オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『絶海9000m』

Perdidos, 90min

監督:セルジオ・グラシアーノ 出演:ダニア・ネト、アフォンソ・ピメンテウ

★★

概要

梯子を降ろさずに全員が海に入ってボートに戻れなくなる話。

短評

『ブルー・フィアー』というタイトルでプライム会員特典になっているが、どうやら『絶海9000m』というタイトルの方が通りが良さそう(こちらは有料配信。紛らわしい真似を……)。内容的にはサメの出てこない『オープン・ウォーター』なのに(魚が足に触れて「キャー!サメよ!」と怯えるシーンはある)、サメ以外のイベントに乏しく、登場人物がプカプカしているだけの全員阿呆という一作だった。原題『Perdidos』は英語で「Lost」の意味。

あらすじ

ポルト・サント島の美しい海に集まったジャイメ、アナ(ダニア・ネト)、バスコ、ラウラ(ダリア・カルモ)、ダニエル、マルガリーダ(カタリーナ・ゴウヴェイア)の男女六人(+赤ん坊一人)。ジャイメは妻の元カレのボートに乗るのが気に食わず、ラウラはマルガリーダのセクシービキニに嫉妬し、ダニエルは「君は18才の頃から変わってない」とアナを口説く。少々不穏な空気を漂わせながらも出港し、全員が海に飛び込むと、なんとダニエルが梯子を降ろし忘れていたことが発覚する。

感想

海底47m』と同じく見所が全てパッケージに書いてあるのだが、三十郎氏は『ブルー・フィアー』版のシンプルなパッケージだけを見た状態で鑑賞して正解だったように思う。状況的に「もしかしてサメが出てくるかな……?」と期待して出てこなかったものの、もし『絶海9000m』版のパッケージを見ていれば、必ずや「人喰い鮫の恐怖」の文言に踊らされていたことだろう。それでサメが出てこないとなれば、その裏切りに対して落胆を通り越して憤慨していたに違いない。ただでさえ低い評価が更に低くなったはずである。

「梯子を降ろし忘れる」という単純極まりないミスは、映画的にはよくあることだろう。この程度で彼らを阿呆扱いするのは気が引ける。人間の真価が問われるのは、起きてしまった問題にどう対処するのかである。そして、彼らが使用できるアイテムは、イルカ型の浮き輪、泳げないアナのための救命ベスト、そして何故かナイフである。しかし、これが上手く使われない。

「どうして梯子を降ろさなかったんだ!」「俺のせいにするなよ!」と見苦しく喧嘩しつつ、とりあえず海面から身体を精一杯伸ばして船体に掴まろうと試みる。これは当然に失敗である。人力リフトで身体を持ち上げる“シンクロナイズドスイミング作戦”を試みるも、素人が簡単にできる技ではない(上にあるスマホを取れたようだが、それならなんとか縁を掴めるのではないか)。そうこうしている内に登場する秘策こそが本作最大の、そして唯一の見所である。

何かを思い付いたダニエルがマルガリーダに告げる。曰く、「ビキニを脱げ!」。“水着ロープ大作戦”である。この発想には笑った。マルガリーダと交合していて全裸で友人たちを迎える桃色男ならではの桃色作戦である。なお、水着ロープを上手く引っ掛けたところまでは良かったが、成人男性が登るには耐久性が足りないのであった。

水着ロープ作戦を決行したため、(救命ベストのあるアナ以外は)皆全裸である。暗いし、水中だしで、見えづらいシーンが多いものの、おかげで(中年ではあるが)おっぱいが映る。最もセクシーなマルガリーダがおっぱいを披露することなく尻だけ見せて水没したのは残念だったが、緊迫した状況とは対称的に笑える光景となっていた。

ナイフを船体に突き刺して、それに掴まる男の背中をよじ登る作戦を三十郎氏は考えたが、「刺さらない」という展開で否定されたのは良かった。しかし、オチが酷い。船体の隙間にゴーグルの破片を突き刺し、それに掴まる男の背中をよじ登る。最初からナイフでやっとけよ……。彼らは数時間泳いで体力的に疲弊してから諸々の作戦を決行しており、どう考えても全てが“遅い”のである。ある程度阿呆でなければ成立しない設定なのは理解できるが、危機に陥ってからの行動が阿呆過ぎると白ける。

しかし、その先がもっと酷い。見事に乗船した(全裸の)アナは、いの一番で息子の元に駆け付ける。恐らくその直前に押したスイッチが梯子なのではないかと思うが、決死の覚悟で彼女を助けたダニエルは放置である。その後、ダニエルを助けるべく(全裸で)海にドボンするシーンがあるが、相変わらず梯子が一瞬も映っていないため、彼女が自殺行為に打って出たように見えなくもない。そもそも泳げないのではなかったか。

ところで「9000m」はどこから出てきたのか。陸までの距離なら浮き輪とベストを頼りに泳いだ方が生存率が高かったのでは?

ブルー・フィアー

ブルー・フィアー

  • 発売日: 2020/08/18
  • メディア: Prime Video
 
絶海9000m(字幕版)

絶海9000m(字幕版)

  • 発売日: 2018/08/03
  • メディア: Prime Video