オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キャビン・フィーバー』

Cabin Fever, 92min

監督:イーライ・ロス 出演:ライダー・ストロング、ジョーダン・ラッド

★★★

概要

山小屋で休暇中の大学生が肌が爛れて吐血する奇病に感染する話。

短評

イーライ・ロスの監督デビュー作。感染系の王道ホラー映画として真っ当に勝負しながらも、それを逆手に取るかのように豪快にふざけて遊んでいる。ちゃんとホラー映画なのに妙に笑えるのである。エロとグロの両方による観客サービス(兼本人の楽しみ)があり、派手さはないものの、彼の持ち味が分かりやすく出ている作品と言えるだろう。

あらすじ

山小屋で休暇を過ごす五人の大学生男女グループ──ポール、カレン(ジョーダン・ラッド)、ジェフ、マーシーセリーナ・ヴィンセント)、バート。その夜、彼らの泊まっている山小屋に一人の男が現れる。男の皮膚は爛れ、吐血し、助けを求めてくるが、日中に誤って彼を撃ったバートが感染を怖れてこれを拒否。五人は男を撃退しようとして、火だるまにしてしまう。しかし、遺体が見つからず……。

感想

五人を襲う謎の感染症。皮膚がボロボロに爛れて出血し、吐血を伴う。もしCOVID-19の症状がこれだったならば、世界中が大パニックで“感染疑い”の者を殺処分する大虐殺が起きていただろう。この“気持ち悪さ”が第一の見所である。イーライ・ロスの作品としては過激さに欠けるものの、グロ描写の妙な生々しさが良い。ヘンリーの吐血やカレンの変貌した顔面は笑ってしまう程に豪快なグロでありながら、カレンやマーシーの皮膚が徐々に抉れていく描写は“想像の範疇にある痛み”との地続きである。これが“ムズムズ”させる皮膚感覚を催し、なぜか自分の体を掻きむしりたくなる。特にマーシーのムダ毛処理のシーンが痛々しいのだが、「この状況でやる?」というシリアスな笑いと同居している。

この見た目のインパクトが五人の行動にも影響を与える。五人の内の最初の感染者はカレン。ヒロインポジションの美人である。普通であれば、主人公が彼女を助けようとして奮闘するところだが、あまりの恐怖にビビって別の小屋に監禁。殺人鬼系のホラー映画ならまとめて殺されそうなジェフとマーシーカップルも、ジェフが「俺だけは助かってみせる!」と一人で逃げていく(「ビールだけしか飲まない」が伏線になるとは)。上手く予想を裏切ってみせる。ジェフに逃げられて「誰でもいいからセックスしたい」と自棄になったマーシーとポールが交わり、事後にリステリンを陰茎に掛ける描写が笑えた。

基本は感染症の恐怖を描いているのだが、途中からアメリカン・ニューシネマもかくやの“田舎怖い系”へと変貌するのが笑える。ここが第二の見所である。商店の軒先に座っているデニスという少年に噛み付かれるという“被害”を受けたのに、彼の父(?)が「てめえ、病気を移しやがったな!」と逆ギレである。笑うべきか恐怖するべきか分からない理不尽である。

彼ら“田舎の狂人”たちと感染症そっちのけの戦いを繰り広げる一方で、主人公ポールも静かに、かつ豪快に狂っていく。「助かる見込みがなく苦しんでいる者を安楽死させる」という発想はハリウッド映画にありがちだが、カレンの殺し方はもう少し別の方法があっただろう。あれでは安楽死ではなく、殺処分ですらなく、快楽殺人である。気分が悪くて寝ている彼女を愛撫したら血がついたことがトラウマになって、愛情を失ったのか。

地味に笑わせに来ていると感じたのは、保安官代理のウィンストン。彼自体がコメディリリーフにも近い存在なのだが、ヘンリーが吐血しまくって猟奇事件の現場と化した車を見ても「派手にやられたな」と言うだけでノーリアクションに近い。彼を筆頭に、デニスや豚解体おばさん、生首ボウリングとマリファナ青年グレン(共にイーライ・ロスが出演)、黒人(非)差別爺さんといった、やたらとキャラの立った脇役たちという小ネタが目立っていた。

五人組の男女の“五人目”というのは、どのような気分なのだろう。ジェフとマーシーは到着後即交合の脳みそ桃色カップル。ポールは中学生の頃からカレンに片想い中。バートは完全に“余り”である。彼はよっぽどマイペースなのだろう。三十郎氏が彼の立場であれば、イチャイチャと嬉し恥ずかしの両方を見せつけられて悶々とし、惨めな思いをするよりも、全員非モテ男グループのぬるま湯に浸かることを喜んで選ぶ。鈍感も才能である。

本作には続編とリブート版があるようだが、続編の方は地続きの物語なのだろうか。水が感染源とのことなので、感染者は(汚い)レモネードを飲んだ人たちに限られるだろうが(なぜ子供たちは川の水をそのまま使ったのか。キャンプ中でもないのに水道はないのか。水道水になるまでには消毒されるだろう)、感染者を怖れるパニックは本作よりも酷いことになりそうである。それともあくまで“謎の奇病”なので、別の場所で本作とは関係なく感染が発生するのだろうか。

キャビン・フィーバー (Cabin Fever)