オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デッドハント』

Camino, 104min

監督:ジョシュ・C・ウォーラー 出演:ゾーイ・ベルナチョ・ビガロンド

★★★

概要

戦場カメラマンが“まずいもの”を撮って追われる話。

短評

タランティーノ映画のスタントウーマンとして名高いゾーイ・ベルの主演作品。そこら辺でお尻をプリプリさせてるおねーちゃんが復讐モードに入るなり突如無双するのとは異なり、“自由に暴れ回る”ことが許される個性を持った貴重なアクション女優のはずなのだが、期待していたよりも遥かに地味だった。戦場カメラマンという設定に対して忠実なキャラクターだったのだろうか(その割には射撃・格闘スキルが高いが)。もっと暴れてほしかった。

あらすじ

1985年の最優秀記者賞を獲得した戦場カメラマンのエイヴリー(ゾーイ・ベル)。彼女が次に向かう先は、ボゴタ。コロンビアの解放運動を指揮するギレルモという伝道師が、裏で麻薬取引に手を染めているという情報を入手し、部隊に同行して密着取材を試みる。取引現場の撮影に成功したエイヴリーだったが、ギレルモにバレてしまい、ジャングルの中で決死の逃亡劇を繰り広げることとなる。

感想

“悪役”ギレルモの圧倒的小者感である。とてもではないが解放運動の英雄には見えない。エイヴリーの活躍の物足りなさが第一の不満なわけだが、敵がショボすぎて、彼女が頑張ったというよりも相手が自滅したようにしか思えないのも良くない。

弟(=従兄弟)のトマス、変わり者兵士のアレホ、大人しいセバスチャン、愛人マリアナシェイラ・ヴァンド)、女性兵士ルナ(ナンシー・ゴメス)の小所帯を率いるギレルモ。ジャングルに逃げ込んだ1人を6人で追うというのは相当に困難ではないかと思うのだが、なぜかギレルモは「まずはお前だ!」と先鋒アレホを送り込む。1対1で見つけるなんてプレデターでもないと無理だろう。しかし、エイヴリーが大人しく逃げることはなく、むしろ積極的に戦いを挑む。これ自体は構わないのだが、舞台設定を間違った感は否めない。

木の上からナイフを持って飛び掛かるという離れ業をエイヴリーが披露するも(これが最大の見所)、アレホはノーダメ。しかし、彼は「遊んでやるぜ」と余裕を見せたために絞め落とされる。ここでギレルモは最強兵士を失う。指揮官としての無能ぶりを遺憾なく発揮するギレルモだが、ここから先はより無能感が極まってくる。彼が無能というよりも監督が無能と言ってもよい。エイヴリーに人質に取られたセバスチャンを射殺し、「大変だ!彼女はナイフを持ってる!」と叫ぶ。いやいや、めっちゃ銃声響いてたでしょ……。おまけに、自分が撃ったことを隠蔽すべくセバスチャンを絞殺する姿をトマスとルナの二人に目撃されるという阿呆ぶりである。

トマスとセバスチャンの戦いが始まり、「ブラザーと呼ぶな!」とキレるトマス。しかし、その次の瞬間には「俺たちは行くよ、ブラザー」と一言。若年性健忘症だろうか。エイヴリーがマリアナと戦う時には、「ギレルモにはあんたの他にも女がいるわよ」「あの村の子は若くて可愛かったものね」と精神攻撃。“女の戦い”が意外な方向性での“女の戦い”なのだった。シリアスな逃亡劇を装っている割に笑わせにきているような描写が見られるが、ゾーイ・ベルに期待していたものとは違う。もっと正面からアクション・スターを演じ切って欲しかった。そのキャラクターが許される数少ない人なのだから。この程度の役ならば、それこそ“お尻をプリプリさせてるおねーちゃん”で十分なのである。

最後まで阿呆で小者全開なギレルモさん。ここまで来ると愛着が湧いてくる。遂にエイヴリーを追い詰め、フィルムを処分すると、なんと彼女を放置して去っていくではないか。子供や隊員を証拠隠滅のために容赦なく殺したというのに、生きて帰れば間違いなく自分に不利な証言をする女を見逃すなんて。意味不明である。その上、彼が処分して勝ち誇ったフィルムは目当てのものとは別で、証拠品は既に新聞社へと持ち込まれて報道済みなのであった。「どーもー、伝道師のギレルモですよー!エル・グエロですよー」と“有名人の自分”モードで歓迎を期待して村に入るも、冷たい視線を浴びる彼の情けなさである。

デッド・ハント

デッド・ハント

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