オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『オープン・ウォーター』

Open Water, 79min

監督:クリス・ケンティス 出演:ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラヴィス

★★★

概要

ダイビングの参加者がサメのいる海に置き去りにされる話。

短評

実話ベースのサメ映画。「サメの恐怖」の描き方としては非常にリアルなのだが、実際にはサメよりも「置き去りの恐怖」の方がメインであり、とっても地味な一作である。ぷかぷか浮いているだけなので退屈になりかねないところだが、サメがいいアクセントになっていたり、サメ以外に二人の心理状況なんかもリアルだったりして、やはりそれなりに面白かった。画質が悪く、おっぱいが登場するという超低予算サメ映画と同じ性質を備えてはいるが、それらとは真反対の超真面目路線である。

あらすじ

休暇で海へとやって来たスーザン(ブランチャード・ライアン)とダニエルの二人。ダイビング・ツアーに参加し、魚やサンゴを楽しむが、二人が海から浮上するとボートの姿が見えない。ツアー会社の手違いにより、なんと二人は海原の真っ只中に取り残されてしまったである。それも大量のサメが泳ぐ海に。

感想

二人の置き去りの経緯は次の通り。ゴーグルを忘れて潜れない男が一人。耳抜きに失敗した女とバディの男が浮上して二人。忘れ物男が耳抜き女のゴーグルを借りて、バディの男と潜る。この時、船上には客が三人いるとチェックされており、男二人が潜った時に訂正されない。ダイビングの終了予定時刻が近付き、ギリギリまで粘る主人公二人以外の客が皆乗船すると、数字の上では全員揃ったことになってしまう。「最終確認しろよ」とか「酸素ボンベが足りないだろ」とか色々と言いたくなることはあるが、これくらいのミスは普通に起こりうるだろう。

さて、大海原のど真ん中に取り残されてしまった二人。この手の映画にありがちなことだが、最初は暢気なものである。遠くにボートが見えても「自分たちのボートが見つけられなくなると困るから」と頑として動かず、行動は常に後手に回る。多くのホラー映画と同じく「主人公が阿呆だからピンチになる」という展開に近いような気もするが、この状況で謎の余裕を発揮してしまうのは正常性バイアスが原因か。最初から別のボートを目指していれば助かったのかは分からないが、その辺のホラー映画よりは異常事態に対して最善手を打てないことに対して説得力がある。

クラゲに刺され、サメに怯え、寝落ちし……とやっている内に、とうとう助からないと悟ったのか、ダニエルが発狂する。そして、「どちらのせいでこんなことになったのか」と不毛な責任の押し付け合いを始める。これは「公正世界仮説」というやつか。相手に原因があるということは、自分には原因がないということである。自分が何も悪いことをしていないのならば、悪いことが起こるはずがない。つまり、理論上は「自分は助かる」ということになるが、現実はそんな事情を考慮してくれはしない。一通り喧嘩して仲直りするところまで含めて、不運にも“この状況”に陥ってしまった二人の行動としては非常にリアルに感じられた。

そして、リアル路線の極めつけは、主人公二人が助からないことである。ダニエルはサメに噛まれて失血死(?)し、スーザンは恐らく自死を選んだものと思われる。全編に“どよぉ~ん”とした重い空気の漂う一作なのだが、その嫌な気分をそのまま引きずるラストだった。なにか生存のヒントが欲しい人は、二人よりも過酷そうな状況から奇跡の生還を果たすアザラシ男の映画『ザ・ディープ』をどうぞ。

本作に登場するサメは本物とのことである。二人の周囲をウロウロしているだけでほとんど何もしてこないのだが、これは怖い。しかし、二人も観客もこれだけサメを恐れているのに、ケージに入ることなく、接触する距離で本作の撮影が可能ということは、サメの危険性の低さを逆説的に証明する一作でもあるのだろうか。

オープン・ウォーター2(Open Water 2: Adrift)』という続編は、なぜかドイツ映画というタイトル詐欺っぽい一作だが正当な続編である。それ以外に、『赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター(The Reef)』『オープン・ウォーター 第3の恐怖(Blue Skin)』『オープンウォーター・シンドローム(Caught Inside)』『オープンウォーター・サバイバル(The Watermen)』『オープンウォーター・サスペクト(Let Me Survive)』といった大量のタイトル詐欺作品が確認された。サメ映画ではないものが多そうだが、パッケージを見る限りでは『絶海9000m』と同じ裸で泳ぐ女性で助平男を釣ろうとしているものが多い。無料配信があれば喜んで釣られよう。