オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『愛人/ラマン』

L'amant(The Lover), 115min

監督:ジャン=ジャック・アノー 出演:ジェーン・マーチ、レオン・カーフェイ

★★★

概要

フランス人少女(15)が中国人青年(32)に抱かれる話。

短評

中国人男性が、むせ返るように暑い東南アジアの一室で、白人美少女と汗だくになりながら、互いの体を貪るように求め合う──というアジア人男性のコンプレックスと歪んだ欲望を具現化したような内容の一作なのだが、マルグリット・デュラスというフランス人女性作家の自伝的な小説が原作なのだとか。二人の関係は今なら完全にアウトであり(「あなたは幼すぎて抱けない」という台詞があるので当時でもアウトだったか)、決して素敵な恋でもないのだが、そこには確かに「愛」らしきものがあったと思えるような物語だった。

あらすじ

フランス領インドシナ。休暇を終えてサイゴンにある寄宿学校へと戻る一人のフランス人少女(ジェーン・マーチ)。彼女が渡し船で佇んでいると、高級車に乗った一人の中国人男が話しかけてくる。後日、少女は学校の前で待っていた男の車に乗り込み、中華街のとある一室へと行き、二人は関係を持つようになる。

感想

中国男はヘタレである。明らかにそのつもりでナンパし、「寮まで車で送ろう」と誘い、車内で指、手、太ももと少女の体に触れていくソフトなセクハラ。少女がヤリ部屋にのこのこついて来ると、「愛するのが怖い」と「あなたは幼すぎて抱けない」と怖じ気づく。出会った時からジョニーに奴隷のくせに良い人ぶってんじゃねーよ。

そんな中国男に対して積極的な仏少女。車内のソフトセクハラを無言で受け入れ、男の乗っている車の窓にキスして立ち去る。怖気づいた男に対しては「愛なんて要らないから抱いて」と少女の方から求めだす。羨ましいですね。この時点では性への興味が少女を駆り立てたのではないかと思うが、三十路のおっさんよりも15才半の少女の方が大人である。ナヨナヨしたおっさんは翻弄されっぱなしなのだ。陰茎を「未知という名の黄金」と“文学的”に表現するのが面白かった。

処女喪失後の車内で二人の座る位置がそれまでと逆になっている通り、パワーバランスが逆転している。初めは男が少女の体を狙って近付き、目的を果たすが、体を重ねると本気になってしまうのが男という生き物である。逆に純粋に快楽を求める少女の方が優位に立つ。また、支配層のフランス人でありながら貧乏な少女と華僑系不動産王の息子として悠々自適の中国男というもう一つの逆転関係が生じていたりして、単なる惚れた腫れたヤッただけではない複雑な人間模様を見せるようになる。

「快楽を求めていたはずが少女を愛してしまった男」と「快楽と金が目的の少女」という構図。「利用」や「打算」が根底に見え隠れしないでもない関係なのだが、少女の気持ちの方にも「はずが」の一言が加わることで変化を見せる。男は親に決められた女と結婚し、少女がフランスへと帰ることになり、彼女は「どうやら自分が男を愛していたらしい」と気付くのである。いわゆる「失って初めて気付く」というやつである。

もし少女がこのことにもう少し早く気付き、男の「『金のために寝てる』と言ってくれ」に応えなかったとすれば、果たして異なる結末がありえたのだろうか。それとも、「金が働く気力を奪い、愛することしかできない」男の情けなさを考えれば、決して実ることのない愛だったのだろうか。ちょうど少女が水をやっていたヤリ部屋の枯れ木にように。九割くらいはエロ目的で観た一作なのだが、何とも言えない余韻を残した。もっとも桃色シーンだけでも十分に楽しめる一作であり、白人美少女との汗だく交合はアジア男たちの見果てぬ夢である。全裸で寝室を歩き回る同級生エレーヌ(リサ・フォークナー)も可愛かった。

ヌードシーンが多いので少女役を本当の少女の演じているわけではないが、主演のジェーン・マーチには妖艶さと小悪魔感が絶妙にミックスされた“少女らしさ”を感じられた。三編みは分かりやすい少女のアイコンだが、それ以外に“無防備さ”もまた少女の危うい魅力を象徴しているように思う。東南アジアの暑さも手伝って、彼女の衣服は少し緩めのサイズとデザインである。当然に布と肌の間には隙間があるのだが、そこに幼女であれば何も感じないような背徳的な欲望が生じる。これが大人の女性であればありがたく拝ませていただくところだが、少女だと「見てはいけない」という気がしてくる。このドキっとさせられる一瞬こそが、抗し難い少女の魔性なのだ。

愛人/ラマン(字幕版)

愛人/ラマン(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 
愛人 ラマン (河出文庫)

愛人 ラマン (河出文庫)