オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『プロディッジー』

The Prodigy, 91min

監督:ニコラス・マッカーシー 出演:テイラー・シリング、ジャクソン・ロバート・スコット

★★

概要

天才児の正体は手フェチのシリアルキラー

短評

Prodigy」というのはてっきりバンドの固有名詞なのかと思っていたが、「天才」や「神童」を意味する単語らしい(邦題に「ッ」が入っているのはSEO対策か。)。子供が不気味で怖いはずの話なのだが、割と展開が読みやすいというか、そうでないと意味を成さないエピソードが早い段階で挿入されていて、素直に怖がることができなかった。子供の正体が分かった状態で見ていると、逆に笑える箇所があるくらいである。悪魔的な印象のパッケージ写真は、単なるハロウィンの仮装である。

あらすじ

予定日よりも少し早かったが、無事に出産の時を迎えたサラ(テイラー・シリング)。マイルズと名付けられた彼女の息子は、生後20週で話しはじめるという天才ぶりを見せるが、5才になっても友達ができず、どこか様子が可怪しかった。彼が奇妙な寝言を話すので専門家に診せてみると、それはハンガリー語の方言で、凶暴な内容だと判明する。マイルズが生まれた日の、そして生まれた時間にとある事件が起きており……。

感想

天才少年がサイコパスというホラーなのかと思いきや(それも間違ってはいないが)、映画序盤に登場して全裸で射殺されるおっさん(俯瞰ショットでは銃で股間が隠されている。その直後のショットには新生児マイルズの股間が映っている)の生まれ変わりでしたという話。そこに驚きはない。悪魔憑き的に子供が怖い系の一作なのだが、マイルズよりも母サラの方が怖いという狂気の終盤の方に驚かされた。「これでは転生とは関係なくサイコパス気質を受け継いだだけなのでは?」という気分になった。

シッターを怪我させ(ここの「来るぞ……来るぞ……」演出は好き)、クラスメイトをボコり、愛犬タルーラを殺し、父ジョンを刺す。そんな凶悪少年マイルズの正体が、彼の生誕と同時刻に死亡したシリアルキラーだと知った母サラの取った行動が、……なんと「私が片をつける」である。しかも、自分が生んでしまったマイルズをなんとかしようとするのではなく、シリアルキラーが殺しそびれたマーガレット(ブリタニー・アレン )を始末することで、「ミッション・コンプリートすればシリアルキラーの魂は満足して去るはず」という意味不明な論理を持ち出す。なんという母の愛!母子まとめて死んでしまえ!息子が天才という可能性に浮足立った彼女が、明らかな異常事態に対して適切に処理できなかったことが本件の敗因と言えるだろう。可哀想なワンコ……。

そんな天才少年マイルズだが、中身はおっさんである。「神童も二十歳過ぎればただの人」という言葉があるが、ただの人ではないにせよ彼が傑出した知能の持ち主でないことは間違いない。単なる手フェチのシリアルキラーである。「これからも女の手を集めてやるぜ!」と言わんばかりのラストではあったが、またどこかで発覚して逮捕されてしまうのだろう。彼の目的がマーガレットを殺すことで、普通の大人よりも高い知能を誇るのならば、それが成就される前に妨害が入りそうな異常行動は控えるはずである。もっともそれをやらないとホラー映画にならないわけだが。普通に天才だと思ってた息子が実は……で、終盤に怒涛の展開を迎えるタイプの話だとどうなっただろう。

中身がおっさんだと知っていると、マイルズが「ママ……」と母に甘えるシーンが「ママぁ……(ニチャア」に見えて笑えた。彼女の肩に触れるのもセクハラである。監視カメラの目的も監視ではないだろう。映画には出てこないが、授乳も楽しかっただろうな。サラが息子の顔におっさんの幻影を見るショッカー・シークエンスも、三十郎氏的にはお笑い要素だった。

催眠療法で正体を現したマイルズが、相手に自分の名前をそれとなく伝えるシーン。中身のおっさんがどうしてわざわざそんな事をするのか疑問だったが、この回収方法は好きだった。「You're easy.」と息子(の姿をしたおっさん)に言われる屈辱たるや!しかし、息子のためならば人殺しも厭わないという母親が、「どうせ中身が違うなら殺してやる!」と変貌する展開は唐突だったように思う。やっぱりサイコパスだよ、お母さん。部屋に虫が湧いていても冷静だったし、この母親の精神はどうかしている。

マイルズがパプリカを好む描写が何なのかと思ったが、ハンガリー料理と言えばパプリカなのか。グヤーシュ食べたい。

プロディッジー (字幕版)

プロディッジー (字幕版)

  • 発売日: 2019/09/21
  • メディア: Prime Video