オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『特捜部Q Pからのメッセージ』

Flaskepost fra P(Department Q: A Conspiracy of Faith), 111min

監督:ハンス・ペテル・モランド 出演: ニコライ・リー・コス、ファレス・ファレス

★★★

概要

カルト宗教誘拐殺人事件。

短評

北欧ミステリー『特捜部Q』シリーズの第三作。「これは未解決事件とは違うのでは……?」という導入部には戸惑ったが、それがれっきとした“未解決事件”であることが判明し、更に現在進行系の事件とも繋がっていく展開が面白かった。「未解決事件」と一口に言っても様々な切り口があるものだと感心させられる。子供の誘拐に対して親が手出しできないという構図がカルト宗教の闇の深さを予感させ、期待が高まったものの、一人の気狂いの所業として決着してしまったのは尻すぼみだっただろうか。

あらすじ

特捜部Qに新たな事件が持ち込まれる。「助けて」と書かれた手紙の入ったボトルが発見されたのである。手紙はインクが滲んでいて読めないが、アサドの解読により、「子供の誘拐事件であること」「エホバの証人が関係していること」「Pという頭文字の人物からの手紙であること」などが判明する。休職していたカールも復帰し、行方不明者の捜査を進めていると、“神の弟子”の教区で姉弟が誘拐されたという通報を受ける。

感想

「助けて」と書かれた手紙が見つかれば事件扱いしてもらえるのだろうか。具体的な被害者も不明である。これでは“未解決”以前に“事件”になっていないような気もするが、特捜部Qは親切なのか暇なのか、「どうせイタズラでしょ」と一笑に付すことなく捜査を開始する。これまでの経験から怪しそうな事象には全て裏があると刷り込まれているのだろうか。

それはともかく「P」の正体が判明し、同時に宗教絡みの事件が発生して、「これは繋がっているぞ!」という展開(カールたちが調べている「P」事件と観客にだけ先に提示される誘拐事件が別件であることが“名前”で分かるようになっており、この両者が繋がると「おおっ!」となる)。後者が“現在進行系”なので特捜部Qの所管を離れるのではないかという考えも杞憂に終わり、話が本格的に動き出す。少々力技感がなくもないが、切り口を変えることでシリーズのマンネリ化が防がれている。

現在進行系の誘拐事件に対処するため、捜査はかなりスリリングな展開に。ミステリーというよりもサスペンス要素の強い一作である。ここで観客は「P」事件のことを忘れそうになり、前作と同じく本来扱うはずだった事件が置き去りになりかけるも、「P」(=ポウル)の弟トレクヴェが必死に当時の記憶を取り戻し、再び二つの事件が交わるのである。この展開は上手かった。前作の不満点が解消されていたと言えるだろう。

犯人は、「イエスはテキサス生まれ」と称する阿呆なカルト教団“神の弟子”のヨハネス(=トマス)。ボディタッチが過剰な神父である。彼の犯行動機である悪魔関係の話は、“カルトの裏のカルト”といった展開で非常に好きだった。しかし、彼一人だけで全てを成し遂げていた点に加えて、幼少期の母による虐待や姉ベッカに渡される金という現実的過ぎる理由が示されたのには物足りなさを感じた。

誘拐された姉弟の父と母(アマンダ・コリン)は警察に対して事件を隠そうとしており、子供が誘拐されるという一大事よりも巨大な影響力の存在が予感される。他に浮かび上がってきた誘拐事件は届け出すらされておらず、「P」事件と同じく事件化されていない。教団が村全体を支配しているみたいでワクワクするではないか。正に三十郎氏の期待するカルト教団である。それが単独犯というオチの竜頭蛇尾ではガッカリとしか言いようがない。「犯人の正体が分かっていて、子供が拐われているのに、それでも何もできない」という親の怯え方は何だったのか。

ヨハネスの恋人(?)が行為中に自慰をして、ヨハネスが失笑する描写はどういう意味だったのだろう。

今回のカールとアサド。事件が宗教絡みということで、捜査中の二人の間で宗教トークが交わされる。無神論者のカールとイスラム教徒のアサド。物語から逸脱することなくキャラクターの背景が見えてくる上に、主題に対する理解を深められる好シーンである。また、最終的に神を信じるアサドと悪魔を信じるヨハネスの対決構図になるという点も面白かった。新キャラの女刑事リーセ(Signe Anastassia Mannov)の登場によりカールの女日照りがイジられるシーンがあるものの、恒例のコーヒートークはなし。

現在、第四作の『特捜部Q カルテ番号64』まで映画化されているが、同作は有料配信のみである。人気シリーズのようなので、いずれはプライム会員特典入りするだろう(願望)。気長に待とうと思う。