オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『サタニック・ビースト 禁断の黒魔術』

El bosque negro(A Mata Negra/The Black Forest), 99min

監督:ロドリゴ・アラガォン 出演:キャロル・アラガォン、ジャクソン・アントゥーネス

★★

概要

少女が悪魔を召喚する話。

短評

鬼才ロドリゴ・アラガォン監督最新作!ゾンビチュパカブラゾンビと来て、今度は悪魔である。まず映像が普通に綺麗なことに驚く。ホームビデオから商業映画レベルへの進歩である。オープニングショットが空撮だったりして、意外にも洗練されたカメラワークを披露している。その一方で、アラガォン作品最大の魅力であるはずの“汚いグロテスク”が鳴りを潜めており、期待していた「つまらないのに面白い」の基準には達していなかった。ただし、ブラジル奥地という何でも許されてしまうロケーションを活かし、黒魔術の存在に対して一切の疑問を抱かせない問答無用の豪腕はアラガォンらしかった。

あらすじ

森の中で倒れているところを老人に救われ、育てられたクララ(キャロル・アラガォン)。倒れた父に代わって市場に行った帰り道、彼女は川で金貨を発見する。すると、持ち主の男が現れて、「金貨はやるから頼みを聞いてほしい」「俺の地獄行きの魂を救うために一晩祈りを唱えてくれ」「祈りが終わったら本は燃やせ」と言うではないか。男の言う通りに祈るクララだったが、祈りの途中で父が死亡。市場で知り合った青年と共に村を出ようとするが……。

感想

終盤なってようやくお馴染みのドロドロした血糊が活躍するものの、全体的にグロ描写が控えめである。その代わりに、本作は儀式的側面を見所として押し出している。青年が強盗に殺され、彼女に汚泥を投げつけるイタズラ少女を誘拐しての復活の儀式(未遂)、父に習ったラードを使用する肉の保存方法を用いての死体保存、鶏の卵に自分の血をつけた呪いの紙を挿入。「お~やってるな~」となんだか嬉しくなる。土着邪教的リアリティとウソっぱちの絶妙なバランス感である。これが“普通”の映画であれば、何の疑いも持たずに黒魔術に馴染みすぎなクララについていけないところだが、アラガォン作品である。ヘンテコであればあるほどに良いのだ。

「なんかヘンテコなことをしている」のを楽しみながらも、何かが起こりそうで起こらないストーリーはやはり退屈。間延びも酷い。この退屈さもアラガォンらしいと言えなくはないが、他作品ではその隙間を埋めてくれていたグロ描写が欠如しているために、「“普通”に退屈だな」と思う瞬間が何度もある。クララが強盗から金貨を取り戻すべく黒魔術を用い、呪いに掛けられた彼らが争うシーンがあるのだが、なんと窓につく血糊を利用して戦いを表現するという洗練された手法が採用されている。そうじゃないだろ。なお、強盗のいるバーには奥に部屋があり、一人の男が二人の娼婦と寝ている。あまり形の良いおっぱいではなかった。

クララが悪魔崇拝者を追う宣教師フランシスコに捉えられたら実は彼が悪魔崇拝者という苦難を乗り越えて(ここでの出血は普通)、ようやく訪れるラスト20分の惨劇。金貨に釣られてクララに協力した養鶏家ジョゼの母を悪魔的鶏が襲い、ジョゼが見事なヘッドショット。待ってました!これが見たかったのである。悪魔的鶏のビジュアルも(マリア曰く「毛のない二本足のネズミ」)、ピョコピョコした動きも、派手に飛び散る頭部も、半分ギャグみたいなアナログ的グロ描写が素晴らしい。悪魔的鶏に襲われて(=顔に飛びつかれて)転び、頭を打って死んだジョゼの妻マリアの腹から取り出された胎児が、これまた悪魔的なのであった。全体としては物足りなかったと言わざるを得ないが、抑えるべき点は抑えていた印象である。しかし、やはりこれがもっと見たかった……。

他のグロ描写で好きだったのは、クララが盗んだ卵を割って調理しようとすると、どれも中身が“半熟”になっているというもの。現実で遭遇したらトラウマ間違いなしだろう。半分笑わせにきているようなグロが多い中で、このように妙な生々しさがあるのも良い。

このように少々“普通”になってしまった感のある一作だが、終盤の期待通りなグロ描写からラストにかけては豪快にぶん投げる。そもそもまともな筋のない話なのでどこに向かっているのか分からないわけだが、まさか“俺たちの戦いはこれからだ!”エンドが待っているとは思わなかった。『シプリアーノの失われた書』を用いて人間が悪魔的阿呆をやっているのかと思ったら、遂に本物が召喚され、クララが昏睡している内に世界が滅びかけている。悪魔と戦う戦士たちも唐突に登場する(ちゃっかりジョゼも母を撃ち殺した猟銃を持って参加)。ここに来て滅茶苦茶である(はじめからそうなのかもしれないが)。悪魔のビジュアルも良かったし、これは是非とも続編をお願いしたい。

主演のキャロル・アラガォンは『シー・オブ・ザ・デッド』にも同じクララという役で出演しており、同作のラストシーンに映っている少女である。同作と本作の間の五年間が、ちょうど劇中でクララが老人に拾われてから育てられた期間と一致することを考えると、地続きの物語だったのだろう。アラガォン・ユニヴァース!絶対に住みたくない!