オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブレイキング・イン』

Breaking In, 87min

監督:ジェームズ・マクティーグ 出演:ガブリエル・ユニオン、ビリー・バーク

★★★

概要

子供を人質に取られた母親が強盗に立ち向かう話。

短評

押し入り強盗系のスリラー。色々と独自性を出して面白くできそうな要素はあったが、あえてそれらを使わず、“普通”の範疇に収めた印象である。「普通の母親が子供のために命を懸けて戦う」という点を強調する狙いがあったのかとは思うが、それが映画的に面白いわけではない。“普通”に楽しめはするものの、もったいない一作だったように思う。これでは印象に残らず、無数に存在する同ジャンルの映画群に埋没してしまう。

あらすじ

横領、資金洗浄、脱税の罪で有罪確実だった実業家の父が事故死し、ショーンは娘と息子を連れて父の別荘を訪れる。彼女が家を出た隙に屋内に潜んでいた強盗が子供たちを人質に取り、ショーンは家から閉め出されてしまう。強盗の狙いは、亡き父が金庫に隠していた400万ドル。ショーンは子供たちを救うべく単身で四人の強盗との戦いに挑む。

感想

面白くなりそうな要素、その一。ショーンは強い。強盗のピートに襲われた彼女は、肉弾戦で彼に勝利する。何か特殊なスキルを持つでもなく、武器を使うわけでもない、普通の母親の彼女だが、見た目からしてパワフルなので説得力がある。三十郎氏が戦っても軽々ノックアウトされてしまうだろう。敵のボスは「女一人では対抗できない」と言うが、できるのである。したがって、彼女が女コマンドー的な活躍を見せてくれるのかと期待したが、ピートに勝った以外は屋根からの飛び降りくらいでしかアクションスキルを披露してくれなかったのは残念だった。敵に突き刺したナイフに捻りを加えるのがプロっぽかった。

面白くなりそうな要素、そのニ。別荘は全自動セキュリティが搭載された要塞である。犯罪者だった亡き父が、自分の金が狙われるのを怖れて被害妄想的になっていたのだろう(実際に強盗の一人に事故死させられたわけだが)。強盗の侵入を防ぐべく強固なセキュリティを用いる籠城戦の逆で、人質救出のために“押し入ろう”とするショーンから強盗たちがセキュリティに守られるパターンでも面白くなりそうだったが、強盗たちもセキュリティ・システムを使いこなせずじまいだった。

面白くなりそうな要素、その三。四人の強盗の思惑がそれぞれ異なっている。親分のエディ、殺したがりのラテン系ダンカン、ビビリのヤク中サム、ショーンにボコられて拘束されているピート。ショーンは子供さえ逃してくれれば金はどうでもよいと考えていて、サムはこれに応じたいが、ダンカンは顔を見られたので殺したい。金庫を開けられるのは拘束されているピートだけ。強盗の方が内ゲバを起こしてショーンが漁夫の利を得て勝利する展開だとつまらないので難しいが、彼らの心理戦的な要素を盛り込んでも面白くなったのではないか。

これらの要素自体は魅力的だったものの、どれも少しずつ顔を出すだけで、映画を印象づける決定的な一打とはならなかった。なんだか惜しいことをしているような気がする。欲張って何でもかんでも盛り込むのもよくないが、使えるものは使った方がよい。

偉そうにしているボスのエディがショボいキャラである。「人を呼ばれたらどうしよう」と心配するサムに対し、「子供が人質だから大丈夫」の一点張り。一人で戦うよりも警察に包囲してもらう方が救出率が高いと判断される可能性を考慮すべきだろうに。ショーンと一対一になった時にも簡単に説得されており、“歴戦の猛者”感を出して強盗団を仕切っている割には……という残念キャラだった。そもそもダンカンとは刑務所仲間とのことであり、普通に逮捕されている時点で大した犯罪者ではない。

車に乗って逃げようとしたショーンが、焦って鍵をさせないシーンがある。万が一の事態にはスマートキーが有利か。逆に、金庫はダイヤルを回すタイプの暗証番号式なのにデジタル対応していて、ハックされてあっさりと解錠されていた。これはアナログのままでよかっただろう。

ブレイキング・イン (字幕版)

ブレイキング・イン (字幕版)

  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: Prime Video