オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『デッドガール』

Deadgirl, 101min

監督:マルセル・サーミエント、ガディ・ハレル 出演:シャイロー・フェルナンデス、ノア・セガ

★★★

概要

男子高校生が廃病院で不死身の美女を発見する話。

短評

ゾンビなのかどうなのか分からないと思っていたら結局ゾンビという映画である。このジャンル不明感が程よい混乱を招き、恐らくはつまらないのだけど、「もしかしてこれって面白いのでは……」という不思議な気分になった。終わってみれば、設定にもプロットにも何の捻りも感じられなかったし、ホラー映画として怖いのもゾンビ発見までという残念な一作である。しかし、死体とは言えど、おっぱいを拝めて喜んでしまったこともあり、屍姦に興じる男たちと自分が同じ穴の狢なのではないかと少し複雑な気分になった。

あらすじ

学校をサボって廃精神病院で遊ぶ(ザック・エフロン似の)リッキーとJTの二人の高校生。JTの提案で肝試しをしようと地下に行ってみると、鎖に繋がれた裸の女性(ジェニー・スペイン)が気を失っているのを発見する。「逃げよう」「解放しよう」とビビるリッキーに対し、「モデルみたいな美女」と発情するJT。「怖いなら一人で帰れよ」と言われて逃げ出すリッキーだったが、その夜、JTに「凄いものを見せる」と言われて再び病院を訪れる。

感想

JT曰く、「ヤろうとしたら暴れたから殴って殺しちゃったけど生きてる」である。確かに三十郎氏もおっぱいを見て思わず反応してしまったが、そこからすぐに「ヤろう」と思える性欲の逞しさである(三十郎氏の如き紳士なら、せいぜい生存を確かめるためにおっぱいを触る程度に留めるだろう)。猿の如き男子高校生の為せる業か。それはともかく、まずはJTが女と交わり、続いて友人ウィーラーを呼んで交わりと、彼らは“女”を共有する。拘束されて抵抗できないのをいいことに、彼らは“女”を人形(=ダッチワイフ)扱いする。

この“共有”というのが三十郎氏には気持ち悪く感じられる。リッキーが未練たらしく想いを寄せる“子供時代”の元カノ・ジョアン(キャンディス・アッコラ)の現カレ・ジョニーが「お前の後に挿れるのかよ」と躊躇ったように、きっとコンドームも使っていない“後”に挿れるなんて嫌ではないか。しかし、このJTの行動には「共犯者が欲しい」という後ろめたさに加えて「リッキーと何かを共有したい」という妙に同性愛っぽい思いまで感じられて、生体オナホの共有という猟奇的行動を通じて一種の青春ホモソーシャルが垣間見えるのであった。

普通のゾンビ映画ならば、「ゾンビ女が暴れだして……」という展開でホラー化するはずなのだが、彼女は大して暴れない。リッキーがジョアンのことを想い、青春映画みたな音楽が流れたかと思えば、JTが“女”に化粧をして、メルヘンな音楽が流れる。JTが病院の番犬に襲われるかと思いきや“女”が退治してしまうので、まるでゾンビ女がセックスを受け入れていて、狂ったJTと相思相愛の関係を築いているようですらある。一体これはどういう映画なのか……。

三十郎氏が混乱しはじめると、“女”に噛まれると腐るという事実が発見され、JTとウィーラーがボロボロになった“女”に代わる新しい“素材”を物色しはじめる。ここでようやくゾンビ映画だと確定する。そこで目をつけられてしまったのがジョアンで、最終的にリッキーが「彼女を死なせるか、ゾンビ化するか」という二者択一を迫られる。なお、二人が最初に目をつけた豊満女に撃退されるシーンが本作のハイライトだった。

これが一応は“どちらを選んでも後悔する究極の選択”のはずなのだが、映画のラストでリッキーの見せる表情は実に晴れ晴れとしている。しかも青春映画みたいなBGMまで流れてハッピーエンド風。そして、彼の選んだ答えはゾンビ化である。終盤でようやく暴れ出したゾンビ女がリッキーだけを見逃し(よく分からないが意思のあるタイプだったのか)、一人だけ善人であることを貫いたのが報われたのかと思いきや、自分に靡かない想い人を最悪の手法で手中に収める。

この気持ち悪さが最高に“男”である。どんなに一途に想っていようと振り向いてくれず、マッチョな彼氏とイチャつく姿を見せつけられるくらいなら、ゾンビ化してでも自分のモノにしてしまう方がよい。結局の所、(リビドーほとばしる男子高校生ならば特に)男にとっての“愛”とは性行為とイコールであるという事実が浮かび上がってくるのであった。ヤレない女は存在しないも同じである。ゾンビ映画好きが一度は考える美人ゾンビとの交合がエロ方面へと展開しないのは物足りなかったが、意外にも“男”という存在や非モテ男の屈折を感じられる一作だった。そういう意図で制作したのか分からない程度には悪趣味なだけの映画と言えなくもないが。

デッドガール (字幕版)

デッドガール (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video