角関係の行方は、寄生虫で狂ったスタブスに女二人が刺殺されるという不毛なものだった(スタブスだけに)。士官と寝て軍を追放された淫乱美女ラグズランドとハーポが貨物室で交わるシーンでも“見えない”し、そんな余裕はないはずなのに風呂上がりのバスタオル姿でラグズランドが刺されて倒れているシーンでもギリギリ“見えない”。ストーリーに活かすでもなく、サービスするでもないのなら、どうしてこのエピソードを入れたのか。女性陣が全体的に谷間サービス多めなのは有り難かったが。

高クオリティな映像、顔を知っている主演俳優(『マインドハンター』のビル)、お色気美人キャストと揃っていれば、もう一段上のレベルの作品にできたような気がして、なんだか勿体ないと感じる。設定も好きだったし、十分にSFっぽさは感じさせてくれたのだが、せっかく面白そうなのに盛り上がり切らなかった印象である。取捨選択って難しいなあ……(脚本を煮詰めていればお色気は削られただろうが)。

ホワイト・スペース(字幕版)

ホワイト・スペース(字幕版)

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