オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バッド・ガール』

Girls Against Boys, 93min

監督:オースティン・チック 出演:ダニエル・パナベイカー、ニコル・ラリベルテ

★★

概要

レイプされた女が友人と一緒に復讐する話。

短評

レイプ・アンド・リベンジと見せかけて……という視点の転換が全く機能していない一作。そのせいなのかリベンジのシーンも地味であり、ただ退屈なだけだった。主人公二人の美脚は良かったので、普通にレイプ・アンド・リベンジするだけでも及第点には達しただろうに。様々な欠点を強引に納得させられる便利なジャンルのはずなのに、その利点を自ら放棄してしまう不可解な一作だった。

あらすじ

既婚の恋人テリーに「妻とやり直す」とフラれてしまった女子大生のシェイ(ダニエル・パナベイカー)。落ち込む彼女に同僚のルル(ニコル・ラリベルテ)が「男関係?殺そうか?」と声を掛け、二人で飲みに行くことに。しかし、クラブで知り合った男サイモンが送り狼と化し、シェイは暴行されてしまう。

感想

「いやいや、めちゃくちゃノリ気だったじゃん」とか「シェイの方からキスしてたじゃん」とか「ショートパンツに透けブラに露出度高すぎるだろ」とかとか……、男ならば誰しも文句の一つくらいは言いたくなるシチュエーションだが、ここはグッと我慢しよう。そんな被害者バッシングが許される、古き悪しき時代は終わったのである。女性にどんな落ち度があろうとも、それを落ち度と感じる男が悪い。これは自明である。したがって、映画的に男は必ず成敗されねばならない。

「レイプした男以外が殺されすぎだろ」とも言いたくなるかもしれないが、ここもグッと我慢しよう。これは映画である。多くのアクション映画がそうであるように、達成すべき目的があるのなら、それに伴う巻き添えは許容されるべきなのである。

さて、ルルの助けを借りて“リベンジ”を達成したシェイ。レイプ男のサイモンを殺し、ついでに不倫男のテリーも(ルルが)殺すが、彼女はどうもすっきりしない。ここで彼女は気付くのである。「ルルが楽しんでるだけじゃん」と。ルルが実はクレイジーサイコレズであり、彼女は愛しのシェイのために勝手に復讐代行したわけである。リベンジ達成感が全くないのは、そもそもシェイに復讐の意思があまりないのが原因なのである。

ルル曰く、「できるからやってるだけ」「興奮する」とのこと。これはレイプ男たちと全く同じ理屈である。したがって、「レイプ・アンド・リベンジ」というジャンルを肯定するならば、彼女は絶対に殺されるべき存在であり、実際に殺されるのだが、肝心の“復讐者”が死んでしまっている。ルルに新恋人候補を殺されたシェイが復讐を遂げるも、彼女に強い動機がないために全く盛り上がらない。その上、シェイがルルの意志を引き継ぐかのようなラストとなっていて、曲がりなりにも決着したはずの話をひっくり返すというクソみたいな話だった。

仮に「男殺し=善」の過激なフェミ映画であったとしても、それならルルが生き残るべきということになるなので、やはりこちらの線も成立しない。

「実はレイプ・アンド・リベンジじゃなかった」という展開に新規性を見出そうとしているためなのか、レイプはともかくリベンジの描写がショボい。ストーリーは上述の通りにお粗末なものなので、リベンジまで酷いと楽しめるところが何もない(かろうじてルルの下着姿とヌードが見られるが)。サイモンを拷問する時には電ノコで両脚を切断するのだが、肝心の切断ショットがないというダメっぷりである。この段階ではレイプ・アンド・リベンジを否定していないのだから、いっそのこと陰茎と睾丸を切って思い知らせてやればよかったのに。警官殺しのシーンなんて、肛門に銃を突っ込んで射殺するというレイプの意趣返し的な面白さなのに、はっきり描かないせいでビビって気絶しただけに見えなくもない。

ルルは正真正銘のクレイジーサイコレズだが、シェイの方も大概である。最初の男の射殺時に嘔吐した以外は特にショックを受けることもなく、新恋人候補くんの死体を発見した時なんてノーリアクションだった。その素っ気なさにこちらが驚いてしまう。ちなみに、彼女は「バッドばつ丸」のキーホルダーを使用している。日本には「サンリオ好きはメンヘラ」という言説が存在するが、アメリカでも同じ認識なのだろうか。他にもフェミニズムの授業で会田誠について言及があったり、ルーが能面&日本刀を使ったりしていて(これも話が面白けば格好いいシーンになりうるのだが……)、謎の日本要素が多い。

バッド・ガール(字幕版)

バッド・ガール(字幕版)

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