オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『セントルイス銀行強盗』

The Great St. Louis Bank Robbery, 89min

監督:チャールズ・グッゲンハイム 出演:スティーヴ・マックィーン、クラハン・デントン

★★★

概要

大学を退学になった青年が銀行強盗に参加する話。

短評

スティーヴ・マックィーンのキャリア初期の主演作品。ワケアリの青年が軽い気持ちで犯罪に加担し、取り返しのつかなくなる姿が描かれている。実話が基になっているとのことで、警察役には事件に実際に関わった人物が『15時37分、パリ行き』的に出演しているのだとか。過ちを挽回しようとして更に大きな過ちを犯してしまうという辺りに、なにか宿命的な虚しさを感じさせる一作だった。

あらすじ

元恋人アンの兄ジノの伝手で銀行強盗の一味に参加することになったジョージ(スティーヴ・マックィーン)。狙いはセントルイス銀行。金庫に押し入らずとも窓口だけ10万ドル奪える計画である。とある過ちから大学を退学になっていたジョージは復学したいと考えており、「車を運転するだけ……」という軽い気持ちでの参加だったが、アンに計画がバレてしまい、取り返しのつかない事態へと陥っていく。

感想

犯罪の準備や実行の描写ではなく、決行に至るまでの人間ドラマがメインとなっている犯罪映画である。主人公のジョージは、「ジノから運転手をやるだけと聞いてるし、それ以外はやりたくない」と、どこか覚悟の決まっていない印象。少しボンヤリとしていて掴み所のない男に思えるが、元恋人アンとの会話から彼の過去が見えてくる。

二人が久しぶりに再会すると、ジョージはアンに「変わってないね」、アンはジョージに「あなたは変わった」と。また、「二人で退学になったのが原因?」と尋ねるアンに対し、ジョージは「たった一度の過ちで全てを失うなんて……」と恨み言を漏らす。自らの過ちを認めて次に進もうとしているアンに対して、大学スポーツのスターだった栄光を忘れられないジョージは過去に固執しているのである。“変わった”かどうかについての認識も、“次に進む”のか“元に戻る”のかという願望の違いによるものだろう。

アンに言わせれば“たった一度ではない”過ちを犯しているジョージだが、本人は“たった一度”だと思っている。自分の過ちを認識できていないのである。したがって、“元に戻りたい”彼は、更に大きな、取り返しのつかない過ちを犯してしまうことになる。そうとは知らぬ内に本物の悪人になってしまう。彼がそのことに気付いても時既に遅しであり、最後の叫びは実に悲痛なものとなるのであった。

ジョージ以外の強盗メンバー。ボスのイーガン、ジノ、ウィリー。それぞれにワケアリである。イーガンは母親に虐待されていた過去があって女嫌い。ジノは収監経験がトラウマとなっている(彼が宿の一室でパニクる不穏な演出が良かった)。ウィリーは「俺が運転したいのに」と優遇される新入りに嫉妬する(イーガンの極度の女嫌いを考えれば、彼ら二人はゲイだったか)。彼らの過去や人物像も、ジョージと同様に直接語ることなく示唆され(イーガンは自分で語るが)、物語に暗い影を落としている。そうした“犯罪に走らざるを得ない理由”が少しずつ歯車が狂わせていった結果、悲劇へと至るのである。

銀行の外では秒単位の計画を立てていた一味だが、内部に押し入ってからは杜撰そのものだった。それはもう簡単に通報されてしまうのである。銀行強盗における重要事項は二つ。一つ、行員による通報を防ぐこと。二つ、通報されてから警察の到着までに逃げ切る算段を立てること。とにもかくにもこの二つが最優先である。それもできずに細かい停車位置を気にしている場合ではない。

セントルイス銀行強盗(字幕版)