オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ウエストワールド シーズン3』

Westworld Season 3

監督:ジョナサン・ノーラン他 出演:エヴァン・レイチェル・ウッドタンディ・ニュートン

概要

ドロレスがウエストワールドの外に出て反乱を起こす話。

短評

比較的シンプルだった映画版『ウエストワールド』を発展させ、エンタメ・哲学・エログロのバランスが素晴らしい一作となったドラマ版のシーズン1。これは衝撃的に面白かった。シーズン2ではエロを抑えて物語が難解化し、その流れを引き継ぐ形でシーズン3も難解かつエロ少なめである。展開自体がかなり複雑な上に、その問いかけも難解である。面白いことは面白いものの、「どうしてこんなに足りない頭を悩ませながら観なければならんのか」「もっと素直にスリリングなSFアクションとして楽しませてくれないか」という疑問が頭に浮かぶ瞬間もあり、“ついていくのがやっと”という部分もあった。

あらすじ

エストワールドでの虐殺を経て、ヘイル(テッサ・トンプソン)として“外の世界”へと紛れ込んだドロレス(エヴァン・レイチェル・ウッド)。自らの外見を取り戻し、持ち出したパールを使って仲間を作り、人間のケイレブを引き入れて、全人類を支配するAI“レハブアム”へと迫っていく。一方、ナチスの支配する世界で目覚めたメイヴ(タンディ・ニュートン)は、レハブアムを所有するセラック(ヴァンサンカン)から娘との生活と引き換えにドロレスの妨害を指示される。

感想

人間に限りなく近いロボットをプログラムできるのならば、人間とプログラムの違いは何なのか。この疑問がドラマの出発点だったように思う。ドラマでは主にホスト側に焦点を当て、(シーズン2を観てから時間が経っているし、そもそも理解がおぼつかないので怪しいところだが)これまでなんだかんだあって「人間をプログラムできる」という結論に達したので、今シーズンでは疑問の対象が“人間”へと移っている。プログラムされた通りに動くホストが“人間的”であるのなら、果たして人間は“プログラムされていない自由意志”を持っていると言えるのか。このテーマの発展は正当な流れと言えるだろう。

エストワールドの外の世界はAIに支配されていて、実はウエストワールドと同様の管理社会であることが判明する。その支配に対してドロレスたちが戦いを挑むわけだが、ここで鍵となるのが“ドロレスたち”という複数形。持ち出したパールの中身がいずれもドロレスという展開が、劇作的にも大きな見せ場であり、同時にドラマ全体のテーマを描く上での重要な設定となっている。

中身のデータとしては全て同じドロレスのはずなのに、ヘイル/ドロレスを筆頭に違ったそれぞれ違った性格や行動を見せる。パール挿入時点では同じであっても、その後の経験に差異が生じるため(ヘイル/ドロレスの場合は主に子供に関するもの)、同一人物とはならないのである。つまり、“記憶”とそこから生まれる“選択”こそが人間を人間たらしめる要素ということなのだろう。ドロレス/ドロレスが自らの記憶の中に人間が美しさを知ることを見出し、AIの支配から彼らを救おうとする大団円は唐突に感じたが、恐らくはそういう話だったのだと思う。

しかし、その選択がAIの予測から外れたものだという一点をもって「自分で選んだ」と言えるものなのだろうか。記憶もまた“外部からの影響”であり、ラプラスの魔物的な観点だと、本作の自由意志による選択すらもその範疇にある。言わば、単にAIが不完全だっただけと考えられなくもない。レハブアムはセラックの介入を受けるので、人が人を支配する構図が成立する。仮により高度なAIが完全に独立していて、その事実を誰も知らないならば、自由意志は自由意志たりうるのか。

テーマの発展が正当であると感じる一方で、“ウエストワールドらしさ”という魅力が消えてしまっている感は否めない。本シーズンからは戦いの舞台がほぼ完全に外の世界に出てしまったので仕方がないが、あの独特のワクワク感がどこにもない。古風な西部劇の世界が高度なテクノロジーにより実現されているというギャップが存在せず、ビジュアルが(ハイレベルでありながらも)他作品と同じような近未来SF世界に埋没してしまったように思う。話はまだ続くようだが、もうウエストワールドには戻れないだろうし、この弱点をどう補うのだろう。

近未来都市としてシンガポールがロケ地に使用されている。『ブレードランナー』の時代(もう40年近くも前なのか……)には東京的な風景が近未来だったはずなのに、今の日本から利用できるのはサムライの時代という辺りに隔世の感がある。我々は過去に生きているのだ。

また、こちらも前シーズンからの流れを考えれば必然ではあるものの、「意地でも男を活躍させたくない」と言わんがばかりの展開にも「時代だなあ……」と感じた。あからさま過ぎて笑ってしまうレベルである。皆頑張ってはいるけども、全部が全部それではアクションの完成度としては……(特にメイヴの殺陣は擁護できない)。メイヴはおっぱいを出していたが、ドロレスは“髪ブラ”したり、肩から上にしか皮膚のない未完成ボディを使ったりして、鋼の意志でおっぱいを隠している。“男を喜ばせるための描写”の排除を男である三十郎氏は悲しく思うが、これも時代の流れか。しかし、愛しのクレメンタイン嬢(アンジェラ・サラフィアン)がほんの少しではあるが登場してくれて、三十郎氏を大いに喜ばせてくれたのであった。三十郎氏がウエストワールドに行くことがあれば、彼女と部屋から出てこないだろう。

緊迫した状況に全く合わない『Common People』が流れる演出だったり、HBO繋がりで『GOT』のドラゴンが出演するサービスが楽しかった。

ウエストワールド シーズン3(字幕版)

ウエストワールド シーズン3(字幕版)

  • 発売日: 2020/03/08
  • メディア: Prime Video