オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『特捜部Q 檻の中の女』

Kvinden i buret(The Keeper of Lost Causes), 96min

監督:ミゲル・ノルガード 出演:ニコライ・リー・コス、ファレス・ファレス

★★★

概要

自殺で処理された失踪事件を左遷された刑事が再捜査する話。

短評

北欧ミステリーの人気シリーズ第一作。北欧の割に事件が陰惨な感じはしなかったが、主人公が常に険しい表情をしており、北欧的な暗さが漂っている。観客に対して謎解きを挑むタイプのミステリーではないので、頭を悩ませることなくスッキリと結末を迎えられた(主人公が捜査で知るものとは別に被害者の姿が描かれていることからも、自分で謎を考えなくてもよいのだと分かる)。シリアス感と謎解きの気持ちよさのバランスに優れた一作である。原題『Kvinden i buret(デンマーク語)』の直訳は「The Woman in the Cage」のようなので、珍しく英題よりも邦題が正しい。

あらすじ

捜査中に二人の部下を失って殺人課を追われ(一人死亡、一人寝たきり)、未解決事件の資料整理をする“特捜部Q”なる閑職へと左遷された刑事のカール。助手のアサドがリストアップした事件の中からミレーデ(ソニア・リクター)という女性議員の失踪事件が気になり、資料整理の枠を超えた捜査を開始する。ミレーデの失踪はフェリーからの投身自殺として処理されていたが、不自然な点が浮かび上がってくる。

感想

未解決事件が対象ということで、まずは捜査資料の再検討。(特に必要ではなさそうだったが)実際にフェリーに乗り込んで当時の状況を確認し、関係者に話を聞き、決め手はミレーデの弟ウフェ。やるべきことを一つずつ着実に片付けていく。本作の場合は「捜査担当者が無能だった」という点が強調されているものの、未解決事件の大半は“やるべきことがなされない”ことが原因である。いわゆるミステリー小説の主人公と言えば、ホームズのような超人的推理力を持つ人物だが、カールは普通の男である。短気が祟ってトラブってしまうようなダメな面もある。そんな彼が地道に事件を解決へと導く物語は、“未解決事件”という題材を扱うのに相応しい内容だったように思う。

タイトルに「檻」とあるように、実は死んでいないミレーデは「加圧室」に監禁されている。終盤のスリリングな展開や独特のビジュアルは魅力的だったのだが、犯人が加圧室を選んだ理由は何かあるのだろうか。大筋ではスッキリとする物語なのだが、核心部分の一つでもあるここだけが消化不良。驚異の執念深さを誇る犯人のキャラクターはそこそこ魅力的だったので、復讐という動機以外の部分にも何か説明的な描写が欲しかったような気がする。

割とサラッと描かれているのだが、動機の種明かしのシーンが本編よりも遥かに陰惨である。犯人からペンチの差し入れを受けたミレーデが躊躇うことなく自らの歯を抜くシーンよりも極悪である(あれは虫歯なのか。それとも何か高圧の影響があるのか)。あの状況で暢気に雪と戯れている少女ミレーデちゃん(オリヴィア・ホールデン)はサイコパスっぽい。

基本的には“刑事が一歩ずつ真相に迫っていく”という流れを追えばよいだけなのだが、ウフェの存在が動機に関連する伏線となっていたりして、全体としてまとまりがよいのも魅力的だった。また、大人しめの話ではあるものの、主人公たちが真相を確信する前に観客に真犯人を提示することでサスペンスを成立させており、盛り上げるべきところは盛り上げている。

いかにも“影のある男”風なカール。彼には離婚した元妻との間に義息子イェスパがいる(義理の息子という表記だったが妻の連れ子なのか)。カールが聞き込みを行ったミレーデの元秘書に「一杯どう?」とアタックし、撃沈して帰宅すると、イェスパが巨乳彼女(マリー・ハマー・ボーダ)と真っ最中である。これは辛い……。情けなさに打ちひしがれた彼は、そのまま屋外で寝落ちしてしまう。翌朝、アサドに起こされるも、ドアには鍵が掛かっていて家から閉め出されている。険しい表情をしているが、意外にも愛嬌のあるキャラクターだった。

濃すぎるコーヒーを淹れるアサドのキャラクターもなかなか良い。「倉庫のスタンプ係よりはマシ」と資料整理の仕事を喜ぶ彼だったが、次作以降では何か彼の背景についての描写もあったりするのだろうか。

特捜部Q 檻の中の女(字幕版)

特捜部Q 檻の中の女(字幕版)

  • 発売日: 2016/04/28
  • メディア: Prime Video