オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファントム/開戦前夜』

Phantom, 98min

監督:トッド・ロビンソン 出演:エド・ハリス、デイヴィッド・ドゥカヴニー

★★

概要

老艦長が核戦争を防ぐ話。

短評

実話に着想を得た潜水艦映画。もっとも潜水艦K-129沈没の真相は公開されていないため、沈没という結末だけが実話の完全な創作と言ってもよいだろう。潜水艦らしい息の詰まる舞台設定は魅力的だったが、話や展開には少々無理があったように思う。ソ連軍の物語をソ連要素がまるでないアメリカ人たちが英語で演じるのは、いつものことなので構わないとして、過剰なアメリカ上げ演出には笑ってしまった。

あらすじ

退役扱いの老艦長ズコフ(エド・ハリス)に老朽艦B-67での偵察航海の指令が下る。極秘装置の実験をするという技術者ブルニー(デイヴィッド・ドゥカヴニー)らを乗せて艦は出港するが……。

感想

敵味方の関係が分かりづらい。これが最大の欠点である。ブルニーたちがズコフを拳銃で脅して艦を乗っ取るのだが、その場にいるブルニー陣営は二人だけである。「休暇中の船員は入れ替え」という司令官の台詞と乗員名簿の不備に関する演出があり、そもそもの目的を考えれば艦内にある程度の数の“敵”がいるはずだが、これではたった二人に“クーデター”を起こされたように見えなくもない。反撃しろよ。周囲の乗組員は艦長が脅されているのに何を傍観してるのか。

ブルニーはKGBの急進派“オズナ”で、中国艦に見せかけてアメリカを核攻撃し、ソ連が漁夫の利を得ることを狙っている。ズコフの最終目標は「核攻撃の阻止」ということになるが、そのために必要な戦い──映画としての第一義的な見所は、「ズコフvsブルニー」にある。潜水艦バトルが発生してズコフが艦長任務に復帰したのに乗じて反撃したり、核弾頭を無効化しようとサボタージュする展開が見られるものの、敵と味方の勢力図がはっきりしないため、どれだけ厳しい戦いを強いられているのかが分からないのである。

ズコフ陣営が少数派のはずなのだが、一緒に監禁されたメンバーはそれなりに多い。また、彼らがブルニーの妨害を始めてからも比較的サクサクと事が進んでいる。ブルニー自身が前線に出て乗組員を殺すシーンもあるのだが(味方が多いなら必要ない)、一体彼は艦内の状況をどのように、そしてどの程度掌握しているのか。この分かりづらさが緊迫感の欠如を生み、「どう盛り上がってよいのか分からない」という状況に陥ってしまった。

ズコフが「アメリカは平和を守る」「アメリカ軍は立派」と猛烈な親米発言を連発していて笑った。まるで外国人に「日本のここが素晴らしい」と褒めさせる愛国ポルノのようだが、本作の場合は“外国人を演じる自国人”に同じことをさせている。非常に高度なお人形遊びである。エド・ハリスが激シブに演じているズコフではあるが、本人も言ってて恥ずかしくなったりしないのだろうか。仮にそうであってもおくびにも出さないのだから、俳優って凄いな。

ズコフが「俺みたいな無能艦長に極秘装置が託されるわけないんだ」と気付く展開も、悲哀に満ちていて笑った。エド・ハリスが演じているだけで有能なベテラン艦長にしか見えないのに……。また、「新婚」という盛大な死亡フラグを立てて乗艦するサーシャが死ぬのも、悲壮な展開のはずなのにやっぱり笑ってしまった。

ファントム-開戦前夜-(字幕版)

ファントム-開戦前夜-(字幕版)

  • 発売日: 2014/02/07
  • メディア: Prime Video